上 下
20 / 31
愛の軌跡 ~盟約~

20(※)

しおりを挟む
 温かなその優しさにまた少しだけ泣きながら、ハルカリオンがヒイロの肩口に顔を埋めると、未だ勢いの衰えぬ剛直が目に入ってしまった。

「……っ、お前。苦しいだろ、これ」
「大丈夫です、から……」

 そういう声は微かに震えていた。
 夫となる主の命が尽きるまで続く血の盟約。それはどの呪いよりもどんな拘束魔法よりも強い力を持ち、抗おうとすればするほど渇きや苦しみが増し、死んだ方がマシだと言われている。実際、自ら命を絶った者も多い。
 本来なら抗えぬ程の欲情に苦しんでいるだろうに、ヒイロは自分のことよりもハルカリオンを優先して普通に振舞っている。血の盟約に抗うなど余程の強い精神力が携わっていないと出来ないことだ。

 (さすが勇者だな)

 ハルカリオンは心を決めると、初めて他人の欲望へと手を伸ばした。

「……わっ! ハルカさん、やめてください! またエッチしたいとか抱かせてとか、全部冗談ですから!」

 性器に触れようとするハルカリオンの手を掴んで、ヒイロが慌てたような顔をする。

「くっ、はは。泣きそうな顔をして嘘を申すではない。お前は本当に表情がころころと変わる男な。僕の周りには鉄面被なやつか、僕を畏れ視線すら合わせてくれぬ者ばかりだから……見ていて飽きない」
「……ハルカさん」

 眉を八の字ににさせて困ったように呟くその顔が、ハルカリオンの中に芽生えたばかりの愛おしさを倍増させる。

「それに、これを治める手伝いくらいはしてやると言っただろう? お前には浴室で散々な目に遭わせられたからな。この際だ。仕返しをしてやる」

 意地悪な笑みを浮かべるルカリオンを見て小さく息を飲んだヒイロの手から力が抜ける。その隙をついて優しく握る。

「……っん」

 ギンギンものをゆっくり上下に動かし始めると、形の良い鼻から甘い声が漏れ始めた。

「……ぅ、あっ。ハル……カ、さんっ……ちょ、これ、やば……」

 正直自分のものしか慰めたことがないハルカには上手く出来ているかわからない。しかも慰めるとは言っても生理的に催した時に事務的にその熱を発散するくらいだ。

「どう、だ…? 僕の技巧では物足りないかもしれないが……」
「はぁ、ぅ、く…っ、そんなこと、ない、ですよ……あなたが俺のに触れてくれているってだけで…正直、すぐにでも出ちゃいそう…です…っ」

 眉間に皺を寄せ堪らないという表情をしたヒイロは、ハルカリオンを抱きしめる腕に力を込め、首筋に顔を埋める。
 それはまるで幼子が母に縋るみたいで、ハルカリオンの心は益々キュンとした。

「今だけは甘えていいぞ。僕はお前よりおよそ100歳は年上だからな」

 大量の先走りがあっという間にハルカの手をグチャグチャに濡らす。

「ハ、ルカさん……もう、いい。も、もう十分ですから…トイレに行かせて……っ、手を離して……くださ……うっ!」

 ハルカリオンは自分も大好きな丸い先端を親指でくるくると撫でる。

「抗えば抗うほど苦しいのはお前だ。それに、僕も責任をとっているだけだ。気にするな」
「せ、責任……?」
「ああ。そうだ。お前の身体をこんな風にしてしまったのは僕のせいだからな」
「それってどういう……ん、んんっ!」 
「……あとで全てを話す。だが、今は……こっちに集中しろ。少しだけだが、楽にしてやる、から……んっ」

 ヒイロの唇を割って強引に舌を入り込ませると、その隙間から慣れないながらも自分の唾液を頑張って流し込む。

「んんっ、ハル……んくっ!」
 
 ジュルっと音がして、ヒイロが必死になってハルカの舌と共にそれを吸う。

「ん、ふ……っ、がっつくな、いくらでもくれてやるから…ほら、もっと……飲め……んっ」
「ン、あふ、んぅッ、ハルカさん…んぐ、んつ、んぐっ」

 舌で唾液を掻き集めてそのまま再びヒイロの中に流し込み、互いの舌を絡ませ擦り付けて吸い合う。
 上手く流し込めなかった唾液が互いの口端から漏れ流れ、ラグの上にポタポタと落ちていく。
 上手く出来ているかは分からないが、強直を握る手も休めず動かし続けるうちに少しずつハッ、ハッ……とヒイロの息もあがっていく。
 それに呼応するようにハルカリオンの息も徐々に上がっていき、何も纏っていない二人の肌は汗ばみ、まるで肌までもがキスをしているようにピタリと吸い付き合う。時折ヒイロの肌に擦れる胸の先がえもいえぬほどの快感をじんじんと伝えてくるが、緩く立ち上がりつつ自分の中心を必死に諌める。

(自分の欲よりも今はヒイロの方が大切だ…!)

