魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

文字の大きさ
40 / 85
第三章【情】

広場の占い師

しおりを挟む


 王都の広場には、中央に大きな噴水。
 その周りに色とりどりのたくさんのテントが貼られ、細工物を売っている所や、大道芸人が芸を披露していたりしている。
 そして一際人だかりができているテント。ズラッと人が行列をなし、一定時間でテントから人が出てくる。


「す、すごかったね・・・」
「私、彼と幸せになれるって!」

「あの子に告白してみろって!」
「しかし占い師の姉ちゃん美人だったな・・・」

「・・・えらい人気だな」

「もうかってるぅー」


 ひょこひょこ、と雛は列を抜け、テント近くへ行った。おい、占い師に視てもらうために来たんじゃないのか?
 俺は雛を追いかけ、列に並ばずにただテントの近くへと歩く。すると、テントから黒いヴェールを被った女が出てきた。

 頭から黒いヴェールを被ってはいるが、その女性的な肉体は隠しようもない。薄く透けるヴェール越しに見える女性の美貌も確かに確認できた。


「アイーラ、げんき?」

「まあ、雛様♡来てくれましたの?」

「うん、アイーラにおねがいしたいことあって!」

「わかりましたわ、今は忙しいんですけど、終わりましたら訪ねますわね?どちらにお泊まりになってますの?」

「えっとねー、・・・なんだっけ、シグー?」


 ぐるりと振り返り、俺に話を投げる。あの宿屋の名前?俺も覚えてねえぞ?雛の行動に習い、占い師の女も俺を見た。きらり、と瞳が光ったように見える。


「あらまあ、いいオトコ♡」

「は・・・?」

「雛様のいい人ですの?」

「ううん、ちがうよー」

「あら、でしたら・・・」


 つい、と俺に寄り添ってきた女。至近距離でじいっと俺を眺め、品定めをしているかのようだ。むに、と押し付けられる感触に悪い気はしない。俺も男だ。


「今夜、一晩いかが?」

「っ、あのな、依頼人の前だが」

「シグがきにいったの?どうぞどうぞ」
「ですって♡」

「・・・お前そこは空気を読むところだろう」

「くうきをよんだからこそのへんとうですが」

「うふ、決まりですわね?愉しませてさしあげてよ?
雛様、お仕事が終わったら宿屋にお訪ねしますわね?貴方はその後ゆっくり私と遊びましょ」


 では、とスリットの入った長いスカートを翻して、占い師はテントへと戻っていった。
 随分と…奔放というか…なんというか…


「シグのはなのしたのびてる」

「伸びてねえよ。あの女、お前の知り合いじゃないのか?いいのかアレで」

「いいの、アイーラはつよくていいおとこがすきなの。だいじょぶ、どこまでもベッタリくっついてくるような、いつもシグがうんざりしちゃうようなおんなのひととはちがうから」

「お前は俺の女性遍歴を知ってるのかよ」

「つるつるのおじさんがおしえてくれた。シグ、おうとでメグリカってひとにおいかけまわされてるって」

「・・・ワイズマン、あいつ・・・」

「そのひとよりアイーラのほうが、ひとばんたっぷりたのしませてもらえるとおもうよ?」

「ガキに言われたくねえ」

「やだなぁシグってば。ひなのほうがうーんとおねえさんだってしってるくせにー」


 ぺしん、と足を叩く雛。確かにメグリカとは夜の関係を持った直後から追い掛け回されている。メグリカは酒場の歌姫なんだが、ああいう職業の女は割とそういう関係はサバサバしていてその場限り、という女が多いのだが。
 何度か関係を持った後から、かなり追い掛け回されていた。しかしメグリカも仲間と街を転々としているので、今はこの王都にはいない。建国祭があるから戻って来ている可能性もあるんだが。

 しかし、さっきの女と関係を持つにしても、こいつの知り合いって言うのがな…俺はあんまりそういう夜の相手は知らない間柄の方が楽なんだが。
 こんな体だと、女と所帯を持つこともままならないし、下手に孕ませたりすると問題だ。なんせ父親はいつまで経っても歳を取らず、最終的には年齢も追い越してしまうからだ。
 だからこそ、俺の女性関係は大体夜の職業の女になる。彼女達は大抵、決まった相手を持たずに、その晩だけの関係を望むからだ。俺も街を転々としていた事が多いし、この王都で永く住むようになってからはここに定住するような女は選ばない。


「んじゃ、とりあえずやどにもどろー。ひながよるにきくおくすりをつくってあげるね!」

「いらん」

「そーお?たぶんシグ、アイーラのおあいてしてたらあしたおきれなくなるよ?それでもいい?」

「・・・お前の知り合いは何なんだ」

「こいおおきおんななのです」


 宿に戻ると、窓辺にマダラが寝ていた。日がよく当たって気持ちいいんだろう。雛が進めるので俺も一眠りさせてもらう事にした。


「デカいな、ベッド」

「ひながなんにんねれるかな」

「五人は並べるだろ」

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ
恋愛
 初夜の最中。王子は死んだ。  犯人は誰なのか。  妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。  12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...