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第一章【黒】
魔女の香草
しおりを挟む片翼の鷹亭には3人だけ。俺にダグ、ヒナ。ジーナはすでに部屋に戻っている。俺はさっそく疑問を口にする。
「魔女の香草ってのは、採取期間が終わるとどうなるんだ?光が抜けちまうのは知っているが、その後は?」
その問いに、ダグもエールをぐびりと飲みながら答える。もう料理作る気ねえな、こりゃ。ま、すでに客は俺とヒナしかいないのだが。他の客はすでに帰った後。ちなみにヒナは隣でせっせとプリンと格闘中だ。
「魔女の香草については俺もあまり詳しくはわからねえんだ。この世で誰が一番詳しいかって言ったらそれは『古の魔女』しかいないからな」
「・・・待てよ、『古の魔女』だと?それはお伽噺に出てくる3人の魔女の事か」
□ ■ □
白の魔女、モルガーナ。
緋の魔女、エルヴァリータ。
黒の魔女、ラゼル。
遥か昔、この世界が作られた時に生まれた3人の魔女。魔素を生みだし、制御し、循環させる事で、この世に人が住まう環境を創り出したとされる。
白の魔女は秩序を。
緋の魔女は破壊を。
黒の魔女は再生と死をそれぞれ司る。
3人の魔女は『古の魔女』と呼ばれ、今では深い眠りにつき、夢の中で世界を見守り続けているという。世界が終わる時に再び目覚め、新たな世界を創造する…
□ ■ □
「・・・っていう内容だろ?神殿がそう伝えているだけで真実なのか知らねえけどな」
「ま、そりゃそうなんだが、お前も古い遺跡なんかでその片鱗を見たことはあるんじゃねえのか?」
「・・・まあな」
確かに、これまで遺跡探索のクエストなどで、最深部の壁画や、そこで見つかる古文書には『古の魔女』達の情報と思われる記述も数多く見つかっている。
俺が今愛用している剣も、そういった遺跡で見つけたワケありの逸品だ。俺の魔力は少し特殊で、一般的な武器では壊してしまう。だがこの剣は今の技術者ではできないレベルの魔力付与がされていて、俺の力にも耐えられる。これがあるおかげで冒険者としてもソロで活動できるのだが。
「なんでこの薬草に『魔女』って名称が付いてると思ってる?そんなの魔女の魔力で育つからに決まってんだろ」
「っ!?待ってくれ、その話ってマジなのか」
「まあお偉方はその『魔女』を『古の魔女』と同義だと認めたがらねえからな?『魔女』は『魔女』でも系譜の魔女達の事だと思っている。確かに『古の魔女』の目撃例は少なく、多くはないからな」
「系譜の魔女、『古の魔女』達に教えを乞うた弟子達か。確かにそっちの魔女達と考えた方がしっくり来るかもな」
「お前も会ったことあるか?」
「まあな、『緋』の系譜には何人も」
この世界に『魔女』という存在はいる。『魔女』だからといって女とは限らず、男もいる。魔法使いとはまた別の存在となっている。すなわち、『魔法を使う者』と『魔術を使う者』の存在だ。
『魔法』と『魔術』は同じ物に感じるが、全く違う。
『魔法』とは呪文によって、己の魔力を使い、自然界の精霊の力を借りて力を使うもの。
対して『魔術』は大気に満ちる魔素を使用し、この世ならざる存在…精霊や悪魔と契約を交わし、その存在の力や精霊達そのものを使役するものだ。
『魔法』は自らの魔力と呪文さえあれば使用できるが、『魔術』はそもそも人ではない超常の存在と契約を交わさなければならない。その契約を交わした者を『魔女』と呼ぶのだ。
そして、俺の出会った『緋』の系譜に連なる魔女達は揃いも揃って交戦的な連中が多い。『魔女』絡みの厄介事は基本的にこいつらだ。
『白』の系譜の魔女達は、ひっそり暮らしている者が多いと聞く。『どこそこによく効く薬師がいる』とかいうのは大体この魔女達だ。
『黒』の系譜の魔女はあまり遭遇した話は聞かない。外界を拒絶して引きこもっているという噂があったりする。しかし名前だけは有名だ。
人数としては、圧倒的に『緋』の系譜の魔女。次に『白』の系譜の魔女。一番少ないのは『黒』の系譜だ。3人しかいない。その魔女が弟子をとっているかは知らないが、それ以上の情報は全く出ない。
「すると何か?この『深緑の森』には本物の魔女がいるってのか」
「だから魔女の香草が生えるんだろ?他の生息地も全てそうなんじゃないのか?俺はこの地以外の場所を直に確かめた事はないが、少なくともここの事を考えるとその線は濃厚だろ」
「ダグ、あんた、魔女に会ったのか?」
「おうよ、ここの魔女様はいい方だぞ?あの方がここにいるからこの村は環境にも恵まれているし、魔物の襲来に怯えることもない。この村はな、皆、魔女様に救われてここに来た者で作った村なんだよ」
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