27 / 30
愛しくて、守りたい人 ②
しおりを挟む
「ああ、わかったわ! あなたも仲間なのね。そうよね、〝人殺し〟は憎いわよね。私の主人は、あの人に殺され――」
「白哉先生は、人殺しなんかじゃない……」
『仲間』と言われ、杏依の中に怒りが芽生えた。
白哉はそんな人じゃない。自らを犠牲にして執刀し続ける、優しすぎるお医者さんだ。
小声だったが、出した声は震えていた。思わず左拳を握り締め、目の前の彼女を睨む。
彼女は杏依の顔を見て、黙ってしまった。杏依は耐えられず、叫んだ。
「白哉先生は人殺しなんかじゃありません! 私は彼に助けられました。ピアノは辞めなきゃいけなくなったけど、命を助けてくれたのは間違いなく彼で――」
すると、彼女は心底恨めしそうな顔でこちらを睨んだ。
「腕がないからってチヤホヤされて、うまく行ったんだからあなたは良いわよね。私は主人が亡くなってから、どれだけ一人で大変な目にあってきたか。私の苦労も、あなたみたいな成功者には分からないわよね!」
彼女がこちらに走ってくる。その腕が動いた。
右手に握られていた何かが、玄関の明かりに照らされてギラリと輝く。
ナイフだ、と気づいた時には、振り落とされていた。思わずぎゅっと目をつぶる。
死ぬ!
けれど、いつまでもその衝撃は来ない。そっと目を開ける。
見えたのは、杏依を庇うように包み込む、大きな左腕。ナイフが刺さり、血が垂れている。
「いってぇ……」
白哉、先生……?
驚きすぎて声が出ない。
見上げると、苦しそうに顔を歪める、愛しい人の顔があった。
視線を動かせば、犯人は腰を抜かして座り込み、青ざめた顔で固まっている。
「私は……私は悪くない! 悪いのは、主人を殺したあなたよ!」
ヒステリックに叫んだ彼女は、そのまま顔を覆って泣き崩れしまった。
「悪いのは俺だけだ。彼女を巻き込むのは、筋違いだろ」
苦し気に、それでも自分を守るために呟かれた白哉の声に、杏依の目頭が熱くなる。
「く……っ」
「白哉先生!」
白哉は腕を抑えたまま倒れ込む。杏依は慌てて、警察と消防に通報した。
「白哉先生は、人殺しなんかじゃない……」
『仲間』と言われ、杏依の中に怒りが芽生えた。
白哉はそんな人じゃない。自らを犠牲にして執刀し続ける、優しすぎるお医者さんだ。
小声だったが、出した声は震えていた。思わず左拳を握り締め、目の前の彼女を睨む。
彼女は杏依の顔を見て、黙ってしまった。杏依は耐えられず、叫んだ。
「白哉先生は人殺しなんかじゃありません! 私は彼に助けられました。ピアノは辞めなきゃいけなくなったけど、命を助けてくれたのは間違いなく彼で――」
すると、彼女は心底恨めしそうな顔でこちらを睨んだ。
「腕がないからってチヤホヤされて、うまく行ったんだからあなたは良いわよね。私は主人が亡くなってから、どれだけ一人で大変な目にあってきたか。私の苦労も、あなたみたいな成功者には分からないわよね!」
彼女がこちらに走ってくる。その腕が動いた。
右手に握られていた何かが、玄関の明かりに照らされてギラリと輝く。
ナイフだ、と気づいた時には、振り落とされていた。思わずぎゅっと目をつぶる。
死ぬ!
けれど、いつまでもその衝撃は来ない。そっと目を開ける。
見えたのは、杏依を庇うように包み込む、大きな左腕。ナイフが刺さり、血が垂れている。
「いってぇ……」
白哉、先生……?
驚きすぎて声が出ない。
見上げると、苦しそうに顔を歪める、愛しい人の顔があった。
視線を動かせば、犯人は腰を抜かして座り込み、青ざめた顔で固まっている。
「私は……私は悪くない! 悪いのは、主人を殺したあなたよ!」
ヒステリックに叫んだ彼女は、そのまま顔を覆って泣き崩れしまった。
「悪いのは俺だけだ。彼女を巻き込むのは、筋違いだろ」
苦し気に、それでも自分を守るために呟かれた白哉の声に、杏依の目頭が熱くなる。
「く……っ」
「白哉先生!」
白哉は腕を抑えたまま倒れ込む。杏依は慌てて、警察と消防に通報した。
1
あなたにおすすめの小説
お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。
もう一度確かな温もりの中で君を溺愛する
恋文春奈
恋愛
前世で俺は君というすべてを無くした 今の俺は生まれた時から君を知っている また君を失いたくない 君を見つけてみせるから この奇跡叶えてみせるよ 今度こそ結ばれよう やっと出逢えた 君は最初で最後の運命の人 ヤンデレ国民的アイドル松平 朔夜(25)×平凡なオタク大学生佐山 琉梨(22)
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
敏腕SEの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した祭りは、雨の夜に終わりを願う。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
氷の上司に、好きがバレたら終わりや
naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。
お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、
“氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。
最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、
実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき――
舞子の中で、恋が芽生えはじめる。
でも、彼には誰も知らない過去があった。
そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。
◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか?
◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか?
そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。
笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。
関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。
仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。
「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる