死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第一章 第二の覇道、見出したり

第15話 実戦

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「最終試験……。第五等級のモンスターでしょうか」

「それもいいが、試験と呼ぶからにはお前には兵士として超えなければならない一戦を、……一線を超えてもらう。不安に思うことはない。目標ターゲットの場所は既に判明している。いつものように目標に弾丸を当てるだけだ」

「はい」

 二人は手馴れた仕草で装備を整えた。カチャカチャと金属の心地よい音が響く。

「予備弾倉は多めに持って行くぞ」

「はい」

 いつも通りと言いつつ、普段のモンスター狩りとはどこか違う神妙な面持ちのジェイに、アインは一抹の不安を覚えた。





「今回のターゲットについて詳しい情報はありますか?」

 任務の前に不安なことがあるならその要素は排するべき。それはジェイの教えだった。

「……そうだな。その生き物は仲間とのコミュニケーションが得意だ。集団で行動し、極めて狡猾で、待ち伏せや奇襲といった作戦すら用いる」

「それは危険な動物ですね」

「だが個体差も大きい生き物だ。訓練されていないそれと、訓練されたお前であれば結果は明白だ。同じ生き物同士で戦うなら、その勝敗を決するのは準備と経験の差だ」

 ジェイの口振りにアインは全てを察した。

「ちょっと待ってください、ターゲットって──」

「あれが今回のターゲットだ」

「あれは……」

 ジェイがアインを連れてきた場所。それは盗賊の根城だった。

「街の衛兵ではどうしようもできない数がいるらしい。本来は国が出るべきところだが、国は国で戦争に備えて兵を動かせないというから馬鹿げているな。とにかく、そんな事情で盗賊の討伐依頼が入っていた」

「人を、撃てと言うんですか……?」

 引き金の横に添えられたアインの指先は震えていた。

「軍人とは、のことだ。お前にはその技術も実力もある。後は覚悟だけだ」

「覚悟……」

 少し離れたところから盗賊の様子を伺っていた二人だったが、運悪く──あるいはジェイの意図的な位置取りにより──見張りの盗賊の一人が二人の存在に気が付いた。

「……あ? おい! そこにいる奴らは誰だ!?」

「なんだ?」
「どうした?」

 見張りの声に釣られ洞窟の中からゾロゾロと盗賊の一団が出てくる。

「迷いの冒険者か? 今なら金目の物さえ置いていけば見逃してやるぞ」
「待て、あの若い女、相当な上物だぜ……。へへ、逃がすには惜しいな……」
「いや、もしかして俺らの討伐に来たのかもしれないぞ! 油断するな!」

 汚い身なりで装備も棍棒やナイフと統一感がなく、統率の取れない集団であることは明白だった。
 しかしその数が最大の敵である。洞窟の前にいるのが十五名、更に奥から後続が続く。

「さあ、アイン。やれ」

「…………」

 ジェイはAR15のセーフティすら解除せず、アインの横で彼女をじっと見守っていた。
 アインがたじろぐ間にも盗賊たちは着々と距離を詰めてくる。

「見ろお前ら! この女は殺すな! ……久しぶりのお楽しみだ」
「男の方は剣すら持ってないぞ! ハハ! これは迷いの旅人親子だな! 運が悪かったと思って娘と金目の物を置いてけ! お前だけは見逃してやるぜ」

「銃は人を殺すための道具じゃない。誰を生かして誰を殺すか選ぶための道具だ。さあ選べ。ここで俺が殺され、お前も慰めものになった後、殺されるのか。それとも今お前があの山賊を殺して俺たちを生かすのか。お前が選ぶんだ。その重たい引き金でな」

 ジェイはそっとアインの肩に手を乗せる。その手から、彼女の震えが伝わった。

 アインは恐る恐る引き金に指を掛ける。しかしそこから動けなくなった。

「いいかお前ら、この女は俺から順番だぞ?」
「いや俺が見つけたんだから俺からだ!」

 とうとう盗賊の一人がアインに触れようと手を伸ばしてきた。

「アイン!!!」

「……ッ!」

 パン! と一回乾いた音が響く。

「ご……が……?」

 どさりと大柄な盗賊が地面に倒れた。
 何が起きたのかも分からず、盗賊は首から吹き出す血飛沫を必死で抑えている。しかし、それが手遅れであると他の盗賊たちもすぐに察していた。

「良くやった。いや、この距離なら外す方が難しいか。いずれにせよ、良くやった。だが目を逸らしたのは大幅な減点だ。戦場では絶対に目標から目を逸らすな。弾が命中したのか、そして目標を本当に殺せたのか、その目で確かめろ。……そして自分が殺したのだという現実からも、目を逸らすな」

 ジェイは努めて優しい口調でアインにそう語り、彼女の肩に手を置いた。
 アインは極度の緊張から解放され、その場にへたりこんでしまった。

「離れろ! あれは魔導具だ!」
「女は魔法使いだ! 何の魔法かは知らねぇがとにかくヤベェ!」
「キールが殺られたぞ! 早くその女を殺せ!」

「あ……」

 盗賊たちが武器を取り一気に攻め立ててくる。
 アインは落とした銃を拾おうと手を伸ばすが震えて掴めない。

「後は任せろ──」

 そう言ったジェイは一秒にも満たない時間でセーフティを解除しコッキングレバーを引く。
 そして手前の六人を単発射撃で二発ずつ撃ち込み、速やかに排除した。

「なッ……!?」

 ジェイは次に奥で弓を引く盗賊五人、投げナイフを持つ盗賊三人を撃破。クイックリロードにより素早くマガジンを交換し、洞窟から出てくる盗賊が分散しないうちに次々と倒していった。
 気がつけば洞窟の出口には死体の山が築かれていた。

「近接格闘についても実戦の様子を見せようか」

 ジェイはAR15を離しナイフを取り出す。

「あ……あ……」

「いいか、教えたように真っ先に狙うべきは首だ。脳に送られる血液を失えば人間は即座に行動不能に陥る」

 ジェイは敢えて外に残しておいた、呆然として動けなくなった盗賊を切り伏せる。

「次に有効なのは太腿だ。同様に脇も有効打となり得る。太い血管が通る部分は大量出血を誘え、戦いを有利に進められる」

「がッ……」

「心臓を狙うのは悪手だ。重要な器官であるだけに体の造りとしても堅牢に守られている。ナイフを胸に突き刺して肋骨に阻まれることなんてよくある。ただ攻撃が防がれるならマシだが肋骨と肋骨の間に挟まって抜けなくなるのは最悪だな」

「ぎゃぁ!」

 憐れな悲鳴と共に戦意を喪失した盗賊たちも地面に転がされていく。

「だが武器がなくても戦う手段はある。このように頭と顎をしっかりとロックして両方の腕で逆方向に引く」

「ごぎゃッ!?」

「そうすると頚椎が損傷する。こうなれば神経が寸断され体を動かせなくなるので無力化できる」

 ジェイは説明を終えると武器を納め服をほろった。

「これで試験と実戦訓練は終わりだ。ご苦労だった」

「…………」

 “試験”と“実戦訓練”の結果、三十余名の盗賊は全員が死亡。アインの初陣は完全なる勝利にて幕を閉じた。
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