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誘拐
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転生したためか自分の年齢を度々勘違いする。私も傍から見れば年端もいかぬ少女であるのに、前世の時のような全能感に未だ支配されている。
「手を挙げて着いてこい」
言われるがままに私たちは男について行った。幸いなのはアズゼルが短気な性分ではなかったことだろうか。この状態で逆らうほど、知能は低くなかったらしい。
私は風の音と共に小さく口笛を吹いた。
乗せられた荷馬車の乗り心地は最悪で、石に車輪がはねる度おしりに振動が直に伝わる。手が縛られているせいでバランスが取りずらく、揺れる度に床に体を打ち付けている。
「大丈夫ですか?」
さすが魔族、アズゼルは平然としている。体の作りが元から違うのだろうか。それでも顔には恐怖がにじみでている。
もうじき森を抜ける。少し迂回してはいるが隣の伯爵領に向かっているのはなんとなく察しがついている。私のカディネ領では人身売買を禁止している。それが魔族であっても。
そのため私たちを売るためにはカディネ領を通らず別の街へ向かわなければいけない。
もうじき、もうじき森を抜ける。もう少し……。
「お嬢様!」
荷馬車が大きく揺れると同時にアズゼルは私に体当たりをした。荷馬車から体がとび出て、地面に落ちる。アズゼルを見れば男たちに取り押さえられ、首筋に剣を突きつけられている。
アズゼルと目が合う。
「お嬢様!にげて!」
「逃げるな!」
アズゼルの声をかき消すほどの怒気を孕んだ声は森をつんざく。
「逃げるなよ、逃げればこのガキを殺すぞ」
「奴隷を人質にして効果はあるのか?」
「うっせぇ。優しいお嬢ちゃんなら、魔族の子供を見捨てたりしないよな」
私が動けなくなっているのに気づいて、男は剣を振り上げる。
「いい子だから、戻っておいで。この子の首が飛んじゃうよ」
なにか叫んでいるアズゼルの口は他の男に抑えられてしまっている。
私は縛られた手のままそばの枝を手にとり、魔力を込める。ただの枝も魔力で強化すれば、その剣ともやり合える。
「ちっ、そんな枝で何が出きるんだよ」
ジリジリ近寄る男たちが荷馬車を降りたのを確認し、私は枝を荷馬車の馬に投げつける。驚いた馬は勢いよく森の出口へ走り出す。森の出口まで数メートル。
走りゆく荷馬車には剣を構えた男と床に倒れたアズゼルとそれをおさえつける男。
目の前には荷馬車の暴走に驚きつつも剣を構え迫ってくる男2人。
振り下ろされる剣は真っ直ぐにアズゼルの首を目掛けて。
風を切る音と共に矢が目の前の男2人に刺さる。刺さったのは肩、剣が音を立てて床に落ちる。
荷馬車の男は白銀の毛の尾に縛り上げられていた。テールの尾がシュルりと男の1人をを拘束してもう1人は前足に押しつぶされている。男たちは醜くもバタバタともがいている。男の持っていた剣はアズゼルの首を掠めて落ちていた。殺すつもりはなかったのだろう。本当に掠めただけだった。
矢を放ったのはテールが呼んだ私の家の護衛兵だった。10人ほどの武装した兵が森の入口で弓を構えていた。後ろから2人護衛兵の隊長2人が駆け寄ってくる。
「ご無事ですか?フェルソワンお嬢様」
そう言って私の手の拘束をとる。兵はそうそうに男4人を取り押さえて馬車に押し込む。
「この森にもまだ山賊がいたのですね。お嬢様のおかげでかなり治安は良くなったと思っていたのですが」
申し訳ありませんと隊長は謝る。
「いや、私も大丈夫だと高を括ってこのザマだから」
隊長に促されながら森の入口まで歩く。
「大丈夫?」
地べたに座り込んだままのアズゼルに手を差し伸べる。顔を覗き込めば、涙でぐしゃぐしゃの瞳がこちらを申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「申し訳、ありません」
何を、と聞く前にアズゼルは涙声で言う。
「お嬢様を守れなかったどころか、お嬢様の邪魔を」
「気づいていたの」
私の声にこくんと頷く。
「気づいたのはさっきです。口笛でテールに緊急事態を伝えて屋敷へ増援を呼びに行っていたんですよね。森から出てしまえばテールが助けに来られるから、お嬢様は森の中では大人しくしてて」
