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第三章
216話 壁外調査
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国内については各省庁が積極的に動いている。その一方で、国外に向けても活動を続けていた。
まずアキードは国境が長すぎるため防衛費が馬鹿にならない。よって緊急事態においては先日開発された地雷による遅滞戦闘を主とし、兵は少数の即応軍のみ配置している。
こういう時は各地域の領主が持つ軍が有効だ。彼らは自領を何がなんでも守らなければならないから積極的に自ら兵を動員してくれる。
王国との間は山脈が壁の代わりとなり、南のウィルフリードか北の魔王領から迂回するしか道がない。
北方は完璧に防壁が建てられているため実質通れるのはウィルフリード方面しかないが、そちらも現在複数の要塞を建築している。
そして問題が北方の魔王領だ。
「──これが父上から届いた報告書だな」
「そ、そうですにゃ! ……ふぅ」
エルシャの厳しい監視の元、ミーツが健気に大量の書類を私の執務室まで何度も運んでくる。
「魔王領からの侵攻が少なかったから調査も簡単に進むと思っていたのだがな……」
「まさか奥の方には大量のモンスターや魔獣がいたなんてね」
そこに書かれているのは魔王領特有のアンデット系と称されるゾンビやスケルトンといった下位種族から、強大なオークやサイクロプスといった上位種まで勢揃いだ。
「特にこの上位種に位置付けられるものは危険よ。帝国の精鋭である近衛兵でも百人でやっと倒せるといったところね」
「大砲など持って行ければいいんだが、魔王領は泥濘地帯であったり山岳地帯が多く、重火器を運ぶには開拓が必要だ。これは時間が掛かるな……」
守る分にはノードウェステンとノードストンの北方二貴族と壁、それに国有軍から配備した大砲により備えは万全だ。
だがそれでは人類の脅威に対する根本的な解決には至らない。
「本当は航空攻撃と航空偵察で全て済ませたいのだがな」
「誰も飛びたくないわよあんなところ」
まず魔王領は天候が悪い。魔力の流れが乱れているだとか何とかで毎日暴風と雷が人々を襲う。
そして魔王領には空の脅威がある。それは……
「その魔人ってのは本当にいるのか?」
「ええ。確かに歴史書に書いてあるわ」
「この国の歴史書は信用ならない。……が、妖狐族の歴史書にも記載があるのだから、本当にいたのだろうな」
魔人は我々人類を遥かに超える身体能力と魔力を誇り、地上を這いつくばる我々を圧倒的する。空を望む者は瞬時に叩き落とされる。
これはどの種族においても共通認識であるらしく、竜人も魔王領は飛びたがらない。
「真否は置いといて、かつて数百年前に人類を襲った魔人にマタサと名乗ったそうよ」
「へー」
「興味なさげね」
「名前なんて別にどうでもいい。父上からの報告に上がっていないからには今のところ無視して大丈夫な存在だ」
私は書類をペラペラ流し読みする。
「でもそんなに調査する必要あるの? 別に守りを固めれば問題ない。今までもそうだったわ」
「まあその魔人含め、魔王領の戦力がどんなもんか分からないからな。その魔王とやらがモンスターを率いて攻めてくる危険があるのに平和は名乗れない」
「魔人は信じないのに魔王は居いる前提なのね」
「……そう言われればそうだな。なんかいる気がするんだ。幼い頃からの刷り込みだな」
「ふーん」
ラスボスは魔王。大体そう決まっている。
「調査は何も恐怖心を無くすためだけじゃない。文字通り知りたいことがあるからだ。……見てみろ今のこの地図を。なんで地図なのに霧や雲で覆い隠しているんだ」
「だって本当に見えないからよ」
「少なくとも地図埋めぐらいはさせてもらう。ついでにどんな資源があるかの調査もな」
魔王領は現在13%が調査完了している。今後の調査結果に期待だ。
「──レオ様、妖狐族からも報告書が届いていますにゃ」
「おっ! こっちは楽しみだな。どれどれ……」
妖狐族との共同プロジェクト。それは海の外の調査だ。
「……やはりまだ厳しいのか」
「大型艦に最新の蒸気船でも、近海までは出れても外海には到達不可能だったようですにゃ……」
この世界にある二つの月。そしてそいつらのせいで巻き起こる複雑な潮流。
これを乗り越えるのはまだまだ課題が多い。
「蒸気船程度の馬力じゃ潮流に流され座礁してしまうようだな」
「もっと大きくてもっと強い船が必要ですにゃね」
技術力、科学力の発展が待たれるばかりだ。
「海の外がどうなっているのかも知りたいのだがな……」
「お得意の空から行けばいいじゃない」
「竜人の航続距離では限界がある。……ルーデルならそれなりに行けるが、アイツが万が一墜ちたら回収の手段がない。許可を出せばどこまで飛んでいくか分からないからな」
