5 / 24
知れば知るほど
しおりを挟む
入学式から、アルクロフト家の次男ジャイルの横に配置され、席も隣だった。見た目は普通の少年だった。おれたちと同じ成人したばかりの細身の身体。ダークグレーの短髪。
突然暴れ出すらしいジャイルを警戒しながら、おれは横に座っていたのだ。しかしやつがキレ、腕を振り回し始めたのは本当に唐突だった。
気づいた時には目の前にやつの拳があり、避ける間も無く、体が後ろに倒れる。口を強打されたのだ。
(痛え)
口の中に血の鉄くさい味がひろがる。
鼻血もたれてきた。
どうにか起き上がるが、後ろに倒れたせいで頭も痛い。
おれは、これが役目かと殴られた口と鼻を押さえながらぼんやりやつを見返した。
だが、殴ったあと、倒れ込んだおれを、やつがジッと見つめた時、やばいと思った。人を殴ったくせに、激昂もせず、無表情で何を考えてるのかわからない顔をしていたのに、やつのくすんだ灰色の目に、ロックオンされたと思ったのだ。
慌ててジャイルを止めにきた使用人たちから、手際よく手当を受けながら、おれは嫌な予感に震えていた。
学園での授業の合間、移動時間、できるだけジャイルから離れるようにしていたが、全くの時間の無駄だった。
ジャイルはおれを探しているそぶりもないのに、なぜだか殴られるのはおれだった。と、いうか、他のやつが殴られそうになった時は、やつの優秀な使用人が未遂で止めていた。
(おれのことも全力でまもれよ!)
治癒魔法を受けながら、リラクという魔法使いにもらしたが、困ったように笑われて終わりだった。うちに説得にきた肩で髪を切り揃えて金髪の口が回る青年である。治癒魔法使いだったらしい。
どうやら止めてばかりで、発散させないでいると大爆発して、周り全員なぎ倒し始めるらしい。
(面倒くせえ、最悪だ。なんでおれなんだ)
ジャイルは、授業のない時間は朝から夜まで連れてきた使用人とずっと戦闘訓練を行っている。それでもやつの中の何かしらのエネルギーは発散されず、くすぶっているらしい。
殴られるターゲットにされただけでも最悪だったが、事態はさらに悪化した。
強姦されたのだ。
空き教室にひっぱり込まれ、殴って動けなくした上での凶行だった。
今までは、やつが暴行をやりすぎた時には、使用人が止めにくるだろうとたかをくくっていたが、強姦の時には本気で震えた。
だいたいろくな前戯もせず、突っ込まれたのだ。流血沙汰だった。痛みで死ぬかと思った。
死ぬ前に使用人が介入することを願いながら痛みに耐えた。
痛みのため遠のく意識の中、役目を果たしたらと提示された額は、おれの命の値段だったのかと腑に落ちた。
突然暴れ出すらしいジャイルを警戒しながら、おれは横に座っていたのだ。しかしやつがキレ、腕を振り回し始めたのは本当に唐突だった。
気づいた時には目の前にやつの拳があり、避ける間も無く、体が後ろに倒れる。口を強打されたのだ。
(痛え)
口の中に血の鉄くさい味がひろがる。
鼻血もたれてきた。
どうにか起き上がるが、後ろに倒れたせいで頭も痛い。
おれは、これが役目かと殴られた口と鼻を押さえながらぼんやりやつを見返した。
だが、殴ったあと、倒れ込んだおれを、やつがジッと見つめた時、やばいと思った。人を殴ったくせに、激昂もせず、無表情で何を考えてるのかわからない顔をしていたのに、やつのくすんだ灰色の目に、ロックオンされたと思ったのだ。
慌ててジャイルを止めにきた使用人たちから、手際よく手当を受けながら、おれは嫌な予感に震えていた。
学園での授業の合間、移動時間、できるだけジャイルから離れるようにしていたが、全くの時間の無駄だった。
ジャイルはおれを探しているそぶりもないのに、なぜだか殴られるのはおれだった。と、いうか、他のやつが殴られそうになった時は、やつの優秀な使用人が未遂で止めていた。
(おれのことも全力でまもれよ!)
治癒魔法を受けながら、リラクという魔法使いにもらしたが、困ったように笑われて終わりだった。うちに説得にきた肩で髪を切り揃えて金髪の口が回る青年である。治癒魔法使いだったらしい。
どうやら止めてばかりで、発散させないでいると大爆発して、周り全員なぎ倒し始めるらしい。
(面倒くせえ、最悪だ。なんでおれなんだ)
ジャイルは、授業のない時間は朝から夜まで連れてきた使用人とずっと戦闘訓練を行っている。それでもやつの中の何かしらのエネルギーは発散されず、くすぶっているらしい。
殴られるターゲットにされただけでも最悪だったが、事態はさらに悪化した。
強姦されたのだ。
空き教室にひっぱり込まれ、殴って動けなくした上での凶行だった。
今までは、やつが暴行をやりすぎた時には、使用人が止めにくるだろうとたかをくくっていたが、強姦の時には本気で震えた。
だいたいろくな前戯もせず、突っ込まれたのだ。流血沙汰だった。痛みで死ぬかと思った。
死ぬ前に使用人が介入することを願いながら痛みに耐えた。
痛みのため遠のく意識の中、役目を果たしたらと提示された額は、おれの命の値段だったのかと腑に落ちた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
85
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる