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第三章【情】
王都建国祭
しおりを挟むドンドン、と階段を鳴らしてワイズマンが降りてきた。
雛はそれを見て『あ、いたー』と呑気に指差している。
「おう、お嬢ちゃんか!シグには会えたか?」
「ラーメンならんでるときにみつかった」
「あそこのラーメン美味かったろ?まだ他にも美味いところたくさんあるぞ!教えてやろうか」
「いえーい」
「ぶにゃー」
「お?さっきはいなかった猫じゃないか?うりうりうり」
「ぶにゃにゃにゃにゃ」
ぐりぐりぐり、と撫で回されている斑。背筋が凍る思いがする。いきなりキレて暴れたりしないでくれよ!
『そんなことをする理由がなかろう。まだこの王都で食ってない飯が山のようにあるからな』
『待て、んな事でいいのか』
『人間共のやる事は愚かだが、作る飯は美味いものが多い。嗜むくらいは良かろう』
どうやら斑は雛と同じで飯に弱いのか。まさかダグを助けたのも料理の腕でも察したからなのか?
おっと、それよりこの依頼の件を聞かないと。どういうつもりで受けたんだよ全く。
「おい、ワイズマン。このクエストは何だ」
「あ?それか。別にいいだろう、建国祭の間、お前の力をアテにするような大型クエストは発生しないよ。だったらこんな子供が会いに来たんだ、付き合ってやるくらいいいだろう」
「おっとなー!さすがー!シグとはちがーう!」
「あのなぁ・・・雛、お前依頼料は払えるのかよ」
「ハーブティーもってきましたよ?」
「・・・物々交換かよ」
「いちおうおかねもあることはあるけど、シグはこっちのほうがいりようかなとおもって」
はい、と下げていたポシェットからそんなもの入らないだろ、と言わんばかりの紙袋が出てくる。マジックバッグを見慣れているギルド内だからいいものの、外ではやって欲しくない。
「・・・かなりの量だな」
「ふんぱつしました!ごはんとかのりょうきんは、べつでだしてもいいよ?シグをやとうときのきんがく、ひなはわかんなかったからもてるだけもってきた」
えーとね、とポシェットに手を突っ込んで金を出そうとする雛を止める。こいつの事だから金貨の山を出してきそうな気がする。そんな事をしたら、よくない輩が雛に付いてくる恐れもある。
雛の身の安全というよりも、そいつらがどんな目に遭うのか考えただけで恐ろしい。斑に喰われるんじゃないだろうか。
「あー、いい、わかった。ここで出すな」
「いくらなんでもいきなりきんかをジャラジャラさせたりしませんよ?」
「・・・じゃあ何だよ」
「これにしてみた」
手を開いて出したのは、宝石の原石。おい、これはダイヤモンドじゃないのか?
「ぴんくなダイヤモンドです」
「おいお前な!貨幣価値を考えろ!」
「おうとならかってくれるところもあるかとおもいまして。こういうのたくさんあるんだけど、かってくれるとこ、シグしってるでしょ」
「あー、わかった。だからこれはしまっておけ」
金貨より驚いた。あんな原石どこから持ってくるんだ。まさか森の中であんなもの取れるのか?
『あれは我が散歩した時に取ってくるのだ。火山なんかに行くとゴロゴロしているからな。魔女といえど金は必要であろう』
『お前か、原因は』
『魔力銀なんかもあるぞ?お前なら欲しいのではないのか』
『・・・まあな』
依頼料として貰うのもありか、なんて考える俺。カウンターでクエスト受領の手続きをする。ギルドカードにクエスト受領の証を刻む。こうしてクエスト管理をする訳だ。
「・・・はい、お待たせ。じゃあクエスト受領ね?」
「了解」
「一応ヒナちゃんの依頼が優先だけど、緊急クエスト発生時には連絡するわね」
「ああ、わかった」
雛を探すと、ワイズマンの腕にぶら下がって遊んでいた。ワイズマンも、腕にぶら下げているソレが『黒』の魔女本人だとは思うまい…教えたらひっくり返るんじゃないのか?
「雛、行くぞ」
「ほーい!じゃあねーおじさん、あそんでくれてありがとー」
「ぶにゃー」
「おう、また来いよ!そっちの猫もな!」
冒険者ギルドから出ると、王都は建国祭の喧騒で騒がしい。ギルド内は外からの音をある程度遮る魔法が掛かっているからな。静かなもんなんだが。
「で?どこに行きたいんだ?」
「さっきのほうせきをおかねにかえます!たくさんあるんだけど、かいとってくれるようなところがないんだよね。むらにはしょうにんさんがくるけど、さすがにこれはかいとってもらえないから」
「確かにな。俺が代わりに売りに出せばいいんだろ?」
「うん、ひなよりシグがだすほうがよさそう」
お店に着く前に渡すね、と雛。また亜空間倉庫に放り込まれてるのか?それが一番手っ取り早いとは思うが、プライバシーもくそもないもんだな…
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