夢見るディナータイム

あろまりん

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「はぁ~、やっぱり金子さん、格好いい!」

「さすが常連。私達が集まる時って、絶対この店になっちゃったよね」

「嫌だった?」

「ううん?お酒美味しいし、ここ居やすいからいいけどね」

「ふふふ、ありがと。で?麻里子の話は?」

「あ~~~、彼の事?」

「そうそう。うまくいってんの?」

「まあね?会社でバレると何かと煩いから、秘密だけど。
でも結構帰りとかも待ち合わせて、マンションに行ったりだとか・・・・・」

「もう完全彼女じゃん!」

「・・・・・でもねぇ・・・・・」

「何?」

「別れないんだよね、透さん」

「はあ?その・・・・・年上の彼女と?」



そうなのだ。
すでに私と何度となく関係を持っているっていうのに。
自分の部屋にも入れているくせに。

彼は、あの女性と『別れたよ』とは言わない。



「何、それってずるくない?」

「ていうか、私も最初がいけなかったんだけどさ。
『彼女がいてもいい。2番目でもいいから』って言っちゃったんだよね。
向こうも、そうした方が気楽に私と付き合ってくれると思って・・・・・」

「ええ!?」

「彼とその彼女って、会社でも公認カップルでさ。
もう、社内の殆どが知ってるって感じだったわけ。それに2年くらい付き合ってたから・・・・・
そろそろ結婚?みたいな感じで見てたわけよ」

「へえ・・・・・」

「そこに私が割って入ったようなもんで。
そりゃ、『申し訳ない』って全く思わない訳じゃないけどさ?
私だって、透さんがすっごく好きだったし。既婚者じゃなかったから自由じゃない?」

「まあ、そうかもね」

「私だって彼が結婚してたら諦めたと思うの。でもまだそういうんじゃなかったし。
仕事でも優しくて、頼りになって・・・・・好きになっちゃって。
アタックしたら、ちょっとこっちになびいてくれたから本気になったんだよね」

「うわ~~~」

「最初から、浮気って感じじゃなくて。相談に乗ってくれただけだったんだけど。
私が『遊びでもいいから、少しだけ付き合ってください』って言ったんだ。
それでもいいって思うくらい、好きになってて。
・・・・・嫉妬もあったと思う。だって、彼女って30過ぎのオバサンだったし。
私の方が若いし、綺麗だし、彼にふさわしいって思ったんだもん!」

「そうなんだ・・・・・なんか、ちゃんと詳しく聞いたの初めてかも」

「そうかもね。私ずっと濁して話してたし」



そう。友達にこの事は話したくなかった。

私は大学時代もずっと、彼氏がいない時なんてなかったから。
いつも、男の取り巻きがいて。
それが当たり前だった。・・・・・勿論、それで他の女子から反感を買っていたのも知ってた。

でもそれが何だって言うの?

綺麗に、お洒落に。
私だって、メイクやファッション、振る舞い、たくさん努力して今の自分を手に入れた。
ただ安穏としていた訳じゃない。
いろんな雑誌を見て、自分自身を磨いて今の自分がいるのだ。
何もしない、しようとしない女子達に何か言われる筋合いなんかない!!!



