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エキセントリック・メイドドリーム

解決編12

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 アリーンとトール、セブリアンが一斉に私を見つめる。私ばっかりに頼らないでほしい。頼りない男たちである。
「証拠になるか分からないんだけど……いいでしょうか」
 私が頭を悩ませていると、エルラがそう声をあげて一歩前に進み出る。
「エルラ! あなたまで私を裏切る気?! あなたに名前をあげて、ここまで守って育ててあげたのは私よ?!」
 トールに掴まれていなければ、飛び掛かってしまいそうな雰囲気のエミラ。それを見てエルラの顔が歪む。ずっと葛藤していたのだろうか。短剣の件も、エミラの専属メイドのエルラなら知っていたはずなのに、言わなかった。それ以前に王様の殺害は、エミラの仕業かもと疑っていたかもしれない。でも信じたくて、黙っていた。でも短剣に王様の血が付いていた事で、決意したのか。しばらく黙った後、エルラは一度大きく息を吐いて、エミラの顔を見返す。
「エミラ様には感謝しています、卑しい身分の私を拾ってくれて、名前をくれて、エミラ様の専属メイドとして、こんな立派な所で働かせてくれて……母だと思ってこれまで生きてきました」
「じゃあどうして」
「……アンデスト様をお慕い申し上げておりました、私の王子様を殺害したあなたを、やっぱり許せない……それにあなたのそばに居たからもしかしたらと思っていた、でもあなたを慕うあまりに王様が殺された後、私は沈黙した、そのせいでアンデスト様が……もう黙っていてはダメだと思いました」
 ほとんど泣いているような顔のエルラ。葛藤で押しつぶされそうになって、それでも出した結論。黙っていても、声をあげても、きっと辛かっただろう。トールに掴まれたいたエミラが、力無く座り込む。
「証拠って何?」
 私が問いかけると、エルラは頷いて口を開いた。
「王様とアンデスト様が殺害された時に、エルラ様から血の匂いがしてきた、月の物の周期でもないのに……それでその匂いを探したら、その時着ていたらしい衣服の袖口に少し血が付いていた」
「ほぉ、ちゃんと保存してあるかね? 魔法で確かめてみよう」
 アリーンが嬉しそうに、エルラの側へ歩み寄る。これでアンデストの血がついていれば、決定的証拠だ。私は安堵のため息をつく。何とかなった。私はエルラに笑いかける。
「よかった、さすがエルラだね、
「まぁ、鼻の出来が違うんだよ」
 エルラが自分の鼻を指差して、誇らしげに笑う。確かに猫系獣人族は人間よりかは鼻がきくけど、犬系獣人族には敵わない。私は少し悔しさをにじませつつ「そうだね、助かったよ」と笑って見せた。
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