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第二章
08
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私も申し訳なさが、にじみ出てくる。昨日迷惑をかけてしまった。
「昨日はごめん……迷惑かてしまって」
私の言葉の途中で、ミリエナが首を横に振る。
「私の方こそ謝らなければいけません、もっと配慮すべきでした」
あの場面で出来る配慮は無かったと思う。聞かないようにすべきだったかって言えば、そうでもない。興味本位で、ニヤニヤして声をかけてこなかっただけで、十分だ。
お互いが謝り合って、言葉に詰まって気まずい沈黙が流れる。こういう場合どうすればいいのだろう。私は助けを求める様に、エリスに視線を送る。エリスは「承りました」という様に、一歩進み出て口を開いた。
「ミリエナさん、なんですか? 用があったんでしょう?」
「あっ、はい」
助かったというほどではないけど、少し気が楽になったという様子の表情をしてミリエナが口を開く。
「ギルドマスターがルネーナさんをお呼びです」
「ギルドマスター? って冒険者ギルドの偉い人だっけ?」
名前的にはそうだろう。ミリエナが頷いた所を見ると、合っているみたいだ。
「何の用でしょうか、思い当たる節がありませんが」
エリスがこちらに、同意を求める様に視線を送ってくる。
「私もない」
そもそも、呼び出されるほどクエストをこなしていないはずだけど。そこで嫌な想像が過る。ここでも迷惑だから出て行ってくれ、と言われるのではないか。ありえない話ではない。扱いに困ると考えられてもおかしくなかった。
「こちらに、来てください」
まだ居心地の悪さを抱えた声で、ミリエナが私を促す。そこでエリスが声をあげた。
「私も同行していいでしょうか?」
正直来てもらいたい。一人は怖かった。私は懇願する様に、ミリエナの顔を見る。
「はい、一緒にどうぞ」
特に悩む様子もなく、同行は許された。エリスがその言葉を聞いて、私の隣に並ぶ。
「さぁ行きましょう」
「うん」
ギルドの受付の脇から、中に入ると奥に続く廊下を進んで行く。途中にあるいくつかのドアの中から、たまに事務的な声が聞こえてくる。見えない所でも仕事があるんだなと、当たり前の事を思ってしまった。
「ここです」
立ち止まったミリエナが、ひときわ大きなドアを指し示した。執務室というプレートが見える。
「私はここで、失礼します」
「ありがとう」
ミリエナが一度頭を下げて離れて行った。私達はそれに対して揃ってお礼を言う。ミリエナを見送ってから、再び執務室のドアを見つめる。
「ここでも追い出されるのかな」
「そうなっても、私が一緒です」
エリスの笑顔に心が幾分か軽くなったおかげで、私はそれほど時間をかけずにドアをノックできた。
「昨日はごめん……迷惑かてしまって」
私の言葉の途中で、ミリエナが首を横に振る。
「私の方こそ謝らなければいけません、もっと配慮すべきでした」
あの場面で出来る配慮は無かったと思う。聞かないようにすべきだったかって言えば、そうでもない。興味本位で、ニヤニヤして声をかけてこなかっただけで、十分だ。
お互いが謝り合って、言葉に詰まって気まずい沈黙が流れる。こういう場合どうすればいいのだろう。私は助けを求める様に、エリスに視線を送る。エリスは「承りました」という様に、一歩進み出て口を開いた。
「ミリエナさん、なんですか? 用があったんでしょう?」
「あっ、はい」
助かったというほどではないけど、少し気が楽になったという様子の表情をしてミリエナが口を開く。
「ギルドマスターがルネーナさんをお呼びです」
「ギルドマスター? って冒険者ギルドの偉い人だっけ?」
名前的にはそうだろう。ミリエナが頷いた所を見ると、合っているみたいだ。
「何の用でしょうか、思い当たる節がありませんが」
エリスがこちらに、同意を求める様に視線を送ってくる。
「私もない」
そもそも、呼び出されるほどクエストをこなしていないはずだけど。そこで嫌な想像が過る。ここでも迷惑だから出て行ってくれ、と言われるのではないか。ありえない話ではない。扱いに困ると考えられてもおかしくなかった。
「こちらに、来てください」
まだ居心地の悪さを抱えた声で、ミリエナが私を促す。そこでエリスが声をあげた。
「私も同行していいでしょうか?」
正直来てもらいたい。一人は怖かった。私は懇願する様に、ミリエナの顔を見る。
「はい、一緒にどうぞ」
特に悩む様子もなく、同行は許された。エリスがその言葉を聞いて、私の隣に並ぶ。
「さぁ行きましょう」
「うん」
ギルドの受付の脇から、中に入ると奥に続く廊下を進んで行く。途中にあるいくつかのドアの中から、たまに事務的な声が聞こえてくる。見えない所でも仕事があるんだなと、当たり前の事を思ってしまった。
「ここです」
立ち止まったミリエナが、ひときわ大きなドアを指し示した。執務室というプレートが見える。
「私はここで、失礼します」
「ありがとう」
ミリエナが一度頭を下げて離れて行った。私達はそれに対して揃ってお礼を言う。ミリエナを見送ってから、再び執務室のドアを見つめる。
「ここでも追い出されるのかな」
「そうなっても、私が一緒です」
エリスの笑顔に心が幾分か軽くなったおかげで、私はそれほど時間をかけずにドアをノックできた。
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