水の流れるところ

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割り切って演じている

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「あっ……あっ……」

 つい2時間ほど前まで人の熱気と酒の匂いが充満していた店内に、誉の声だけが響く。店で一番ゆったりとした造りのソファの上。そこに仰向けになって、マネージャーを受け入れていた。

 はあはあと、生臭い息を耳元で吹き付けられて、誉はあえぎながら顔をしかめた。

 いつものことなのだが。マネージャーの興奮が増すのに反比例して、誉の熱は下降していく。

「藍沢くん、可愛いよ」とか、「藍沢くん、最高だよ」とか、歯の浮くようなセリフを耳の傍でささやかれる。心の中では、キモいこと言うなもやし野郎っ、と暴言を吐いているが、表向きは喜ぶフリをして、さらに声を上げるようにしている。そうすると、マネージャーが喜んで、早くイってくれるからだ。

 マネージャーとのセックスは、もう惰性と生き抜くための手段なだけなので、そこに快感を求めることもない。というか、期待していない。そのため、なるべく最短のスピードで終わらせたいと思っている。

 彼の場合、もともとノンケだったせいもあるのか、女みたいな可愛い反応をすると興奮が高まるようだった。だから、ほんとは出したくもない声を上げたり、やりたくもない仕草をしたりしているのだが、それはそれでAV女優にでもなったつもりで割り切って演じている。

「藍沢くん、ここ、感じる?」
「あんっ、やっ、そこ、ダメっ……」

 ダメなわけあるか。すずめの涙程度しか感じねぇって。

「そんなこと言うなら、もう乳首、触ってあげないよ」
「あっ……そんな……意地悪しないでぇ……」

 焦らしはもういいからっ。早く、もっと腰振ってイってくれっ。

「そしたら、ちゃんとお願いしてくれる?」
「お願いだから、触って……」

 ……きもっ、俺。

 藍沢くんっ。そう小さく興奮気味に叫んで、誉の胸を弄くり回しながら、マネージャーがようやく腰を再び振り始めた。

 もう一息。

「あんっ、あっ、もっと、もっと激しくしてぇ」

 そう女みたいな可愛い声を上げながら、感じすぎて耐えられないという顔を作って訴えた。その1分後。

 ううっ、とうなるような声でマネージャーが果てた。心の中でやれやれとつぶやく。一仕事終えたような気分だった。

「良かったよ、誉くん」とマネージャーがぎゅっと誉を抱き締めた。誉はなるべく棒読みにならないようにそれに答えた。

「俺も良かったです」
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