蒸気機関を動力にした飛行機を作るのは不可能に近い。蒸気船なら実験段階ではあるが何とかなる。
「帝国の技術力は飛躍的に進歩しつつある。今はただ、ゆっくり待とう」
まずアキードは国境が長すぎるため防衛費が馬鹿にならない。よって緊急事態においては先日開発された地雷による遅滞戦闘を主とし、兵は少数の即応軍のみ配置している。
こういう時は各地域の領主が持つ軍が有効だ。彼らは自領を何がなんでも守らなければならないから積極的に自ら兵を動員してくれる。
王国との間は山脈が壁の代わりとなり、南のウィルフリードか北の魔王領から迂回するしか道がない。
北方は完璧に防壁が建てられているため実質通れるのはウィルフリード方面しかないが、そちらも現在複数の要塞を建築している。
そして問題が北方の魔王領だ。
「──これが父上から届いた報告書だな」
「そ、そうですにゃ! ……ふぅ」
エルシャの厳しい監視の元、ミーツが健気に大量の書類を私の執務室まで何度も運んでくる。
「魔王領からの侵攻が少なかったから調査も簡単に進むと思っていたのだがな……」
「まさか奥の方には大量のモンスターや魔獣がいたなんてね」
そこに書かれているのは魔王領特有のアンデット系と称されるゾンビやスケルトンといった下位種族から、強大なオークやサイクロプスといった上位種まで勢揃いだ。
「特にこの上位種に位置付けられるものは危険よ。帝国の精鋭である近衛兵でも百人でやっと倒せるといったところね」
「大砲など持って行ければいいんだが、魔王領は泥濘地帯であったり山岳地帯が多く、重火器を運ぶには開拓が必要だ。これは時間が掛かるな……」
守る分にはノードウェステンとノードストンの北方二貴族と壁、それに国有軍から配備した大砲により備えは万全だ。
だがそれでは人類の脅威に対する根本的な解決には至らない。
「本当は航空攻撃と航空偵察で全て済ませたいのだがな」
「誰も飛びたくないわよあんなところ」
まず魔王領は天候が悪い。魔力の流れが乱れているだとか何とかで毎日暴風と雷が人々を襲う。
そして魔王領には空の脅威がある。それは……
「その魔人ってのは本当にいるのか?」
「ええ。確かに歴史書に書いてあるわ」
「この国の歴史書は信用ならない。……が、妖狐族の歴史書にも記載があるのだから、本当にいたのだろうな」
魔人は我々人類を遥かに超える身体能力と魔力を誇り、地上を這いつくばる我々を圧倒的する。空を望む者は瞬時に叩き落とされる。
これはどの種族においても共通認識であるらしく、竜人も魔王領は飛びたがらない。
「真否は置いといて、かつて数百年前に人類を襲った魔人にマタサと名乗ったそうよ」
「へー」
「興味なさげね」
「名前なんて別にどうでもいい。父上からの報告に上がっていないからには今のところ無視して大丈夫な存在だ」
私は書類をペラペラ流し読みする。
「でもそんなに調査する必要あるの? 別に守りを固めれば問題ない。今までもそうだったわ」
「まあその魔人含め、魔王領の戦力がどんなもんか分からないからな。その魔王とやらがモンスターを率いて攻めてくる危険があるのに平和は名乗れない」
「魔人は信じないのに魔王は居いる前提なのね」
「……そう言われればそうだな。なんかいる気がするんだ。幼い頃からの刷り込みだな」
「ふーん」
ラスボスは魔王。大体そう決まっている。
「調査は何も恐怖心を無くすためだけじゃない。文字通り知りたいことがあるからだ。……見てみろ今のこの地図を。なんで地図なのに霧や雲で覆い隠しているんだ」
「だって本当に見えないからよ」
「少なくとも地図埋めぐらいはさせてもらう。ついでにどんな資源があるかの調査もな」
魔王領は現在13%が調査完了している。今後の調査結果に期待だ。
「──レオ様、妖狐族からも報告書が届いていますにゃ」
「おっ! こっちは楽しみだな。どれどれ……」
妖狐族との共同プロジェクト。それは海の外の調査だ。
「……やはりまだ厳しいのか」
「大型艦に最新の蒸気船でも、近海までは出れても外海には到達不可能だったようですにゃ……」
この世界にある二つの月。そしてそいつらのせいで巻き起こる複雑な潮流。
これを乗り越えるのはまだまだ課題が多い。
「蒸気船程度の馬力じゃ潮流に流され座礁してしまうようだな」
「もっと大きくてもっと強い船が必要ですにゃね」
技術力、科学力の発展が待たれるばかりだ。
「海の外がどうなっているのかも知りたいのだがな……」
「お得意の空から行けばいいじゃない」
「竜人の航続距離では限界がある。……ルーデルならそれなりに行けるが、アイツが万が一墜ちたら回収の手段がない。許可を出せばどこまで飛んでいくか分からないからな」
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