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第一章
30話 交流
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「あ、ちょっと待ってください!」
帰ろうとする団長たちを呼び止める。
「よろしければお昼ご一緒しませんか?実はうちのシェフが腕によりをかけてもう準備してまして……」
会議室の扉を開けた時に、鼻腔をくすぐるいい匂いで思い出した。
「本当ですか?……ではありがたく頂きましょうかね」
「はい!」
団長の言葉に副官も同意する。
「あ、いえ。申し訳ありませんが、私は先に戻らせていただきます。もうすぐつく本隊への連絡もありますので……」
そう言い、秘書官だけは帰ることになった。仕事があるのはもちろん、貴族や自分の上司との食事会に気が進まないというのもありそうな表情だった。
「分かりました。……どうかよろしくお願いします」
「では、失礼します」
そそくさと秘書官は屋敷から出ていった。
「レオ殿、私たちは二人だけの参加になるがよろしいでしょうかね?」
「もちろんです!では食堂の方でお待ちください!……マリエッタ、すぐに料理を運んでくれ」
「かしこまりました」
「お、ちょうど会議も終わったみてェだな」
食堂まで移動する間に歳三が屋敷に戻ってきた。私は二階の吹き抜けから、玄関にいる歳三に呼びかける。
「あれ、もう用事は済んだのか?」
「あァ。軍の方はすぐにどうこうできる話じゃ無いからな。ひとまず会議の内容を幹部に伝えただけだ」
「じゃあ歳三も一緒にランチとしよう!帝国近衛騎士団の団長も来てるんだ!挨拶だけでも来てくれ!」
「分かったぜ」
軍の高官同士、いつか来るであろう戦争に備えて親睦を深めるのも良いだろう。顔を知っているというだけでも共に戦う人間への信頼は変わってくるものだ。
「あ、シズネさんもぜひ来てください!」
私は更に、書斎や図書室を行ったり来たりしているシズネにも声をかけた。
彼女は私の呼び掛けに耳をピンと立てて振り返る。
「私が居てもいいのかなぁ?」
「はい!帝国の偉い人とも人脈を広げれば、シズネさんにとっても良い経験になると思います」
私は今年で十歳になった。十二歳で貴族学園に進学することになっているので、シズネの家庭教師にお世話になるのもあと一年ちょっとだ。
「ありがとう。レオくんがそう言ってくれるなら私もご一緒させてもらうね」
そうして歳三とシズネも合流した私たち一堂は、ぞろぞろと食堂に向かった。
私はいつも父が座っている座席に着いた。客人を前にした今、私が主人としてこの場を取り仕切ることになる。
と言っても、そんな堅苦しい場でもないが。
「どうぞ皆さんもお掛けください」
私の右にウィルフリードの人間、左に近衛騎士団の方々が座った。手前から歳三と団長、次にシズネと副官といった具合だ。
こうして、ある意味この戦いの終わりを象徴するような、重役たちによる食事会が幕を開けた。
「あ、紹介がまだでしたね。……こちらが私のスキル『英雄召喚』によって召喚された、異世界の英雄、土方歳三です」
「よろしく頼む」
歳三は団長に向かい挨拶する。
「ウィルフリードの嫡子は人間を召喚できるという噂は本当だったのですか!?」
団長は驚きを隠す素振りもない。
「そうですね……。できちゃいました」
「それに「異世界の英雄」などと興味深い言葉も聞こえてきましたが……!?」
「改めて英雄だなんて言われると照れるが、……まァそういうことだ」
「私の不学をお許しください。そのようなことを聞いたのは初めてだ!」
それもそのはず、この世界歴史上初の出来事だろう。
「異世界の話など是非お聞かせ願いたい!土方殿の世界ではどのような戦法が生み出されたのか!どんな兵器が発明されたのか!」
「お、おう……」
団長の勢いに珍しく歳三が気圧されている。
「……これは失礼しました。私は帝国近衛騎士団団長のヘルムート=ヤーヴィスと申します……」
「こりゃ、ど、どうも……」
「さぁ!話の続きは食べながらでも!料理が運ばれてきましたよ!」
ちょうどマリエッタたちメイドが前菜とスープを運んできた。
「おぉ、これはいい匂いだ!……乾燥した兵糧食ばかりの兵たちに申し訳ない気持ちになるな」
「団長、今はこっそり楽しみましょう」
「……まぁそうだな!」
温かい料理を前に楽しみにしているのか、それとも歳三の話にワクワクしているのか。とにかく団長のイメージが完全に崩壊するほど目を輝かせ、ウキウキしているのが伝わってきた。
「歳三、団長に元の世界のことをお話してあげてくれ」
「あァ」
根っからの武人同士、話は大層盛り上がった。
歳三は近代軍事学について、西洋での考え方などを含め話した。そんなこと初めて聞く団長は驚きつつも、何かを得たようにぶつぶつ呟いていた。
逆に団長は帝国自慢の騎馬戦術を歳三に伝授した。父のように、個で優る歩兵が主流のウィルフリード軍に、帝国の戦術は逆に新しいものに写った。
その間、シズネと副官も、ウィルフリードで発明された数字や公式などを教えていた。帝国での更なる文化の発展が期待できそうだ。
そして何より、副官の目にはシズネが稀代の天才に思え、シズネの顔を売る作戦も成功したようだった。