だから、周りにいる友達も同じ。

そうやって、『イケイケ』って呼ばれるような子ばっかり。
確かに、元からそういう子もいるけれど。
私みたいに、お洒落に努力して、今の自分を手に入れた子も多い。

彼女もその1人だ。
今私の目の前にいる、木原沙織。
大学時代からの親友。

友達が多くない私にとって、唯一色んなことを話し合える友達。

それでもやっぱり、恋愛自慢ならともかくこういう悩みを話すのは気恥ずかしいのだ。
でも、今は、誰かに聞いてもらいたい。
何か言ってもらいたいって思うから。



「・・・・・んで?麻里子のそういう話初めてだから聞きたい!」

「何、その興味津々な感じ」

「だって、こういう悩みを打ち明けるのって、いつも私ばっかりだし!
麻里子が恋愛で悩むのなんて初めて聞いたよ!」

「・・・・・そうかも。じゃあ、今日はがっつり聞いてもらうかな?
でも誰にも言わないでよ?」

「当たり前でしょ?誰に言うっての」

「それもそっか」



言葉の上だけの約束かもしれなくても、そうやって口に出してもらうと安心する。

カクテルを一口呑んで、私は話を再開した。



◼︎ ◻︎ ◼︎



「・・・・・でね。まあお酒の勢いでっていうのも定番だけど」

「関係しちゃったって訳?」

「そう。彼はすごく申し訳なさそうにしてたけど。
・・・・・でもそれでも、そこから奪ってやろうって思ったし」

「やるぅ」

「だって、その彼女、すごく余裕たっぷりでさ。
すごくムカついたから、言いに行ったんだよね」

「は?何を?」

「『透さんと浮気してます』って」

「えええ!?何してんのよ!!!」

「だって、浮気してるって気付いてるくせに、何も言わないで放置してんだもん。
彼にも何か言う事もないし、私にも。・・・・・どうせ遊びなんでしょ?って見えて・・・・・」

「あ~~~。自分が彼女だから余裕で見てるんだ」

「どうかわかんないけど、そういう風にしか見えなかった」

「で?」

「・・・・・結局、最初は透さんも私に冷たくなっちゃって・・・・・
ちょっと遠ざかったんだよね・・・・・」

「え?元サヤに戻っちゃったって事?」

「多分、そう。『もう終わりにしよう』って言われた」

「それ、振られたんじゃん」

「そうだけど!・・・・・諦められなかったんだもん!」

「そのまま、アタックし続けたの?」

「・・・・・うん」



いきなり、言われたのだ。
『彼女がやっぱり大事だから、君とはもう終わりにしよう』って。

ショックだった。

どんな男からも、今までそんな事言われた事なんてない。
いつだって、そういうのは私からだった。
だから・・・・・悔しかった。あんな女に負けたって事が。あの女を選んだって事が。



『絶対、諦めない』



そう思った。

どんなに時間をかけても、私は絶対彼を振り向かせる。
結婚してしまったのなら、諦めなくてはいけないけど。
彼はそういう訳じゃない。だったら・・・・・



彼は、今まで通り『ただの先輩』としてしか対応してくれなくなった。

すごく、さみしかった。
それに比例して、私はすごく彼の彼女・・・・・眞崎さんが憎くてたまらなかった。

何も努力してないくせに!
ただ、仕事ができるからって何!?
私の方が、女として魅力的じゃない!!!

そう思えて仕方なかった。

会社でも孤立していたのは、知っていた。
でも、たかが仕事。
上っ面だけでも構わない。プライベートじゃないんだから。
女だけで群れるのはゴメンだ。ただ、愚痴を言い合うだけの仲間なんかいらないから。



そして、彼女が会社を辞めて行った。

社内で行われていたリストラ。
それで辞めるって聞いて、馬鹿みたい、って思った。

・・・・・噂で、起業する為に辞めたんだって後から聞いたけど。
同期の子が漏らしていた。
『あんなに仕事できる人なのに、いなくなったから大変だよ~~~』って。

確かに、色々営業部でも仕事が詰まったりしていた。
経理からの返答が遅かったり、うまく書類が通らなかったり。
先輩が困っていたのを見て、意外にやる人だったんだ、って見直したのは秘密。



でも、それからだ。
透さんが、苛々してるのを見るようになったのは。

彼女も自分の仕事で忙しいみたいで、あまり会えていないらしい。
しかも透さんも新しい仕事を任されて、すごく大変だった。
丁度同じプロジェクトチームにいた私は、チャンスだと思った。
・・・・・もう一度、彼に近づくチャンスだと。



