魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第三章【情】

黒の謝肉祭【ブラック・カーニバル】

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「・・・という訳だ。信じられないと思うが、これが王都ギルドが掴んだ情報の全てだ。これで今回のブラックオークションを中止してくれ、とは言えない。だが伝えないのは信義にもとる。だから俺の話はこれで全部だ」

「お頭・・・」
「わかっている。他の奴等ならいざ知らず、閃光ひかりのスカルディオの言うことだ。嘘はないだろう」


 やっぱその二つ名かよ!今はそれで信用を得てるから仕方ないけどな!俺は嫌なんだ!・・・しかし今はそれをぐっと堪えて彼等を見る。

 モルドは約束通り、自分のルートの親分である人の元へ俺を連れて行ってくれた。俺は数回モルドを通じ、この裏ルートで品物や情報を手に入れた事がある。
 その事も今回会ってくれた事に一役かっているのかもしれない。蛇の道は蛇だ。


「あんたの言うことは筋が通っている。確かにアレはあまりお目にかかりたくない代物だった。・・・だがこのブラックオークションを中止出来るかといえば・・・」

「ああ、それは仕方ない。これも『裏』全体の面子の問題でもあるんだろ?そこまで入り込もうとは思っていない。だが、ターゲットは『この地下にいる人間』だと思う。何が起こるかわからないが、逃げたいやつは逃がしてやってほしいと思っている」

「・・・そうだな」
「お頭!?」

「モルド、手前は上に上がれ。この兄さんを連れてな」

「ちょ、待ってくださいよお頭!俺も」
「これは命令だ。いいな。それからジョニー、お前もだ。あと数名選んで地上に上げろ。終わり頃に戻ってくりゃいい」


 どうやらこのお頭は俺の言うことを信じてくれたようだ。しかしそれにモルドを巻き込んでしまったことは、申し訳ない。


「・・・すまない、モルド」

「いや、今回は旦那が来てくれて助かりましたよ。もしかしたら全滅って事もありえましたんでね」


 お頭に促され、俺とモルドは地上への道を歩く。無言になってしまうのは仕方ない事か。
 …そろそろオークションが始まるな、と思うと、背後から遠く叫び声が聞こえてきた、ような気がして振り返る。


「・・・・・・」

「旦那?どうしまし・・・」


 途端、通路の奥深くからこの世のものとは思えない叫び声が微かに聞こえてきた。俺もモルドも背中に緊張が走る。


「だ、だん」
「モルド、お前はこのまま地上うえに向かえ。もしかしたらここ以外の場所から人が出てくるかもしれない。そいつから話を聞け、いいな!?」

「待ってください、俺も」

「ダメだ、お前は地上うえに行く義務がある。俺を連れていく他に、お頭に何か言われているだろう」

「っ、」


 やはりか。さっき部屋を出る前に、お頭はモルドに何かを渡していたのが見えた。きっと街にいる誰かに伝える事か渡すものがあるんだろう。
 返事を待たず、俺は来た道を戻る。どんどん闇の深い方へと走りながらも、俺は身のうちから漏れる恐怖を感じていた。



     □ ■ □



「っ、何だ、これは・・・」


 地下の会場に着いた時には、そこがさっきと同じ場所とは思えぬ程に様変わりしていた。

 赤く染め上げられた壁。床。天井。肉片らしきものが散らばっている。ウゴウゴと蠢く肉塊がそこら中に固まり、人の声ならぬ呻き声を上げていた。


「た、たす、け」

「誰かいるのか!?」


 振り返ると、そこには一人の男が這いずっていた。全身に青黒い模様が走り、その模様がおかしな光を放っている。一瞬側に寄るのを躊躇した瞬間、跡形もなく弾け、周囲にあるのと同じ肉塊へと変化した。


「あ、あ・・・?」

「やはりこうなりましたわね」


 艶のある声。振り返ると、黒い蝶が飛んでいた。その周りに放たれる燐光が集まり、一人の女の姿を取った。


「アイーラ・・・?」

「人の執念と言うのは恐ろしいものですわね、雛様」

「雛!?」


 気付けば壇上には雛がいた。その前に置かれたキャスター付きのテーブルには、小さな小箱。封は開けられ、中には


「どういう、ことだ」

「おそらくオークションの最中、あの封を開けたんでしょうね。その瞬間、呪詛は完成し、呪いは放たれた」

「そん、な」


 壇上の奥から、ひとりの男がよろめき、出てきた。そいつにはまだ、体にあの模様は取り付いていない。


「っ、ひ、た、助けて、」

「・・・」
「・・・」

「お、おい」


 雛とアイーラはその男を色のない瞳で見つめている。俺はそいつに声をかけると、その男は俺に突進してきた。


「お、お前!俺の身代わりになれ!そうだ、そうしろ!」

「は?何言って、っ」


 どん、と突き飛ばされた。バランスを失って転び、体制を立て直すとそこには、間近に迫るあの。それはまるで生きているかのようにうねうねと動き、近づいていた。


「っ、これが『呪詛』の正体かよ!」

「ひ、ひひ、俺の代わりになれ!」


 くっそ、あの男!俺を盾にしやがったな!?どうする、これは剣でどうにかなんのか?それとも魔法?
 一瞬で判断し、とりあえず離れないと!と思った次の瞬間、その模様は俺を無視して、俺を突き飛ばした男へと素早く動いて捕らえた。


「・・・え?」
「う、うわあああ!なんで、何でだよ!」


 見逃された?どうして?

 驚く俺の目の前で、その男の全身に模様が回り、先ほどと同じように弾け、肉塊へと変化する。すると、全ての肉塊がを上げた。それは女の声で、聞き取れはしなかったが、何故かを上げているとわかってしまった。
 
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