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森の人編 ~種の未来~
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しおりを挟む全員ヘトヘト。自尊心もポッキリ折れた。
ここで優しくしてあげるのが人の道…なのだろうが。
「まあ見事にボロ負け、完敗だな」
「「「「「うぐっ」」」」」
「あれだけ啖呵切っといて、恥ずかしくねえのかよお前等」
「未熟すぎてぐうの音も出ません」
「魔術師1人に負けてんだもんな、すげぇな青の均衡」
そこまで言うか、と言うくらい追い込む獅子王。
貴方も私に負けてましたが?しかし、彼の場合は本番に強い。本気で来られたら危ないのは私の方のはず。
それより、彼等の背後で見ているオリアナが1番怖いです。
獅子王がふん、と腕組みして青髪君の真ん前に立つ。彼は頭を上げられず、俯いたまま。
「・・・何が原因か、何が足りてなかったか、もう分かってんな」
「はい。上には上がいる。剣を取る限り、常にそれを忘れてはいけないはずでした」
「お前等はこのまま『渦』に臨めば、少なくとも2人は命を落としたはずだ。・・・わかるな」
「はい。ありがとうございました」
正座しつつ、項垂れて獅子王のお叱りを受ける青髪君。しかしその顔色は悪く、脂汗をかいている。握りしめた拳は両膝に置かれているが、僅かに震えが。
他のメンバーはそれに気付いていない。
いや、獅子王の迫力に押されて気付けないのだろう。仕方がない、このまま倒れてしまうのもね。
「『癒しの光』」
「っ、あ・・・」
ふわり、と青髪君を光が包む。
数秒の間、光の波に包まれていたが、フッとかき消えた。
顔を上げた青髪君は、回復しきってスッキリした顔。
それを見ていた獅子王も目を見張った。
シェリアさんは驚きすぎて、口に手を当てて声も出ない。
「気分はどう?」
「はい、なんとも・・・というか、戦う前よりもいい?かもしれません」
「そう、よかったわね。アルマ、後お願いね?」
「おう、よかったなカーバイド。んじゃ次は俺と殺るぞ」
「え」
「文句ねえな?」
「・・・ハイ」
「大丈夫よ?怪我してもまた癒してあげるわね?」
「ヤベえな、あれジョッシュ死んだな」
「ウルズ、私達にも同じ事が言える」
「・・・わ、私にも使えるようになるでしょうか!?」
「・・・」
死にそうな顔をして、青髪君は獅子王について行きました。哀れ、青髪君。頑張れ、倒れても復活させてあげるからね!
ちょうどいいから、この魔法はシェリアさんにも教えましょう。そんなに治癒魔法と大差ないはずだし。
とぼとぼと歩く青髪君。
私は横に並び、ぐいっと引き寄せて頬にキス。
途端、後ろから悲鳴が上がりました。
「青髪君?勝負は私の勝ち。覚えているわよね?」
「・・・はい、モチロンデス」
「終わるまで、貴方は『私のモノ』よ?敗者に文句はないわよね」
「その通りです・・・」
頬にキスされた瞬間はちょっと嬉しそうにしていたけれど、『私のモノ』宣言された途端悲しみの顔に。
悲しみ、というよりは諦め?エルフのお姉さんと最低でも5回はニャンニャンしてもらう事が確定ですからね。
そんな事とは露知らず。年増の女(私です)に頬にキスされ、『モノ』呼ばわりされても受け入れる光景に、ミレイユさんは悲鳴をあげました。シェリアさんはショックすぎて固まってます。
ぽん、と背中を獅子王へ向かって押す。
既に獅子王は臨戦態勢。頑張れ、男を見せろ!
