冷酷社長の愛人なんてお断りだ!〜特殊能力系男子の受難〜(仮)

月影うさぎ

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第一章 おれとアイツの出逢い

最悪な再会

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「歩夢、本当にありがとうな。妹も喜ぶよ」

そう言って笑顔で指輪のついたネックレスを受け取ったのはおれの友人であり、バイト仲間の坂崎直哉さかざきなおやだ。

「いいってことよ」

そのネックレスは直哉の妹が恋人から貰った大切な物。
それを不良に盗られたと聞いて、おれは取り返すために昨日不良の元へ向かったのだ。
そのせいで色々とヤバい目にあったけど、無事取り戻せたので良しとする。

思い出すだけで恥ずかしいやら腹立つやら、とても複雑な気持ちになる。
うん、あれはただの事故だ。
記憶から抹消しよう。
どうせもう会うこともあそこへ行くこともない。
というか行きたくない。

「不良のヤツら大分ヤバそうなやつだったけど、歩夢お前何かされてないか?怪我とかない?」

「なんもなかったよ。おれは無傷!なんたっておれにはピンチを逃れる術があるからな」

直哉はおれが特殊能力を持っていることを知っている。
それでも常に身を案じてくれる優しい奴だ。
何も無かったと言えば嘘になるけど、昨日のことはさすがに言えない。
だって言えるわけないだろ、いかにもヤバそうなやつに痴漢されました、なんて。
まぁ、おれがやってることなんて危険と隣り合わせだしこんなこともあるさ。
もうあんなヘマはしない。

おれは普通の人にはないこの力を使ってなんでも屋みたいなことをしている。
なんでも屋と言っても身近な人の悩みを解決するくらいのものだけど。
たまに噂を聞きつけた人が相談しにくることもあるかな。
おれの力で人の役に立つなら何よりだ。

「そういや歩夢。今日は珍しくいつものネックレス付けてないんだな」

「え?」

直哉がふと気付いたようにおれの首元に目を向けた。
それにならうようにおれは自分の胸元を見る。
すると……。

「あ!?兄ちゃんから貰ったネックレスがない!」

そこでようやくおれはいつもの感触がないことに気付いた。
慌ててポケットの中やカバンの中を探す。

「……ない、ない!ここにもない!どこにもない!」

探しても探してもそれらしきものは見当たらない。
どうしよう、おれあれがないと……。
おれ……!

「歩夢、落ち着けって」

「だってぇ……」

「この後のバイトが終わったらオレも探してやっから、んな泣きそうな顔すんな」

直哉は落ち込むおれの頭にぽんと手を乗せる。
直哉はおれを安心させるように笑った。

「……うん、ありがと」

直哉に言われると本当に大丈夫な気がして安心する。
同い歳なのに安心感が半端ない。

「可能性としては家に置いてきたか、どこかに落としたかだけど、心当たりはあるか?」

直哉にそう言われて記憶を辿ってみる。
んーと昨日急いで家に帰ってそれから……。

……ん?
昨日家に帰ってからネックレスを見た記憶が無いような……?
そこで頭の中に浮かんだ一つの可能性……。

「昨日ネックレスを取り返したとき落としたかも……」

うわぁ……。
逃げることに必死で気付かなかった……。
ネックレス取り返して自分のネックレス落とすってアホか!

「それじゃ、バイト終わったら一緒に探しに行くか」

直哉がそう提案する。
その申し出は嬉しいんだけど、なんせ昨日ヤバいやつがたくさんいた所だ。
治安が悪いのは間違いない。
直哉をそんな危険な場所に連れて行きたくない。

「い、いや、おれ一人で行ってくるよ」

「けど歩夢は意外とドジだからな」

「うっ、おれはドジじゃありませんー。バカにしてんのか」

「バカにしてんじゃねぇよ。心配してんだ」

直哉は心配そうに眉根を下げておれを見る。
バイトが終わった後だと遅い時間になるからだろうか。
本当に心配性だな、直哉は。

「心配ねぇって!さくっと行ってさくっと帰ってくるよ。昨日のヤツらがいないとも限らないし」

「……わかったよ。ネックレスが見付かっても見付からなくても家に着いたら連絡しろよ?」

「あぁ。ま、もし仮にヤツらがいてもコテンパンにしてくっから!」


――――――――


とは言ったものの……。
あぁ行きたくねぇー!
おれは嫌々ながらあの路地裏に向かう。

時刻は午後十時。
当然のことながら辺りは真っ暗である。
不良とかち合うのは別にいいんだけど、龍ケ崎さんと会うのは御免だ。
二度と行くまいと思ってたのにまさか今日行くことになるなんて思わなかった。

おれのネックレスは紅くて三日月型のもの。
離れて暮らす五個上の兄ちゃんから貰ったお守りだ。
昔、おれの力の強さを心配した兄ちゃんが一生懸命作ってくれたんだ。
兄ちゃんにはおれみたいな能力はないけど、そのお守りは十年以上経った今でも効力を発揮している。
おれの能力の安定剤みたいなものだ。
だから何としてでも探し出さないといけない。

そうこうしているうちに路地裏の手前に差し掛かった。
手前にある街灯の光は路地裏まで届いてない。
そっと覗いて見た。
暗くて見えにくいけど不良達はおろか誰一人いない。
おれは少しほっとしつつ、携帯電話のライトを付けて路地裏へ入った。
そしてライトで足元を照らしながらうろうろと探し回る。

「んー、あると思ったんだけどなぁ……」

それらしきものは一向に見当たらない。
探すこと数十分。

「仕方がない……。明日明るいうちにもう一回探しに来るか……」

おれはしょんぼりと肩を落としながらも諦めて帰ることにした。
路地裏手前の街灯へ差し掛かったそのときだった。

「探し物はこれか?」

どこからか男の低い声が聞こえた。
おれは反射的に振り返る。

「な、んでアンタが……」

そこにいたのは昨日の変態……もとい龍ケ崎さんだった。
しかもその手に握られているのは間違いなくおれのネックレスだった。
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