魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第三章【情】

王都の宝石屋

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 王都の大通りに面した宝石店。ここは買い取りもしてくれる数少ない宝石店だ。冒険者がクエストで拾ってきた宝石類は、基本的にギルド経由で売りに出されるものなのだが、こちらに直接買い取りをしてもらう冒険者もいる。

 とはいえ、一見の冒険者は断られる。どんな曰く付きの物を持ってこられるかわからないからな。なので顔を知られた人間でないと買い取りは難しい。


「これはシグムント様。本日はどのようなご要件で」

「宝石の買い取りを頼みたい」

「そうですか、シグムント様ならば歓迎します。ではこちらの部屋へどうぞ」

「ああ。おい雛、こっちだ」


 店内のディスプレイに張り付くようにして見ていた雛は、すとととと、とこちらに走ってきた。デブ猫は外で昼寝。基本的にくっついて来るというよりは好きに行動するものらしい。

 個室に入り、雛はごそごそと袋を取り出そうとしている。なんでこういう時だけ亜空間倉庫インベントリに入れるような事をしないんだこいつは。


「おい、なんでそこから出してんだ」

「え、なんで」

「俺の亜空間倉庫インベントリに移せばいいだろ」

「あれけっこうめんどくさい」

「今まで散々やってただろうが」

「まあまあそのときのきぶんですよ」


 店の人間が来る前に俺に渡そうとしているんだろうが、上手く出てこないようだ。そうこうしているうちに、この店の店長が出てきた。


「久しぶりですな、シグムント様。本日は買い取りをさせていただけるそうで」

「あんたが見てくれるのか?」

「ええ、私では不足ですか?」

「そんな訳ないさ、あんたの目利きは信用できる」


 しかし売り主は俺でなく隣でうんうん唸ってる子供だと見て、驚いたように目を見開く。


「あの、シグムント様。もしかして売り主はこちらのお嬢様で?」

「・・・ああ、俺は付き添いだ。変な輩に絡まれないようにな。事情があってこの子が売りに来ているが、その辺りは俺の顔を立てて聞かないでくれるか」

「・・・かしこまりました」


 ワケありですね、と目が言っている。魔女です、などと紹介できるはずもないので、このくらいの誤魔化しが精々だ。雛はようやく袋を出し切ったようで、顔を上げた。


「ふー、でてきた」

「あのな、詰め込み過ぎなんだよ」

「だっておうとにでてくることもないし、ここでうらないとまたそうこにつんどくしかないもん」

「こんにちはお嬢さん、見せて頂いてもいいですか?」

「うん、はい、これ」


 差し出したビロードの台に、雛が袋をひっくり返す。途端に中からゴロゴロと原石の山が。こぼれ落ちそうになっている。


「これはこれは」
「おいおい、出しすぎだろ!」

「なんかけっこうはいってた」

20、30はあるだろうか?大人の握り拳ほどあるものから、小さなものまで。
その中でも雛はひとつ、ふたつ手に取って引っ込めた。売るつもりじゃなかったものまで出てきたのか?


「どうすんだよ、それ」

「これは、ほかのひとにみせるやつ。シグにあげるぶんのやつはとってあるよ?」

「俺に渡すやつ?」

「うん、いらいりょうはそれにするね。さっきにゃもさんとはなしてたでしょ?」


 …まさか、魔力銀ミスリルか?俺の思考を読んだのか、雛はうしし、と笑う。
 鑑定している店長は、ひとつひとつ丁寧に見ているが、ほう、とため息をついた。


「これはまた・・・素晴らしいものばかりですね。イエローダイヤにブルーダイヤ。翡翠に瑪瑙、瑠璃までも。申し分のない原石です。いやはやいい取引になりそうだ」

「・・・そんなに、なのか?」

「ええ、これは一級品揃いですよ?よくこんなものを見つけて来ましたね?・・・っと、詮索は無用でしたね」


 どうやらかなりの値打ちもののようだ。火山の辺りを散歩、と言っていたがどこなのやら。おそらく人間が入ることなど不可能な場所だと思うが。
 といっても、魔女の財産と考えるとそこまで大層な額にもならないのか?こんなのゴロゴロ持っていそうだからな。

 宝石店の店主は出した原石を全て買い取ってくれて、白金貨で払ってくれた。その総額に目玉が飛び出そうになるが、雛はぽかーんと聞いているだけだった。


「支払いは白金貨でよろしいですか?」

「えとね、たべあるきしたいから、すこしぎんかとかほしいの!ごうゆうするの!」

「はっはっは、そうか建国祭ですからね!では少し銀貨でのご用意を致しましょう。残りは金貨と白金貨でお支払い致します。いやぁあのイエローダイヤモンドをどう細工しようか腕がなりますなぁ」

「おじさんがさいくするの?ひなみたーい!」

「ん?そうかそうか気になるかな?三日もあればカットも仕上がるから、見に来るかい?」

「みるみるー!ねぇシグ、ひなはおとまりするのにやどやさがす!てつだって!」

「まだ宿は取っていないのですか?では私が懇意にしている所をご紹介しましょう。ちょっとお待ちなさい」


 たくさんの宝石を買い取り、ホクホクな店主は上機嫌で雛に宿屋の紹介をしてくれた。…ガキ一人で泊まれるんだろうな?俺も一緒はイヤだぞ…?

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