6 / 73
同じ穴の狢
しおりを挟む
マネージャーが帰っていった後、さっさと後処理をして、ソファの周りが汚れていないか確かめながら手早く掃除をした。
いつものように店内を点検し、戸締まりをして帰ろうかと荷物を持ったところで、店の扉が開く音を控え室から聞いた。
マネージャーが忘れ物でも取りに帰ってきたのかと思い、フロアへ出ていくと。
「あれ」
マネージャーではなく、店で一番人気のホストが立っていた。
「どうした? 今日は客とアフター入ってただろ?」
「……つまんないから、仮病使ってキャンセルした」
「……そうか」
ホストはじっと誉を見つめて動こうとしなかった。その態度で男がどうしたいのか、すぐにわかる。
「今日はダメだ」
「……なんで? マネージャーとヤッたから?」
「……それもあるけど。疲れてんだよ。もう、遅いし」
「マネージャー下手なんでしょ? 誉さん、満足できるわけ?」
「……別に、満足したいわけじゃないから。ていうか、『誉』って呼ぶな。『藍沢』にしろって言ってるだろ」
素っ気なく答えて、荷物を持った。
「ほら。もう、店閉めるぞ。タクシー呼んでやるから、今日は大人しく帰れ。明日同伴もあるんだろ? 早く帰って、寝ろよ」
「……子供扱い止めてくれる?」
「そういうつもりじゃないって。お前は店の大事な商品なんだから。ケアするのは当たり前だろ」
「俺が大事な商品だったらさぁ。大事に扱ってよ」
「…………」
ああ。面倒くさ。
我儘で自分勝手な年下の男を、冷めた気持ちで見る。マネージャーもこの男も。みんな面倒くさい。誉とヤることしか考えていない。こっちの都合なんてお構いなしだ。
でも、それで甘い蜜を吸わせてもらっている自分も、結局のところ同じ穴の狢だ。
はあっ、と特大の溜息を心の中だけで吐く。誉は手に持っていた荷物を、乱暴に店のソファに投げ置いた。
いつものように店内を点検し、戸締まりをして帰ろうかと荷物を持ったところで、店の扉が開く音を控え室から聞いた。
マネージャーが忘れ物でも取りに帰ってきたのかと思い、フロアへ出ていくと。
「あれ」
マネージャーではなく、店で一番人気のホストが立っていた。
「どうした? 今日は客とアフター入ってただろ?」
「……つまんないから、仮病使ってキャンセルした」
「……そうか」
ホストはじっと誉を見つめて動こうとしなかった。その態度で男がどうしたいのか、すぐにわかる。
「今日はダメだ」
「……なんで? マネージャーとヤッたから?」
「……それもあるけど。疲れてんだよ。もう、遅いし」
「マネージャー下手なんでしょ? 誉さん、満足できるわけ?」
「……別に、満足したいわけじゃないから。ていうか、『誉』って呼ぶな。『藍沢』にしろって言ってるだろ」
素っ気なく答えて、荷物を持った。
「ほら。もう、店閉めるぞ。タクシー呼んでやるから、今日は大人しく帰れ。明日同伴もあるんだろ? 早く帰って、寝ろよ」
「……子供扱い止めてくれる?」
「そういうつもりじゃないって。お前は店の大事な商品なんだから。ケアするのは当たり前だろ」
「俺が大事な商品だったらさぁ。大事に扱ってよ」
「…………」
ああ。面倒くさ。
我儘で自分勝手な年下の男を、冷めた気持ちで見る。マネージャーもこの男も。みんな面倒くさい。誉とヤることしか考えていない。こっちの都合なんてお構いなしだ。
でも、それで甘い蜜を吸わせてもらっている自分も、結局のところ同じ穴の狢だ。
はあっ、と特大の溜息を心の中だけで吐く。誉は手に持っていた荷物を、乱暴に店のソファに投げ置いた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる