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第二章

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 言われてみて初めて気付いた。モンスターにそんな知恵はない、という所までは考えたけど、それ以上は考えていなかった。確かに国一つを滅ぼしたんだ。賢いモンスターが一体いただけでは、どうにもならない。訓練された様な軍隊が、それが無理なら複数人の知恵のある者が指揮官をやらなければ、そんな事は実現できない。
「ありがとう、そこまで頭が回らなかった」
「そうか、まぁでも、それが普通だ、自分の故郷が滅亡なんて聞いて、冷静にしていられる方が稀さ」
 ギガルドの言葉に私は頷く。それからなんていえばいいか分からず、黙ってしまった。それなら、という感じでギガルドが口を開く。
「じゃあ、本題に入ろうか」
 背もたれに預けていた体を起こして、今度は自分の足に体重をかける様に肘を置いて、ギガルドが両手を重ねる。
「お前はハイオークを倒したと聞いている」
 冒険者登録の試験の時の事だ。私は頷いて見せて肯定する。
「その実力を見込んで頼みたい仕事があるんだ」
 ミリエナから、ギルドの説明を受けた時の事を思い出す。これが自分のレベルに応じて依頼される場合がある、という特例かな。
「最近、冒険者登録試験で使われるあの森で、行方不明になる者が後を絶たないんだ」
「行方不明」
 エリスが声をあげる。思い当たる節がある様な口ぶりだった。私もそれで思い当たる。ミリエナが、ハイオークがあんな所に居る訳がない、というような事を言っていた。もしかしたらエリスは、攫われる所だったのだろうか。いろいろな事が、繋がりそうな感触を感じる。
「君らが出会ったハイオークが手がかりという訳だ」
「手がかりか」
 何かあるという風に考えるのは、普通かもしれない。本来いない物がそこに居て、行方不明になる者が後を絶たないとなると。
「でもハイオークが一体いただけでしょ、行方不明者の件と関係ある?」
「もちろん決めつけられない、が」
 ギガルドがそこまで言って、考える様子で顎に手を当てる。なんだろうと思って続きを待っていると、重々しくギガルドは口を開いた。
「もしかしたら、ルネーナにとっては因縁がある事かもしれないな」
「なに? 因縁?」
 ほとんど思いつきの様な言い方だった。意味がわからずに聞き返すと、ギガルドは思案顔で続ける。
「すまない……今思いついたんだが、オークはバカだ、だがこれまで一体しか見つかっていない、もし行方不明の件がオークたちの仕業なら目撃情報が多発しているはずだ、つまり知能が高いオークがいるかもしれないと思わないか?」
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