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第七章 覇道、世界を統べる
第92話 世界政府
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ヒノデ皇国の降伏文書調印は皇国の皇居にて行われた。
国家元首自らジェイの前に現れ、降伏文書と契約書の両方にサインと押印を終えたことで民間軍事会社ヴァルカンとヒノデ皇国との紛争は終結となった。
結果的に、ヒノデ皇国が最後の集団的な反抗であった。
しばらくはヴァルカンの関連施設や郵便職員が襲撃されるような事件も多発したが、そのどれもが一部過激派によるものであり、多くの一般市民にとっては平和な世の中は望ましいものであった。
宣言通り、ヴァルカンは半年で世界各国との契約を取り付けた。
同時並行で冒険者ギルドや傭兵集団の買収も行い、基本的には穏便な方法でこうした独立組織を吸収していった。
残りの半年、ヴァルカンは本格的に平和な世を創るための行動を活発にした。
「良くぞお集まり頂いた」
共和国ヴァルカン統治領旧エスタマイル。
エスタマイル侯爵の屋敷をドワーフの技術で建て替えたヴァルカンの本社ビルには、世界各国の国家元首が勢揃いしていた。
「かつて憎しみあっていた間柄でありながら、こうして一つのテーブルを囲って言葉を交わしているこの現状こそが、我々が作り出そうとしている平和そのものを体現していると言っていい!」
積極的にヴァルカンと協力したもの、渋々ヴァルカンとの契約を受け入れたもの。
各々の事情により、ジェイの言葉に対する国家元首の表情も様々であった。
「まあ前置きはどうでもいい。この貴重な時間を無駄にしないため、早速本題に入ろう」
国家元首たちは息を飲む。彼らにはもはやヴァルカンに抵抗する力は残っていない。
この恐怖の商人が何を言い出すのか、背筋に寒いものを感じながら猟奇的な笑みを浮かべるジェイの様子を見守っていた。
「いきなり先程の話と矛盾するような事を言うが、俺は完全な平和などこの世に存在し得ないと思っている」
「…………」
「しかし道を一歩踏み外したとして、それをすぐに正す事が出来ればそれは問題ないことだ。世界が誤った方向へ歩き出す前に、それを止める力が必要だ」
「その軍事力をヴァルカンが提供するということだったでは無いか」
「そうだ。まだ我々に負担を強いるのか?」
「それは一体なんだ!」
予想通りの反応にジェイは「ククク」と笑い声を零す。
「今日ここに、“世界政府”の樹立を宣言する!」
「せ、世界政府……?」
「ああ。何も難しいことはない。国を統べるあなたたちがこうして一堂に会し、誤った選択を行った国に対する対処を話し合う。それを“世界会議”と呼ぼうか」
「世界会議……? これが……?」
「ああ。ヴァルカンはその政治力を放棄している。従って、金融などの経済制裁や入国拒否などは各国の判断に委ねられている。軍事力以外の解決手段を持つあなたたちが、ここでその方法を話し合うのだ」
地球で言うところの国連の安全保障理事会と似たような機能。しかし他国=敵ということが常識であった彼らにとって、平和的な話し合いによる解決というのは考えもしないことであった。
「一国が持つ票数は人口や経済規模に依らず一票のみ。議決は非軍事的制裁に対しては過半数、ヴァルカンが代行する軍事的制裁は2/3の賛成によって可決される」
これは小国にとってかなり優位な内容であった。
大国たる共和国や帝国の影響力を脱し、しかも制裁を加えることすら可能になるこの話は魅力的に映った。
「しかしそれでは大多数が結託すればある国を簡単に追い詰めることが可能になってしまうのではないか?」
「それでいいだろう? 今までだってそれだけ反感を買うようなことをした国は滅んでいたはずだ。そのような行動を自制させるための仕組みが一国一票制だ。……更に言えば、結託して一国を貶めようとする危険な国家は逆に制裁を加えられることになるだろうからな」
「なるほど……」
「禁輸も、入国禁止も、軍事制裁も、ヴァルカンがその実効性を保障する。商業も国境警備も軍備も我々が世界的な影響力を持っているからな。要はヴァルカンの力の使い方を、ここでの話し合いで決めようというのだ」
ヴァルカンが如何に中立を叫ぼうとも、その保証はどこにもない。しかし世界政府がそれをコントロールするとすれば、強制的な中立が成される。
ヴァルカンが自ら力を委ねるというこの申し出を、国家元首たちが受けないはずはなかった。
「……私は賛成だ」
「我が国も賛成しよう」
「賛成」
「神の名のもとに、賛成する」
続々と国家元首たちは賛成の意を示す挙手をする。
最後まで手を挙げなかったのは共和国と帝国の二カ国だった。
「大国としてのノブレス・オブリージュを、期待しているぞ?」
