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第三章【情】
夜の蜜談
しおりを挟む「こんばんは♡来ましたわよ、雛様」
「あれ、はやかったねアイーラ」
「ええ、サクッと終わらせて来ましたわ?今日の夜のお相手を吟味する必要がなくなりましたから」
「なるほど、いっせきにちょう」
すごい会話が聞こえるが、いいのかそれで?女二人の話し声で目が覚める。部屋には先程の占い師の女性、と思われる女が来ていた。俺と目が合うとうふん、と微笑む。
「雛様、紹介してくれませんの?」
「いいの?いっても」
「雛様のお知り合いなら、最初から知っていた方が後腐れがありませんもの」
「なるほどー、シグこっちきてー」
部屋の中にある応接セットに座り話していた雛は、俺をこいこいと手招く。寝た振りもできそうにないので、俺はそちらへ行き、雛の隣に腰を下ろした。
目の前には美貌の女。長くウェーブのかかった黒髪。褐色の肌に、蜂蜜色の瞳。光の加減で金色にも見える。唇は紅を引いたかのような赤。
「雛様のお知り合いならば遠慮なく。私の名はアイーラ。アイーラ・フルクレアと申しますの。お見知り置きくださいな」
「・・・待てよ、アイーラ、だと?」
まさか、と思うが。そういや最初からこの女は雛の事を『雛様』と様付けで呼んでいた。あの『氷の魔女』と同じように。
そして、『アイーラ・フルクレア』という名前。それが示す現実はひとつ。
「・・・『情熱の魔女』か」
「あたりー」
「私も捨てたものじゃありませんわね!」
「いやちょっと待て、『黒の系譜』の魔女がなんだってあんな所で堂々と商売してるんだよ」
「あら、私は毎年ここの建国祭で稼がせてもらっていてよ?」
「ワンナイトラブもね」
「あら♡素敵な殿方と過ごす夜ほど燃えるものはありませんのよ」
「・・・・・・性に奔放すぎやしないか」
「アイーラはむかしからこうです」
「止めろよ、師匠だろ」
「なんで?おとこのひとだって、こんなダイナマイトバディのびじんがあいてならおかねだしてでもひとばんともにしたいでしょ?
でもアイーラにきにいられたらタダですよ?」
「当たり前ですわ、私も愉しませてもらうんですもの」
どうやらこの魔女はかなりの男好きのようだ。あそこで占いをしているのも、夜の相手を吟味する為でもあるとか。確かに『美人の占い師』なんて騒がれりゃ祭りで盛り上がっている男ならホイホイ見に行くだろうし、後腐れなく一晩だけの関係、とくればOKする男もいるだろう。
…俺も基本的にはその口なんだが。
「あのね、アイーラはほうせきのカットとくいだったよね?」
「ええ、得意ですわよ?手頃な原石でも見つけてくれましたの?」
「うん、これとこれー」
パッと手のひらから取り出す雛。それは昼間に宝石屋で引っ込めたものだろう。『情熱の魔女』はそれをつまみ上げ、室内の魔法の灯りにかざして確認する。
「あら…ピンクダイヤに、こちらはスタールビーかしら」
「あたりーさすがアイーラ!」
「キレイですわねぇ、私が欲しいくらい」
「もういっこあるから、これはあげる。そっちはキレイにカットして?タリスマンにするから、カットはまかせるね」
「おまかせくださいな、明日には出来ますわよ」
「ひなはおうとにみっかいるつもりだから、それまでにしてくれたらいいよー」
「わかりましたわ、丁寧に仕上げさせて頂きます」
原石を持った手がくるりと翻ると消える。この魔女も亜空間倉庫を持っているのだろう。そして立ち上がると、俺の腕を取って絡ませてきた。
「では参りましょうか?シグ」
「・・・あー、おい、本当に行くのか?」
「あら、私ではご不満?」
「不満、じゃないが・・・」
ちら、と見下ろす雛はふわ、と欠伸をしている。どうやら寝る体勢に入ろうとしていやがる…
「あ、シグ、あしたもあさからたべあるきですから!というわけでアイーラ、シグがあるきまわれるていどのたいりょくはのこしてあげてね?」
「わかりましたわ、おまかせくださいな」
「・・・そこは俺に言うところだろ?」
「どっちかというと、たぶんアイーラがシグのうえにいるかいすうのほうがおおいとおもうよ、ひな」
「変な想像してんじゃねえ!」
なんでこんなことを言われて送り出されないといけないのか…萎えてしまう。しかし隣の魔女は楽しみ、とばかりに機嫌がいい。
「私、上でも下でもどちらでも良くってよ?シグ」
「あのな・・・」
「立ったまま、っていうのも興奮しますわよねぇ」
…なんか搾り取られる様な気がしてきたんだが気のせいか?しかしこの発言はほとんど現実になる。確かにいい思いはさせてもらったが、俺よりもアイーラの方が元気なのは参る…
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