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第三章【情】
ペット可?宿屋に宿泊
しおりを挟む宝石店の店主が紹介してくれた宿屋は、王都でも一二を争うような高級店だった。連絡が行っていたようで、すんなりと部屋を用意してもらう。
「わーお、ふかふかー」
「こちらでよろしいでしょうか?お泊まりはこちらのお嬢様おひとりですか?」
「あー、ここはペットは入れてもいいのか?」
「はい、大型の魔獣でなければ・・・」
「んなもん連れ込む奴がいるのか?」
「ご利用のお客様の中には、変わった趣味の方もおりますので・・・」
苦笑する宿屋の店員。ここは高級店だけに、金持ちが多いようでそういう人の中には大型の魔獣をペットとして飼う人もいるのだとか。
ペットは猫だ、というとどうぞ構いませんよ、との了承を得た。店員が出ていくと、雛は窓を開ける。するとひょいっとデブ猫が入ってきた。
「よくわかったな、ここだって」
『見ていたからな、お前が店の者に聞いていてくれて助かったぞ』
「ここまで高級店なら、ダメって事もないだろうけどな。一応ペットって扱いだから気をつけろよ」
『わかっている』
「にゃもさんとシグなかよくなってよかったねー」
「うるせ」
話せる事が普通になってしまった。まぁ斑の方が雛よりも話はわかるというか、通りやすいというか。さてこれからどうするんだ?
「それでどうするんだ?」
「シグオススメのごはんやさんいきたい」
「お前さっきラーメン食べてたろ」
「べつばらです」
「それは気のせいで入る所は同じだ」
とはいえ一応依頼人だ。仕方が無いので俺がよく行っている定食屋に連れて行く。今日は祭りということで、串焼きなんかを出していた。
雛は片っ端から買って!と俺の足をパシパシ叩き興奮している。肉から魚から渡せば渡すだけハグハグと食いついている。気付けば足元には斑まで。
『おい、その肉をもっとよこせ』
『・・・贅沢だな』
『何を言うか、資金源は我が拾ってきた石ころだろうが』
言うことも最もなので、借りた皿にドンドン焼けた肉や魚を乗せると嬉しそうに食べだした。回りの女達がかわいいー、と撫でているが気にせず食べ続けている。
雛は…?と見ると、焼いている店主の横に座り、次々とあれこれと強請っていた。何本食う気だ。
「おい、雛!」
「んまいれふ」
「はっはっは、いいって事よ!これだけ気持ちよく食ってくれるなんざ、料理人冥利に尽きるってもんだ!ほれ、シグも食え」
「くえくえー。このハムのあつやきがおいしい」
はぐはぐ、とハムを貪り食う雛。確かに旨い、いいやつ使ってるな?これ採算取れてるのか?
俺は串焼きを食べつつ、斑の皿に肉を補充する。空になると俺の足をてしてし、と踏んでくるからだ。そんな姿も回りの女達にしてみれば『かわいいー!』と言われているが。
他にも串焼きを買って食っている客がいる。串焼きは結構手軽に食べられるし、他の店のものも買いながら食べることもできる。ふと、話が耳に飛び込んで来た。
「なぁ、広場の人だかり、あれって何なんだ?」
「何だ、知らないのか?なんでもすごく良く当たる占い師がいるみたいだぞ?」
「占い師?それにしてはすごい人だったが・・・そんなに当たるのか?」
「それが百発百中らしいぞ?それに、すごい美人らしい!ベールを被ってはいても、その美貌は隠せないとさ!」
「占い師は女か?しかも美人?・・・おい、見に行ってみるか?」
「お前も好きだな?でもそれもいいな!」
どうやら広場に占い師のテントでもあるらしい。建国祭には各地からいろんな奴等が来る。大道芸人もいれば、さっきの噂話のように占い師もだ。
「ねーねー、おじさん?おまつりに、ダイナマイトバディのもちぬしのうらないしさんがきてたりしない?」
「ダイナマイトバディ?お嬢ちゃんどこでそんな言葉覚えてきたんだぁ?」
「あのひと」
「あー、なるほどなぁ」
ぐるん、と俺を指さす雛。雛に指さされた俺を、店主は何かニヤニヤして見ている。後で覚えてろよ雛…!
しかし占い師?さっきの奴等が話していた女の占い師の事か?店主も知っているようで、広場にすごい人だかりがあって、美人の占い師がいるらしいと教えてくれた。
「ダイナマイトバディかどうかはわからんがなぁ、すごい美人だって話だぞ?」
「ありがとーおじさん」
ひょい、と飛び降りた雛。俺の所まで来て、くいくいとズボンを引っ張りながら話しかける。
「シグ、おかいけいー」
「当然のように俺なのか」
「うん」
「・・・後で請求するからな」
「さっきのぎんかのふくろ、あとでわたす」
俺と雛、斑の分の支払いを済ませ、店を出る。雛に次にどこへ行くか聞くと、広場に行くと答えた。
「占い師か?」
「うん、しりあいのひとがきてるとおもうから」
「知り合い?」
「うん」
れっつごー、と歩き出す雛。斑はいつの間にかいなくなり、近くの塀の上でウトウトしていた。全く自由すぎやしないか…?
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