玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

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「城内勤務の者で、手書きを見た事がある者たちとは文字が違う……使用人の中でこんな文字を書く人物に覚えがないか?」
 私は、セブリアンの問いかけを聞いてやっと理解する。ちょうど良かったという言葉は、この事を聞きたかったのだろう。ただ、残念ながら望んでいるだろう答えは出せない。
「いないです……申し訳ありません」
 そもそも、使用人が文字を書く機会がない。王城で勤める者として、最低限の教養として読み書きを出来る様に教育されてはいるけど、指示とかは口頭が基本だ。個人的な日記とかを書いている可能性はあるけど、それを見せてもらったことは無い。あとは字を書く機会がありそうなのは、使用人長であるメイド長と執事長だけど、私は見た事がない。
「そうか……早く保護しなければ、その人物に危険が及んでいるのかもしれない」
 セブリアンは少し体を前に傾けて、両手で口を覆うようにする。考える時によくするポーズだった。心配しているから苛立っているらしい。ちょっと意外。すっぽかされたから怒っているかと思ったら、相手の事を考えて焦って苛立っているのだ。
「心配ですね」
「……私達王子が容疑者だから、機嫌を損ねたくなくて、騎士団と魔法師団の調査など形だけだ、犯人がうやむやのままか、誰かが生贄にされて幕引きされるだろう……だからこそ危険だ」
 手掛かりを知っている事が犯人にバレたら危ない。しかも犯人が捕まらないかもしれない。差出人の身の安全は、いつまで経っても保証されない。
 差出人は、立場の弱い人だろうか。高官やましてやアンデストやトールなら、こんな事をせずに誰かを動かして自分で調べればいいし、相談するにしても普通に呼び出して密談すればいい気がする。立場が弱い人の可能性があるから、セブリアンは焦って苛立っているのだろう。
「……ところで」
 考えるポーズをやめたセブリアンが、私に視線を向けて言葉を続ける。
「シンクフォイル園というのは、南西にある庭園の事で合っていたか?」
「城には庭園が一つしかありません、たぶんそこで合っています」
 あの庭園がシンクフォイル園という名前なのを、今初めて知った。城内の人のほとんどが、知らないんじゃないだろうか。誰かから、その名前を聞いた事さえない。
「それから……手紙の件は内密に頼む」
「もちろんですよ、手紙の差出人に、危険が及んでしまうかもしれませんもんね」
 私がそう言ったところで、セブリアンが少し驚いた顔をする。
「意外だったな、失礼な話だが……もっと頭が弱いかと」
「ヒドイ! もぉっ」
 私はあざとく、プリプリと怒って見せる。
「そういう所を見せるのをやめたらどうだ、勘違いされるぞ」
 そんな事を言うのなら、私だって。そう考え反撃の言葉を私は口にする。
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