「……分かった」
ここ第一回世界会議において、全会一致で世界政府樹立が採択された。
この一日は、世界が平和に向けて共に歩み始めた歴史的な一日として人々の記憶に刻まれるのだった。
国家元首自らジェイの前に現れ、降伏文書と契約書の両方にサインと押印を終えたことで民間軍事会社ヴァルカンとヒノデ皇国との紛争は終結となった。
結果的に、ヒノデ皇国が最後の集団的な反抗であった。
しばらくはヴァルカンの関連施設や郵便職員が襲撃されるような事件も多発したが、そのどれもが一部過激派によるものであり、多くの一般市民にとっては平和な世の中は望ましいものであった。
宣言通り、ヴァルカンは半年で世界各国との契約を取り付けた。
同時並行で冒険者ギルドや傭兵集団の買収も行い、基本的には穏便な方法でこうした独立組織を吸収していった。
残りの半年、ヴァルカンは本格的に平和な世を創るための行動を活発にした。
「良くぞお集まり頂いた」
共和国ヴァルカン統治領旧エスタマイル。
エスタマイル侯爵の屋敷をドワーフの技術で建て替えたヴァルカンの本社ビルには、世界各国の国家元首が勢揃いしていた。
「かつて憎しみあっていた間柄でありながら、こうして一つのテーブルを囲って言葉を交わしているこの現状こそが、我々が作り出そうとしている平和そのものを体現していると言っていい!」
積極的にヴァルカンと協力したもの、渋々ヴァルカンとの契約を受け入れたもの。
各々の事情により、ジェイの言葉に対する国家元首の表情も様々であった。
「まあ前置きはどうでもいい。この貴重な時間を無駄にしないため、早速本題に入ろう」
国家元首たちは息を飲む。彼らにはもはやヴァルカンに抵抗する力は残っていない。
この恐怖の商人が何を言い出すのか、背筋に寒いものを感じながら猟奇的な笑みを浮かべるジェイの様子を見守っていた。
「いきなり先程の話と矛盾するような事を言うが、俺は完全な平和などこの世に存在し得ないと思っている」
「…………」
「しかし道を一歩踏み外したとして、それをすぐに正す事が出来ればそれは問題ないことだ。世界が誤った方向へ歩き出す前に、それを止める力が必要だ」
「その軍事力をヴァルカンが提供するということだったでは無いか」
「そうだ。まだ我々に負担を強いるのか?」
「それは一体なんだ!」
予想通りの反応にジェイは「ククク」と笑い声を零す。
「今日ここに、“世界政府”の樹立を宣言する!」
「せ、世界政府……?」
「ああ。何も難しいことはない。国を統べるあなたたちがこうして一堂に会し、誤った選択を行った国に対する対処を話し合う。それを“世界会議”と呼ぼうか」
「世界会議……? これが……?」
「ああ。ヴァルカンはその政治力を放棄している。従って、金融などの経済制裁や入国拒否などは各国の判断に委ねられている。軍事力以外の解決手段を持つあなたたちが、ここでその方法を話し合うのだ」
地球で言うところの国連の安全保障理事会と似たような機能。しかし他国=敵ということが常識であった彼らにとって、平和的な話し合いによる解決というのは考えもしないことであった。
「一国が持つ票数は人口や経済規模に依らず一票のみ。議決は非軍事的制裁に対しては過半数、ヴァルカンが代行する軍事的制裁は2/3の賛成によって可決される」
これは小国にとってかなり優位な内容であった。
大国たる共和国や帝国の影響力を脱し、しかも制裁を加えることすら可能になるこの話は魅力的に映った。
「しかしそれでは大多数が結託すればある国を簡単に追い詰めることが可能になってしまうのではないか?」
「それでいいだろう? 今までだってそれだけ反感を買うようなことをした国は滅んでいたはずだ。そのような行動を自制させるための仕組みが一国一票制だ。……更に言えば、結託して一国を貶めようとする危険な国家は逆に制裁を加えられることになるだろうからな」
「なるほど……」
「禁輸も、入国禁止も、軍事制裁も、ヴァルカンがその実効性を保障する。商業も国境警備も軍備も我々が世界的な影響力を持っているからな。要はヴァルカンの力の使い方を、ここでの話し合いで決めようというのだ」
ヴァルカンが如何に中立を叫ぼうとも、その保証はどこにもない。しかし世界政府がそれをコントロールするとすれば、強制的な中立が成される。
ヴァルカンが自ら力を委ねるというこの申し出を、国家元首たちが受けないはずはなかった。
「……私は賛成だ」
「我が国も賛成しよう」
「賛成」
「神の名のもとに、賛成する」
続々と国家元首たちは賛成の意を示す挙手をする。
最後まで手を挙げなかったのは共和国と帝国の二カ国だった。
「大国としてのノブレス・オブリージュを、期待しているぞ?」
「……分かった」
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