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思慕
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「神聖力があるとはいえ、お嬢様のそれは聖女とは比べ物にならないほど弱々しいもの。王の病を治してあなたの体に障害が残ってしまうかもしれない」
辛そうな表情を見せるアズゼルを私は静かに見つめる。幼く弱々しかった小さなアズゼルはもうそこにはおらず、身長も体つきも魔力ももう私より大きくたくましくなってしまった。黒い髪は変わらず絹のように美しく、赤い瞳はもう震えることはなく凛とした宝石のようだった。
私はまだあのころのような魔力も神聖力も得られてはいない。もう、得られることもないのかもしれないが。
「それに私は、あなたを……」
「アズゼル」
アズゼルの口から溢れかけた言葉を私は無理やり飲み込ませた。その言葉を聞くことは私にはできない。きっとその権利すらまだ私には無いのだから。
「私は決めたの、もう揺らぐことは無いわ」
真っ直ぐ見つめる私の瞳をアズゼルは迷いの籠った視線で見つめ返す。可哀想に、私に忠誠を誓ったばかりに彼は辛い思いをしている。しかし、これはいずれ彼、ひいては彼ら魔族を救うためなのだ。
「かしこまりました」
そう頭を下げたアズゼルの額に私は口付ける。驚いて跳ね上がったアズゼルの顔は真っ赤に染まり、目をまん丸にして私の方を見ていた。そんなアズゼルに私はほほ笑みかける。
「アズゼル、あなたを信じているわ」
この言葉は彼への足枷だ。これで彼は私を裏切れない。
ごめんなさい、アズゼル。あなたを利用することを許して。
辛そうな表情を見せるアズゼルを私は静かに見つめる。幼く弱々しかった小さなアズゼルはもうそこにはおらず、身長も体つきも魔力ももう私より大きくたくましくなってしまった。黒い髪は変わらず絹のように美しく、赤い瞳はもう震えることはなく凛とした宝石のようだった。
私はまだあのころのような魔力も神聖力も得られてはいない。もう、得られることもないのかもしれないが。
「それに私は、あなたを……」
「アズゼル」
アズゼルの口から溢れかけた言葉を私は無理やり飲み込ませた。その言葉を聞くことは私にはできない。きっとその権利すらまだ私には無いのだから。
「私は決めたの、もう揺らぐことは無いわ」
真っ直ぐ見つめる私の瞳をアズゼルは迷いの籠った視線で見つめ返す。可哀想に、私に忠誠を誓ったばかりに彼は辛い思いをしている。しかし、これはいずれ彼、ひいては彼ら魔族を救うためなのだ。
「かしこまりました」
そう頭を下げたアズゼルの額に私は口付ける。驚いて跳ね上がったアズゼルの顔は真っ赤に染まり、目をまん丸にして私の方を見ていた。そんなアズゼルに私はほほ笑みかける。
「アズゼル、あなたを信じているわ」
この言葉は彼への足枷だ。これで彼は私を裏切れない。
ごめんなさい、アズゼル。あなたを利用することを許して。
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