 その熱い感覚に浮かされながら唇や唾液だけでなく、熱い吐息にも己の魔力を乗せ分け与える。

「はうっ…もしかして身体の中に流れ込んできたこれ、ハルカさんの魔力…ですか?」

 じわじわと流し込む魔力に驚いたのか、ヒイロが驚いたように少しだけ口を離す。

「そうだ。まぁ、最も有効なのは体液であって、魔力自体は気休めにしかならないが。どうだ? 不快はないか? 魔力には相性があるからな」
「不快どころか……ハルカさんの魔力が俺の中に染み渡って……っ、うぐぅっ!」

 ハルカリオンの下唇をやわやわと食んでくるヒイロの、握りこんだ性器が更に大きくなる。

「お前……まだ大きくなるのか!?」
「はは、今はまだ80%程度ですね。ちなみにハルカさんの中に入った時は70%程度ですよ」
「………そうか。70%……」

 100パーセントフル勃起状態のこれを一瞬想像しかけたが、今はそれどころではないと頭から追い出す。

「他人のものを触れるのは生まれて初めてだから下手でも文句は言うなよ?」
「へえ、ハルカさんでもひとりで慰めることなんてあるんだ? 見てみたいなぁ…こんど見せて」

 肩で息をしつつも、うっとりしながらもその黒い瞳の奥にチリチリと雄の欲望が垣間見えて、背中にゾクリした何かが走り抜ける。

「口を閉じろ…」
「ん、は……このもどかしさしかないのが逆に最高なんで気にしないでくだ、さい…んぅっ、やば。この未熟な手コキプレイ……エロ過ぎ……っ」
「っ! 閉じろと言っているだろうが!」
「は、はうっ!」

 少しだけ握りしめる手に力を込めると、ヒイロの性器は更にギンギンに張り詰め、ぴくぴくと跳ね今にも弾けそうになっている。

「……ヒイロ」
「ハルカさん……」

 互いの唇を味わうように食んで、再び口内をかき混ぜ合うような濃厚なキスをしてから唇をゆっくり離すと、互いの唇を繋ぐ鎖のように唾液の糸がぷらりと垂れ下がり、真ん中からプツリと切れる。
 その切れる唾液すらも惜しいようにヒイロは赤い舌を伸ばしてハルカの唇をペロッと舐める。
 その行為はあまりにも無邪気で、ハルカはヒイロを抱きしめ願いながら手を動かすと、ハルカの首筋に鼻を埋めていたヒイロが熱に浮かされたまま呟く。
「ハルカさんの唇、ちょっと腫れてしまいましたね。ああ……あなたの運命の相手が俺だったら……いいのにな」
「……バカ。何を言っているんだ」

 顔に熱を感じ、きっと真っ赤になっているであろう顔をヒイロに見られたくなくて、うっすらと汗ばむその額にキスをした。

「……あ、ハルカ……さんっ」

 背中に回る響空の手がハルカリオンの痩身をぎゅっと抱きしめながら、催促するように腰を前後へと揺らす。

「わかった。もっと早く動かせ、だな」

 不思議だ。どうしてヒイロの心がわかってしまうんだろう。盟約にはそんな力はないはずなのに。
 胸が切なくもくすぐったく疼く不可思議な感覚を感じながら、性器を握る手の動きを早めた。

「う、ぐぅっ! 出るっ! 出ます! ああっ!」

 どうか、今だけは少しでも気持ち良く感じてくれますようにと強く願うと、息を張り詰めたヒイロは大きく唸りながら、ハルカリオンの手の中に熱く大量の熱を放つ。
 吐き出すその勢いはものすごく、一滴の熱が頬を濡らし、ハルカリオンは無意識にそれを指で拭って自らの舌で味わう。
 青臭く苦味の強いそれが喉元を通る頃、とても甘いと感じた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女装魔法使いと嘘を探す旅

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:8

ちびヨメは氷血の辺境伯に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:42,561pt お気に入り:4,729

前世で断罪された悪役令息、今世では幸せを願う。

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:158

百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,043pt お気に入り:16

女装転移者と巻き込まれバツイチの日記。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:24

蒼い海 ~女装男子の冒険~

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:1,045pt お気に入り:37

処理中です...