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Just the way it is ⑲
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「ありがとう。大事にする」
黒埼に向かって丁寧に頭を下げた。すると黒埼の腕が伸びてきて、ポンポンと優しく頭を叩かれた。
「そんなかしこまってお礼言わなくていいよ。俺とアキちゃんの仲じゃん」
「だけど……こんな高級なものもらったのも初めてだし」
「それだけアキちゃんのこと大事に思ってるって分かってくれたらいいから」
「…………」
そんな風に、さらりと言ってのける黒埼の言葉は、今の晃良には苦しかった。色々な感情が自分の中を渦巻いて。今の自分は、どこまで黒埼と向き合えるだろう。
「黒埼……」
「どうしたの? アキちゃん。元気ないね。しんどい?」
「そうじゃなくて」
晃良は、視線を黒崎から逸らすと、掛け布団へと落とした。それから、ゆっくりと口を開いた。
「夢……見た」
「……うん」
「夢だったけど。夢じゃないと思う」
「……そうなの?」
「……思い出した」
「…………」
「黒埼との『約束』」
微かに。黒埼が息を止める気配が伝わってきた。
「前、ラブホで言ってたよな。小さい頃、俺と『約束した』って」
「…………」
「その『約束』した時のこと。思い出した」
「アキちゃん……」
晃良は顔を上げて真っ直ぐに黒埼を見た。
「ごめん。俺、『約束』守れなかったんだよな」
「…………」
黒埼が一瞬だけ、辛そうな表情をしたのを晃良は見逃さなかった。
『ずっとヒョウちゃんが1番で、ずっとヒョウちゃんと一緒だから』
『俺、ヒョウちゃんとしかしないもん』
小さい頃の、こんな事態など予想していなかった2人の約束。記憶喪失だったのだから不可抗力なのは分かっている。けれど。もし晃良が覚えていたら、この約束は守られたかもしれない。黒埼だって、頭の中では仕方ないと理解しているだろう。だけれど、きっとこの「約束」が破られた時の、やり場のない悔しさや苦しみを抱えて苦しんでいたに違いないのだ。神様のイタズラ。そんな一言で割りきれるほど、単純ではなかったのじゃないだろうか。
自分が逆の立場だったら。しょうがないと思いつつも、どこかで自分が相手の最初ではなかったことを悔いるのではないだろうか。それが、本当に大事な相手なら尚更。
黒埼に向かって丁寧に頭を下げた。すると黒埼の腕が伸びてきて、ポンポンと優しく頭を叩かれた。
「そんなかしこまってお礼言わなくていいよ。俺とアキちゃんの仲じゃん」
「だけど……こんな高級なものもらったのも初めてだし」
「それだけアキちゃんのこと大事に思ってるって分かってくれたらいいから」
「…………」
そんな風に、さらりと言ってのける黒埼の言葉は、今の晃良には苦しかった。色々な感情が自分の中を渦巻いて。今の自分は、どこまで黒埼と向き合えるだろう。
「黒埼……」
「どうしたの? アキちゃん。元気ないね。しんどい?」
「そうじゃなくて」
晃良は、視線を黒崎から逸らすと、掛け布団へと落とした。それから、ゆっくりと口を開いた。
「夢……見た」
「……うん」
「夢だったけど。夢じゃないと思う」
「……そうなの?」
「……思い出した」
「…………」
「黒埼との『約束』」
微かに。黒埼が息を止める気配が伝わってきた。
「前、ラブホで言ってたよな。小さい頃、俺と『約束した』って」
「…………」
「その『約束』した時のこと。思い出した」
「アキちゃん……」
晃良は顔を上げて真っ直ぐに黒埼を見た。
「ごめん。俺、『約束』守れなかったんだよな」
「…………」
黒埼が一瞬だけ、辛そうな表情をしたのを晃良は見逃さなかった。
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小さい頃の、こんな事態など予想していなかった2人の約束。記憶喪失だったのだから不可抗力なのは分かっている。けれど。もし晃良が覚えていたら、この約束は守られたかもしれない。黒埼だって、頭の中では仕方ないと理解しているだろう。だけれど、きっとこの「約束」が破られた時の、やり場のない悔しさや苦しみを抱えて苦しんでいたに違いないのだ。神様のイタズラ。そんな一言で割りきれるほど、単純ではなかったのじゃないだろうか。
自分が逆の立場だったら。しょうがないと思いつつも、どこかで自分が相手の最初ではなかったことを悔いるのではないだろうか。それが、本当に大事な相手なら尚更。
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