だからお前はいつも外してるんだ

あおいまとか

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沈黙

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『お仕置きだよ』とあいつは言った。

「何がお仕置きだよ!」
 俺は思わず、スマホを投げた。佐竹とは今夜も連絡が取れない。いつも互いにコメントを送りあっていたトークアプリは沈黙したままだ。就職してすぐに借りたアパートは一人だと寒々しかった。こんな、友人と気まずくなった夜は特に。


 あいつ、佐竹智史は俺の幼なじみで親しい仲だった。幼なじみといっても、学区が同じだっただけで、小学校では特に交流はなかった。同じ地元の中学に進んでから部活が一緒で話すようになった。バレー部だった。同じ高校、大学に進んだ。
 田舎住まいだった俺たちは、仕事を求めて、一番近い都市に出た。就職先が近い区画だったのはたまたまだった。だが、アパートを探すときは近くを探した。単純に心細かったからだ。新しい生活を始める時に、近くに誰か知り合いが欲しかった。
 おれの性的嗜好が男性だと気づいたのは高校の時だった。少数派であることを自覚し、擬態して生きていた。誰にも、両親にさえ打ち明けることはなかった。もちろん佐竹にも黙っていた。
 だが、就職し一年目の仕事も人間関係もうまくいかず、佐竹と休みの前日にやけ酒を飲んでいた時にポロリとこぼしてしまったのだ。
 俺が好きなのは、男なんだよねと。
 佐竹はただ「ふーん?」と相槌を打って、次に「抱いてやろうか?」と言った。蔑視されないことにほっとしてる間に、流れで俺のアパートで、。付き合うとか、好きだとかそんな甘いセリフはなかった。セフレ? 俺たちはたぶんそんな関係だった。
 それなのに。
 俺が後輩とサシ飲みしたぐらいで、「へぇ? デート?」とあいつはのたまった。デートではない。数人で飲む予定だったのが、案件に大きめの訂正が入り、大部分が駆り出されたのだ。何時に終わるかわかりませんと言われ、駆り出されたやつらは遅刻で合流することになった。結局来れなかったが。違う部署の俺と後輩だけが、もう予約してある店で先に飲み始めただけだ。寂しいな、また飲み会組もうぜと言いながら、適当に飲み食べて帰った。
 だというのに。
 お仕置きだ?
(バカが)
 佐竹と俺はではない。腐れ縁でたまにお互いの性欲の解消のために寝るだけだ。甘ったるい感情は二人の間にはない。
(そこに、余計な感情持ち込んでんじゃねぇよ)
 お互いに休みの前日はどちらかの家で飲んで過ごすのが最近のルーティンだった。だがこの数日佐竹とのトークアプリは沈黙したままだ。俺はあいつが明日休みだと知っているのに。
(ムカつく)
 長い夜が始まる。きっと今夜も朝までスマホに通知が来ることはない。俺はきっとムカつくと言いながら、一人酒を飲みスマホを眺めて過ごすのだ。
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