「いい度胸してんな、カーバイド。俺の女に手を出すか」
「待ってください、俺『モノ』呼ばわりですけど」
「あん?奴隷ってことは、夜の相手も承諾ってこったろ?ギタギタにしてやるからな、覚悟しとけ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ」
別のところでスイッチ入ってました。
死ぬ気で頑張れば、きっといい事あるはずだ、青髪君。
つかつかつか!と寄ってきたミレイユさん。
「な!な!な!何してんのよ!」
「敗者は勝者に従う。そういう試合をしたのだから当たり前でしょう?」
「この年増の色ボケ女!」
「・・・言っておくけど、彼も『合意』の上よ?それに、先に寝室へ誘ったのは彼であって私じゃないんだけど?」
「っ!」
「ごめんなさいね?彼、あなたじゃ物足りないんですって」
物凄く、意地悪な事を言っている。
彼女がまだ、彼とそういう関係ではないことを知っていながら、私は彼女を傷付けた。
ふるふるふる、と怒りの為に手が震える。
次の瞬間、私に手を振りあげた。
…が、その手を別の手が捻りあげて、地に伏せさせる。
「っ、痛ぁっ!」
「我が主に手を出そうなどと烏滸がましい。みっともなく無様に負けた挙句、筋違いの嫉妬をするとはなんと醜いのか」
「離してよっ!痛いっ!!!」
彼女を組み伏せたのは、さっきから静かに怒ってらしたオリアナさんでした。もう怖いよホント。『口を塞ぎますか』とか聞いてくるけど、それ多分別の意味での『口封じ』じゃないの?
さて、周りで傍観者&意識飛ばしてるお嬢さんに声を掛ける。
「で、もれなく貴方達も『敗者』なわけだけど」
「重々理解してますよ、レディ」
「・・・シェリア?大丈夫か?」
「・・・はっ!だ、大丈夫ですっ!」
「さて、罰を与えます。ウルズ、キール。貴方達には、エルフの女性達と関係を持ってもらうわ。2人以上ね」
「げっ、そこに来ます?」
「2人・・・ですか」
「ええ、負けたアルマと青髪君にももれなくその罰を与えたわ。元々その依頼も込みで引き受けた、と本人達も言っていたし文句は言わせない」
「あーはい、仕方ないっすね。思ったよりエルフも気さくだし、いいですよ俺は。明日からの事で発散したい時もありますし」
「・・・私も了解しました」
「え、お前キール、女とヤった事あんのか?」
「これでも学園時代は女に不自由した事はない」
「・・・意外だわ」
「そうですか?私は貴族の出なんですよ。貴族の嗜みとして、学園に通う頃には女性の事にはある程度通じていないと婿には入れませんので」
もしかして?あれですか?精通したらメイドさんがお相手とかして、女性に詳しくなっとくって奴?
…そうなると、エドってものすごーーーーくあの歳で色気あったのはそういう事かあ。納得できたわ、すごく。
ちなみに横でシェリアさんが顔を真っ赤にしています。
ミレイユさんはまだオリアナに抑え込まれたまま。
ミレイユさんと目を合わせる為に、私はしゃがむ。
「ミレイユ、貴方はオリアナに稽古を付けてもらいなさい」
「っ、なんで、指図されなきゃいけないのよ!」
「そりゃ貴方が私に負けたからよ」
「っ、それは!」
「それは?何?」
「あんな魔物を操るなんて聞いてないわ!卑怯よ!」
「手の内を全て教えるわけないでしょう?貴方馬鹿なの?
初めて遭遇した魔物に対しても、貴方そんな馬鹿な質問するの?『見たことないんだから負けたって仕方ない』って」
「っ!!!」
「ちなみに、あの時の攻撃で意識を失ったのは貴方だけよ。あとの3人は耐えたわ。鍛錬が足りないのは貴方みたいね」
私がオリアナを見ると、心得たと言うように頷いた。
無理やりに立ち上がらせ、開けた場所へ引きずっていった。
「ウルズ、ミレイユさんの方へ行ってくれる?
倒れるようならサポートしてあげて。多分オリアナは容赦しないと思うから」
「あー、わかりました。キール、回復薬くれ」
「ああ、わかった」
「キール、貴方は回復薬作りをお願い。
結構使ったでしょう?ストックはある?」
「心もとないですね。郷へ戻っても?」
「ええ、戻って作業をお願い」
「了解しました」
覚えたての飛行魔法を使い、郷へ戻る。
さて、残りは純情そうなこの子よね。
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