魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

文字の大きさ
73 / 85
第五章【灰】

護衛任務の依頼

しおりを挟む

鉱山より帰還し、ギルドへ戻る。
ジャネットは『またね~ん』とスキップするように受付へと戻っていった。
報酬は持ち帰ってきた素材を全て鑑定をしてから支払う、とのことだ。宿代に困っていることはないし、とりあえずいいだろう。

ギルドに併設している食堂で一息ついていると、周りの冒険者たちの話も聞こえてくる。



「おい、本当に行ったのか?砂漠地帯」

「ああ、確かになってきてるぜ、砂嵐」

「あの噂、マジだったのか」

「ま、俺もこれまでの砂嵐と見比べて・・・って訳じゃないからな、実際にどうとは詳しく言えんが。
一緒に随伴していた熟練者ベテランが言うことだ、間違いないだろ」

「薄くなってる、って事は、抜けられるのか?」

「いや、抜けるのはまだ無理だろう。あれを越えるなら、かなりの手練れが必要になるぜ」

「魔法使いがいるって事か?」

「そうだな、それにギルドも調査隊を出すって話だぜ」



ジャネットに聞いた通り、砂漠地帯の砂嵐は薄くなってはいるらしい。
ただし、砂嵐を抜けて先へ行くことはできないようだ。

調査隊を出す、というのも本当の事なんだろう。
腕のいい魔法使いを揃え、結界でも張って抜けていこうとするつもりだろうな。



「おにーさん」



砂嵐の向こう。かつて古い王国があったという跡地。
─────あれから、戻ることはしていない。身一つで追い出されたあの日から。



「すみませーんなのです、あのー」



砂嵐に閉ざされたままの故郷。
いや、既に故郷と呼べるまでの景観などないかもしれないが。



「聞こえてますかー?」
「あらん、その人を指名するのかしらん?」

「あ、はい、この人なら1人でも平気そうなのです」
「そうねん、確かにね」

「ん?ジャネット?鑑定終わったのか?」

「まだに決まってるじゃない。明日、明後日にはなるわ」

「・・・誰だ?」

「貴方をご指名の依頼人よ」

「依頼人、だと?」



ぺこり、と頭を下げる少女。
・・・雛ほど子供ではない。年の頃は10~12というくらいか?
若草色のフード付きのマントを被り、茶色の髪に緑の瞳。

最近俺は子供に縁があるのだろうか?



   ◻︎ ◼︎ ◻︎



「依頼とは?」

「こちらです」



ぺらり、と依頼票を差し出す少女。
顔を見ながら、差し出された依頼票を手に取ると、会釈をして自己紹介を始めた。



「私の名前は、ティルティリカティムティオです」

「・・・は?」

「ティルティリカティムティオです」

「・・・」

「長いので、ティティでよろしくなのです」

「あ、ああ・・・。シグムント・スカルディオだ」



依頼を受けた、というわけではないが、名を告げられたとすれば、名乗り返すのが礼儀だろう。
ティティ、と名乗ったその少女は、フードを被ったままでニコニコとミルクを飲んでいる。

依頼票に目を通す。・・・護衛、か。



「護衛、か」

「はい、砂漠地帯にあるいくつかのオアシスで取れる薬草が欲しいのです。
いつもなら砂漠地帯を主に探索してくれる冒険者さんにお願いしてるのですがー」

「出払っちまってる、と」

「はいー」



ふにゃん、と項垂れる。
確かに、砂漠地帯のオアシスには、質のいい薬草が生えている。
俺も砂漠越えの時は数度世話になった。水分をふんだんに含んだ葉もあり、水を手に入れられない箇所では役に立つ種類もある。

だが、現物を持ってこい、ではなく自分で採取するから護衛を、というのは珍しくもある。



「採取依頼、ではないんだな」

「いつもはそうする事も多いんですけど、自分を鍛えないといけないですし。
いつまでも冒険者さん頼りも良くないのです」

「・・・戦えるのか?」

「魔法を使えるのです。なので、おにーさんの補助ができるのです!」



ふんす、と気合を入れたティティ。
本人曰く、砂漠地帯の魔物も手強いが、最近砂漠地帯に出ている冒険者も多いので、強い個体は排除されているようだ。

まあ、妥当な線だろう。
自らのレベル上げに、採取。コクーン近辺のオアシスを2~3箇所回ればいいだろう。
鉱山で集めた素材の鑑定待ちにはちょうどいいかもな。



「・・・わかった、請けよう。出発は明日か?」

「はい!よろしくお願いするのです!」

「日帰り・・・は無理そうだな」

「オアシスで一泊程度のつもりなのです」

「そうか、わかった。テントの用意は・・・」

「自分のことは自分でするのです」

「なら構わない。明日はギルドで待ち合わせでいいか?」

「はいなのです」



それでは、とぺこりと一礼。
ま、砂漠地帯の様子も見てきたいと思っていた。

さすがに、あの依頼人を連れて砂嵐のある現場を見に行く事は難しいだろうが。
オアシスで情報を得るくらいのことはできるだろう。

ジャネットに依頼を受ける事を伝え、手続きをしてもらう。



「はい、これで終了。まあちょうどいいわね、戻る頃には鑑定も済んでいると思うから」

「ああ、暇潰しにはなるな。オアシスには常駐の奴等もいるだろう?
砂漠の変化についても聞けるだろうし」

「ふぅん?砂嵐の件ね?」

「ああ、どれくらい弱まっているのか、追いかけてる大物の話も気になるしな」

ねえ?噂だと、見上げるほどの巨体って話よん」

「見上げるほど、なあ?そんなデカい個体が砂漠地帯にいるとなると・・・デザートワームか?」

「あれも厄介よねえ。ま、強酸さえ浴びなければただのイモムシなんだけど」

「マウントロックスよりは楽な相手だが、見返りが少ないからな、アレは」

「でも今ならあいつの吐く糸玉も高く買うわよ?」

「他の奴等に期待してくれ。さすがに依頼人を連れてやり合う気は起きねえな」

「それもそうね。ティティちゃんよろしくね」

「知り合いか?」

「まあね、たまに薬草や素材を買いに来るの。師匠と2人で住んでいるそうよ」



身寄りのない子供、というわけでもなさそうだな。
まあ、護衛任務はさほど難しくもない。俺の目的もあるし、気楽にやらせてもらう事にしよう。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

処理中です...