急遽集まったメンバーで始まった食事会だが、問題なく進み有意義な時間になっているようで何よりだ。
帰ろうとする団長たちを呼び止める。
「よろしければお昼ご一緒しませんか?実はうちのシェフが腕によりをかけてもう準備してまして……」
会議室の扉を開けた時に、鼻腔をくすぐるいい匂いで思い出した。
「本当ですか?……ではありがたく頂きましょうかね」
「はい!」
団長の言葉に副官も同意する。
「あ、いえ。申し訳ありませんが、私は先に戻らせていただきます。もうすぐつく本隊への連絡もありますので……」
そう言い、秘書官だけは帰ることになった。仕事があるのはもちろん、貴族や自分の上司との食事会に気が進まないというのもありそうな表情だった。
「分かりました。……どうかよろしくお願いします」
「では、失礼します」
そそくさと秘書官は屋敷から出ていった。
「レオ殿、私たちは二人だけの参加になるがよろしいでしょうかね?」
「もちろんです!では食堂の方でお待ちください!……マリエッタ、すぐに料理を運んでくれ」
「かしこまりました」
「お、ちょうど会議も終わったみてェだな」
食堂まで移動する間に歳三が屋敷に戻ってきた。私は二階の吹き抜けから、玄関にいる歳三に呼びかける。
「あれ、もう用事は済んだのか?」
「あァ。軍の方はすぐにどうこうできる話じゃ無いからな。ひとまず会議の内容を幹部に伝えただけだ」
「じゃあ歳三も一緒にランチとしよう!帝国近衛騎士団の団長も来てるんだ!挨拶だけでも来てくれ!」
「分かったぜ」
軍の高官同士、いつか来るであろう戦争に備えて親睦を深めるのも良いだろう。顔を知っているというだけでも共に戦う人間への信頼は変わってくるものだ。
「あ、シズネさんもぜひ来てください!」
私は更に、書斎や図書室を行ったり来たりしているシズネにも声をかけた。
彼女は私の呼び掛けに耳をピンと立てて振り返る。
「私が居てもいいのかなぁ?」
「はい!帝国の偉い人とも人脈を広げれば、シズネさんにとっても良い経験になると思います」
私は今年で十歳になった。十二歳で貴族学園に進学することになっているので、シズネの家庭教師にお世話になるのもあと一年ちょっとだ。
「ありがとう。レオくんがそう言ってくれるなら私もご一緒させてもらうね」
そうして歳三とシズネも合流した私たち一堂は、ぞろぞろと食堂に向かった。
私はいつも父が座っている座席に着いた。客人を前にした今、私が主人としてこの場を取り仕切ることになる。
と言っても、そんな堅苦しい場でもないが。
「どうぞ皆さんもお掛けください」
私の右にウィルフリードの人間、左に近衛騎士団の方々が座った。手前から歳三と団長、次にシズネと副官といった具合だ。
こうして、ある意味この戦いの終わりを象徴するような、重役たちによる食事会が幕を開けた。
「あ、紹介がまだでしたね。……こちらが私のスキル『英雄召喚』によって召喚された、異世界の英雄、土方歳三です」
「よろしく頼む」
歳三は団長に向かい挨拶する。
「ウィルフリードの嫡子は人間を召喚できるという噂は本当だったのですか!?」
団長は驚きを隠す素振りもない。
「そうですね……。できちゃいました」
「それに「異世界の英雄」などと興味深い言葉も聞こえてきましたが……!?」
「改めて英雄だなんて言われると照れるが、……まァそういうことだ」
「私の不学をお許しください。そのようなことを聞いたのは初めてだ!」
それもそのはず、この世界歴史上初の出来事だろう。
「異世界の話など是非お聞かせ願いたい!土方殿の世界ではどのような戦法が生み出されたのか!どんな兵器が発明されたのか!」
「お、おう……」
団長の勢いに珍しく歳三が気圧されている。
「……これは失礼しました。私は帝国近衛騎士団団長のヘルムート=ヤーヴィスと申します……」
「こりゃ、ど、どうも……」
「さぁ!話の続きは食べながらでも!料理が運ばれてきましたよ!」
ちょうどマリエッタたちメイドが前菜とスープを運んできた。
「おぉ、これはいい匂いだ!……乾燥した兵糧食ばかりの兵たちに申し訳ない気持ちになるな」
「団長、今はこっそり楽しみましょう」
「……まぁそうだな!」
温かい料理を前に楽しみにしているのか、それとも歳三の話にワクワクしているのか。とにかく団長のイメージが完全に崩壊するほど目を輝かせ、ウキウキしているのが伝わってきた。
「歳三、団長に元の世界のことをお話してあげてくれ」
「あァ」
根っからの武人同士、話は大層盛り上がった。
歳三は近代軍事学について、西洋での考え方などを含め話した。そんなこと初めて聞く団長は驚きつつも、何かを得たようにぶつぶつ呟いていた。
逆に団長は帝国自慢の騎馬戦術を歳三に伝授した。父のように、個で優る歩兵が主流のウィルフリード軍に、帝国の戦術は逆に新しいものに写った。
その間、シズネと副官も、ウィルフリードで発明された数字や公式などを教えていた。帝国での更なる文化の発展が期待できそうだ。
そして何より、副官の目にはシズネが稀代の天才に思え、シズネの顔を売る作戦も成功したようだった。
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