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9話 アルバート視点
しおりを挟む「散々私に嫌がらせをしておいて、その程度で済むとお思いでいらっしゃるのですか? あなた方に虐げられても我慢しなくてはならなかったのが、どれだけ辛いことか分かるのでしょうか?」
こんなレオニーは初めて見た。格下なのに僕に対して大きな声で怒鳴りつけてくるなんて、礼儀を知らないにもほどがある。
なんだかよく分からない不思議な力で人に言うことを聞かせるのに快感を覚えてしまったのだろう。
「……申し訳ないことをした」
眉を下げて喉をしぼりながら掠れた声を作った。イザベラを守るためならなんでもする。
レオニーは人を跪かせ、惨めったらしく命乞いさせたいだけだ。僕がこうして謝れば満足するに違いない。
「心のない謝罪は要りませんわよ? 今のあなたは、イザベラを失いたくないがための謝罪をなさってるに過ぎませんわ」
「……」
謝るだけでなく、あんなにたくさんの金貨もやったのに執念深い奴。婚約まで取り付けたくらいだから、ここぞとばかりに骨の髄までしゃぶり尽くすつもりなのだろう。
「今まで私に何をしてきたのかよく思い返してくださいね? 今日のところはまた私が我慢して差し上げますから、きちんと反省してください」
レオニーがイザベラにかけた術を解くとしゅるしゅる音を立てて大きな耳と長い鼻は縮んでいき、あっという間に元の顔に戻った。
「アルバート様! 今のは一体なんなのですか!? 私、どうなってしまうの!?」
イザベラは鏡に映る自分の顔に何度も触れながら、興奮して泣き喚いた。
「大丈夫だ。元の美しいイザベラに戻っているよ、よく見てごらん? 何も心配しなくていい。おめでたい今日を楽しむことにしよう?」
僕が必死に宥めると、イザベラは落ち着いてきたようだった。泣いたせいで目が少し赤くなっている。
「あいつ、絶対許さない! ねえ、そうでしょう? アルバート様?」
「ああ、そうだね。絶対に許しておけない!」
イザベラが控え室から飛び出していくのを止めようとしたのに、すごい剣幕でまくしたてられて思わず手を離してしまった。
「今追いかけないと間に合わないわ! 式が始まるまでには帰ってくるから、早く放して!」
「やめておいたほうが……」
「アルバート様はよくこのままやられっぱなしでいられるわね? 私たちの式を台無しにされそうになってるのに、放置するつもりですの?」
「そんな度胸のあるレオニーじゃないさ、僕たちにはもう関係ないことだと思おう?」
ふんっ!と顔を背けるとイザベラは出ていってしまった。
僕がこのときイザベラの思惑を知っていれば、もっと必死になって止めただろう。
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