その目論見はうまく行った。
また、仕事の相談を持ちかけて食事に行き、お酒の勢いで甘えて・・・・・。

そしてその後は今に至る。



「・・・・・という訳」

「成程ね~~~。うまい事行ったねえ」

「チャンスがあったんだよね。彼女も忙しくて、離れかかってるからさ?
ここで甘えて押したら、絶対イケる!って思ったんだ」

「でも、結局は麻里子と一緒にいるわけでしょ?彼」

「うん。ラブラブ?殆ど土日は泊まりに行ってるし。
彼も行きたいって言うと招いてくれるから」

「じゃあ、問題ないんじゃない?麻里子が実質『彼女』なんでしょ?」

「・・・・・でも、それでも向こうと別れたって言わないんだよね・・・・・」

「・・・・・そっか・・・・・」

「私は、はっきりあの人と別れて、私が『彼女』だって言って欲しいの!」

「わかる。それはそうだよね?いつまでもどっち付かずにはしてほしくないよね!?」

「そう!・・・・・あ。」

「・・・・・あ。って何?」

「そういえば、この間。彼と食事デートしてるときに、彼女に会ったんだ」

「えええ!?修羅場!?」

「・・・・・ちょっと。目がキラめいてるけど」

「ゴメンゴメン。でも、人の修羅場ほど面白いものはないじゃん?」

「全く。・・・・・でも私も人の事言えないから、許す!」

「あはは、だよね?・・・・・んでんで?」

「彼と歩いてる時に、向かいのテナントから見てる女がいてさ。
誰だろうって気になって、じっと見たら、彼女だった」

「うわ・・・・・。あれ?彼は気付かなかったの?」

「向こうに顔向けないようにしてたから。話しかけてさ」

「内心ヒヤヒヤだったんじゃないの?」

「それもあったけど。見せ付けてやれって思ってさ。
いい加減、私もこの状況にうんざりしてたし。彼にもいい薬になるだろうと思ったし」

「うわ・・・・・悪い女」

「何よ。だったら沙織ならどうした?」

「・・・・・わかんない。でも、同じ事したかも」

「確かに、いい事したとは思ってない。でも、あの時意地悪な気持ちになった」



そう、呆然としたような、驚きの色を浮かべたあの人。
隣に知り合いの子を連れていたんだろうけど。
私と、透さんを見て、傷ついたような顔をした。

『ごめんなさい』と思った反面。
『勝った』と思ったのも事実。

それでも、私は透さんと一緒にいたいのだ。
彼女から奪ってでも。



「その後は?何か反応あり?」

「・・・・・何も。透さんからも何も言われないし。
彼女はどうしたいのかもさっぱり」

「・・・・・ん~~~沈黙が怖いね。
私が彼氏の浮気現場なんて見たら、その日に電話かけて別れるか、怒鳴り散らすよね」

「だよね。普通はそうじゃない?でも何もないんだよね・・・・・」

「何か考えてるんじゃないの?」

「・・・・・そうかも」

「・・・・・覚悟しとかないとね?でも、案外あっさり別れてくれるかもよ?
だって、話からすると彼って麻里子を選びそうだもん」

「そうかな!?」

「私の考えだけどさ。構ってくれない彼女よりも、今いる麻里子を選ぶんじゃないのかな?」

「・・・・・」

「・・・・・麻里子?」

「・・・・・ねえ?金子さんに聞いてみようかな?」

「っは!?今の話を!?」

「ホントに全部言う訳じゃないよ?でも前にもなんかアドバイスしてくれたじゃん?
男の考え方ってやつをさ。だから、今度も何か私達とは違う事言ってくれるかもしれないし・・・・・」

「・・・・・麻里子がいいなら、私は構わないけど・・・・・」

「お願い!1人じゃ怖いから、付いてきて!」

「それくらいいいけどさ?平気なの?」

「頑張る。」

「私が聞く?」

「・・・・・いいの?」

「『友達の話なんですけど~』って言えばよくない?
麻里子から言ってもいいと思うけど、私の方が普通に聞けるし」

「是非お願い!!!」

「オッケ。任して。・・・・・それにしても麻里子がね・・・・・」

「何?」

「ううん?いつも余裕って感じだったのに。
こんなに、1人の男の人に必死になった麻里子見た事ないから、新鮮。
可愛いな、って思った。応援したくなった」

「・・・・・沙織」

「ほら、行ってみよ?」



そうかもしれない。

私はいつも、どこか冷めて男の人と付き合っていた。
遊び、と言ってもいいかもしれない。

でも、透さんは違うんだ。

初めて、この人じゃなきゃ嫌だって思った。
だから、諦めたくない・・・・・



沙織と一緒に、金子さんがいるバーカウンターへ向かう。
何か、いい話が聞けるといいんだけど・・・・・
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