英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第一章

55話 旅路の夜

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「ま、今日はここでゆっくりしていくといいわ! 宿代はいらないけど、チップぐらい置いていってくれると皆も喜ぶわ!」

「うむ。助かる」

「……もう、そっちの二人も待ちきれなさそうだし、アタシはおいとまするわ! バァーイ!」

 そう言い残し、ザスクリアは部屋を後にした。
 まさに嵐のように来て嵐のように去っていった彼女は、落ち着いた雰囲気の女性陣で固めるウィルフリードとは違った刺激になった。

 彼女が扉を閉めたその瞬間、歳三と孔明はもちろん、父もすぐに席に戻り肉に齧り付いていた。

 やれやれと思いつつも、私も溢れる肉汁と香り立つスープの誘惑には適わず、目一杯にご馳走を楽しんだ。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 




「こちらが本日お泊まり頂くお部屋になります。人数分ございますので、お好きな部屋をご利用ください。朝食は申し付け下さればお部屋までお持ち致します」

「ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ!」

 主人の案内で、二階の個室が割り当てられた。
 中は落ち着いた雰囲気のシンプルな部屋で、デスクとローテーブル、ソファとベットといった基本的な構成だった。

 私と父はいつもこのような部屋で寝ているので特に何の感情も湧かなかったが、兵舎で寝泊まりする歳三と離れの小屋に住む孔明は少し嬉しそうだった。

 アルガーは「明日の準備がありますので」とそそくさと部屋に入った。……もしかしたら早くこの広い部屋で休みたかっただけかもしれない。

「お休みなさい父上、歳三、孔明」

「うむ。お休みレオ」

「寝坊すんなよ?」

「お休みなさい。それでは失礼します……」

 軽い挨拶を交わし、私たちは各々の部屋へ入っていった。

 窓の外を見ると、日もすっかり落ちてしまい、部屋の中は真っ暗だった。
 私はいの一番にランプをつける。

 このランプは魔石を利用した魔導具のようだ。
 小さな魔石に光の魔法を込める事で、その魔石に貯まった魔力が尽きるまで光を放ち続ける。

 うちの屋敷では蝋燭が主流だが、オール電化のようにオール魔導具にしてもいいかもしれないと思った。

 なんでそんな事を考えているのかと言うと、暇だからである。
 ある意味仕事なのかもしれないが、特に今やるべき仕事もない出張先の宿では大抵暇になる。

 私は意味もなく部屋をウロウロ歩き回り、デスクの引き出しを開けて何かないか物色してみたり、ソファにもたれてみたりした後、大人しくベットに身を投げた。




 目を閉じると、森での出来事がまぶたの裏に蘇る。
 そして、私はあることに気が付いた。

 それは、人の死を目の当たりにしたのに何も感じていなかったということだ。

 ファリアとの戦いでは、大勢の死を受け止めきれず、自ら人を殺めた罪の意識に囚われ苦しんだ。
 それなのに、今度目の前で盗賊が死んでいくのを見ても何も感じていなかった。

 むしろ父や歳三、アルガーの活躍に胸を踊らせた。孔明の身を心配する余裕もあった。
 そしてなにより、私が自ら進んで剣を抜いた。

 何故、何も感じなかったのだろうか。

 ファリアの兵士と違い、盗賊は確実な悪であるから? 守るべきもののために戦っているわけではなく、己の欲望の為に襲ってきたから?

 いや、彼らがなぜ盗賊に身をやつしたのか知らずに、死ぬべき悪だと誰が決めれようか。本当に己の欲望の為か。
 彼らに養うべき家族がいないと言い切れない。

 日本の警察なら、武器を持っていた盗賊であっても生け捕りにするだろう。モンスターでさえ保護しろという人もいるかもしれない。
 アメリカならまた分からないが。

 だが、父やアルガーにそんな考えはない。
 彼らにとってそもそも盗賊は討伐すべき相手であって、殺すのにそれ以上の理由を必要としていない。それが生まれた時から当然の摂理だから。

 誰が悪いのだとか、誰の責任なのかなどと詰問している訳でもない。

 私は、日本人であれば異常に感じるその光景に何も思わなかったのが怖くなったのだ。
 遂に身も心もこの世界に染まったのか。

 それが良いことなのか悪いことなのかは分からない。この諮問すら無駄なものなのかもしれない。

 ふかふかのベットが優しく、温かく身を包み、穏やかな睡眠へといざなった。


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