「そんなに理解できるなんて、やっぱりあなたはいい子ね」
「手を挙げて着いてこい」
言われるがままに私たちは男について行った。幸いなのはアズゼルが短気な性分ではなかったことだろうか。この状態で逆らうほど、知能は低くなかったらしい。
私は風の音と共に小さく口笛を吹いた。
乗せられた荷馬車の乗り心地は最悪で、石に車輪がはねる度おしりに振動が直に伝わる。手が縛られているせいでバランスが取りずらく、揺れる度に床に体を打ち付けている。
「大丈夫ですか?」
さすが魔族、アズゼルは平然としている。体の作りが元から違うのだろうか。それでも顔には恐怖がにじみでている。
もうじき森を抜ける。少し迂回してはいるが隣の伯爵領に向かっているのはなんとなく察しがついている。私のカディネ領では人身売買を禁止している。それが魔族であっても。
そのため私たちを売るためにはカディネ領を通らず別の街へ向かわなければいけない。
もうじき、もうじき森を抜ける。もう少し……。
「お嬢様!」
荷馬車が大きく揺れると同時にアズゼルは私に体当たりをした。荷馬車から体がとび出て、地面に落ちる。アズゼルを見れば男たちに取り押さえられ、首筋に剣を突きつけられている。
アズゼルと目が合う。
「お嬢様!にげて!」
「逃げるな!」
アズゼルの声をかき消すほどの怒気を孕んだ声は森をつんざく。
「逃げるなよ、逃げればこのガキを殺すぞ」
「奴隷を人質にして効果はあるのか?」
「うっせぇ。優しいお嬢ちゃんなら、魔族の子供を見捨てたりしないよな」
私が動けなくなっているのに気づいて、男は剣を振り上げる。
「いい子だから、戻っておいで。この子の首が飛んじゃうよ」
なにか叫んでいるアズゼルの口は他の男に抑えられてしまっている。
私は縛られた手のままそばの枝を手にとり、魔力を込める。ただの枝も魔力で強化すれば、その剣ともやり合える。
「ちっ、そんな枝で何が出きるんだよ」
ジリジリ近寄る男たちが荷馬車を降りたのを確認し、私は枝を荷馬車の馬に投げつける。驚いた馬は勢いよく森の出口へ走り出す。森の出口まで数メートル。
走りゆく荷馬車には剣を構えた男と床に倒れたアズゼルとそれをおさえつける男。
目の前には荷馬車の暴走に驚きつつも剣を構え迫ってくる男2人。
振り下ろされる剣は真っ直ぐにアズゼルの首を目掛けて。
風を切る音と共に矢が目の前の男2人に刺さる。刺さったのは肩、剣が音を立てて床に落ちる。
荷馬車の男は白銀の毛の尾に縛り上げられていた。テールの尾がシュルりと男の1人をを拘束してもう1人は前足に押しつぶされている。男たちは醜くもバタバタともがいている。男の持っていた剣はアズゼルの首を掠めて落ちていた。殺すつもりはなかったのだろう。本当に掠めただけだった。
矢を放ったのはテールが呼んだ私の家の護衛兵だった。10人ほどの武装した兵が森の入口で弓を構えていた。後ろから2人護衛兵の隊長2人が駆け寄ってくる。
「ご無事ですか?フェルソワンお嬢様」
そう言って私の手の拘束をとる。兵はそうそうに男4人を取り押さえて馬車に押し込む。
「この森にもまだ山賊がいたのですね。お嬢様のおかげでかなり治安は良くなったと思っていたのですが」
申し訳ありませんと隊長は謝る。
「いや、私も大丈夫だと高を括ってこのザマだから」
隊長に促されながら森の入口まで歩く。
「大丈夫?」
地べたに座り込んだままのアズゼルに手を差し伸べる。顔を覗き込めば、涙でぐしゃぐしゃの瞳がこちらを申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「申し訳、ありません」
何を、と聞く前にアズゼルは涙声で言う。
「お嬢様を守れなかったどころか、お嬢様の邪魔を」
「気づいていたの」
私の声にこくんと頷く。
「気づいたのはさっきです。口笛でテールに緊急事態を伝えて屋敷へ増援を呼びに行っていたんですよね。森から出てしまえばテールが助けに来られるから、お嬢様は森の中では大人しくしてて」
「そんなに理解できるなんて、やっぱりあなたはいい子ね」
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