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放浪編
090 放浪編9 裏切り
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美優、紗綾、綾姫の三人を嫁にするという話は、僕としては本気じゃない。
むしろ彼女たちを保護するための建前として嫁という立場にするだけだと思っている。
今後、メンバーがどこぞの貴族に見初められて妾になれなんて事態になった時に「騎士爵家の嫁ですが何か?」と断わる口実になればいいのだ。
僕は地球帰還を諦めてはいない。
ビギニ星系が敵勢力に占領されて、SFOの配信も止まっているはずだ。
地球では、僕らSFOゲーマーは行方不明扱いになっていることだろう。
だが、もし地球に帰還出来るのなら、彼女達をアイドルとして戻してあげたい。
そのために彼女たちには指一本触れてはならないのだ。
「晶羅ー。何を考え事してるの?」
紗綾が僕の腕に抱きついて胸をギュウギュウ押し付けてくる。
いや、指一本触れては……。
「紗綾、離れて!
僕たちはまだ正式に結婚してないし、むしろ偽装結婚なんだからね?」
僕は離れたくないという本能を抑えて無理やり紗綾を突き放す。
「えーー。私は本気だよ?
今夜初夜を迎えてもいいんだぞ♡」
紗綾が頬を膨らませて拗ねる。
「それは地球に戻ったら取り返しがつかなくなるって。
まだ我慢しなさい!」
「えーー。つまんないの。
でもまだなんだ♡」
|紗綾(さーや》が何故か満足そうに離れて行く。
ハァハァ、紗綾、恐ろしい子……。
ところで、この背中の違和感は?
後ろを振り向くと、背中に美優が張り付いていた。
微かな膨らみが背中に当たっている。
「美優も……」
うん。がんばったね。美優。
でも地球に帰って淫行扱いは嫌だからね。3年待とうね。
とりあえず美優は癒やしなので、抱き着きはそのまま受け入れた。
「彼女達、ケモミミ押しかけ嫁をどうしようかね」
何気ない独り言だったのに、社長が答える。
「受け入れちまえ。若い美少女三人だぞ。
しかも合法なんだから、ハーレムだハーレム」
「社長、背後の柵は考慮してるの?」
「むしろ、アノイ要塞で生活して行くなら都合がいい。
そうだ、彼女達でアイドルユニットを作ろう。帝国で芸能活動だ!」
社長がアホな冗談を言って笑っている。
「人事だと思って……」
僕は苦笑いするしかなかった。
だがちょっと仕返しをしたくなった。
「社長も菜穂さんと沙也加さんの面倒は見てよ」
「ちょお前」
社長が僕の仕返しに焦る。
菜穂さんの事は満更でもないらしい。
「偽装結婚でいいから、身分を保証出来るようにしないと。
帝国4級戦功章持ちは一応一級市民相当らしいからさ」
どうせなら、社長にも手柄を立ててもらって騎士爵ぐらいにはなって欲しいところだ。
騎士爵になるには累計で20艦撃墜すればいいらしいので、社長はあと17艦というところだ。
撃墜王を狙わなければ25艦撃墜はいらないそうだ。
専用艦も直ったし、今後は間に合わせの巡洋艦よりは活躍出来るはずだ。
「やはり、いつまでも難民扱いはしてもらえないか……」
おそらく、このまま難民の地位に胡坐をかいていたら、そのうち梯子を外される。
獣人たちが二級市民から上に行けないように、ここはそれほど甘い世界じゃないはずだ。
「少なくとも、うちの事務所の五人の女性は守らないとね。
それに加えて社長はシューティングドリームの身元引受人でしょ?
彼女たちとハーレムだね」
「ああ、彼女たちも守ってやらないとな。
だが、帝国一級市民相当の俺では五人を守ることは出来ないだろう。
だから、おまえも何人か負担してくれw」
「ぐはぁ!」
社長の逆襲がクリティカルヒットした。
それにしても、今後どうするべきなのか……。僕は思索にふける。
ラーテル族は最強種族で猫族と犬族を押さえ込むことが出来るらしい。
猫族と犬族の対立を理由にして断わるという作戦は、ラーテル族の登場で破綻しつつある。
かと言ってラーテル族の嫁を断わるなんて怖いことも出来ない。
乗り気でないジェーン嬢の動向だけが唯一の希望だったのだが、家の柵の方が強いのか、同居はいつからかと打診して来た。
詰んだな。
そうなると後は僕の気持ち的な問題だけになってしまう。
美少女嫁なんて地球じゃ望んでも嫁いで来てもらえない。それが三人なんて贅沢な話だ。
生理的に無理とか性格が合わないとか、よっぽどの事がない限り、もう嫁にするしかなさそうだ。
もし地球に戻れたらどうするか。ケモミミ嫁とは宇宙で暮らせばいいのか?
なんだか受け入れる方向に気持ちも向かいそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
アノイ要塞に訪問者が来た。
帝国正規軍の来訪だ。
これはビギニ星系奪還作戦の軍だろうと地球人難民は期待に沸き立った。
コマンダー・サンダース他、三軍の長であるカプリース領軍司令ノア、グラウル領軍司令ハンター、小領地混成軍司令ジョンが宇宙港に並んで出迎える。
なぜか僕と神澤社長もジョンの後ろに立たされている。
この宇宙港は歓迎式典用の巨大格納庫だ。
本来なら搭乗チューブで繋げられ乗り降りするところを、エアロック内に艦を入れ直接タラップで乗り降りするのだ。
その格納庫には歓迎の人員を待機させるための隔壁が設けられている。
格納庫の扉が閉まり、空気が充填されると目の前の隔壁が開く。
その先に鎮座する一際目立つ戦艦にタラップが横付けする。
ハッチが開きそこから降り立ったのは、プリンスと同様の派手な装飾が着いた軍服の人物、生粋の帝国貴族だった。
「帝国正規軍第183艦隊司令、ギルバート伯爵に敬礼!」
コマンダー・サンダースの号令で全員が敬礼する。
僕達は帝国式の敬礼を知らないので見よう見まねで敬礼する。
右腕を右に張り出し、肘から先を逆L字に上げ、右の手のひらを相手に向ける。
なんか嫌な感じだ。僕たちは帝国軍の手下か?
「ん、ご苦労。地球人はどこだ。まだ難民だなんて言ってる奴らを俺が引き取りに来たぞ」
僕は帝国による地球人の扱いが変わった事を目の当たりにした。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
SIDE:アノイ要塞到着前 ギルバート伯爵
「お館様、今回の地球人の措置はどうされるのですか?」
ギルバート伯爵家の家臣が伯爵に尋ねる。
「あのお方から、全員貧民扱いなので奴隷化して良いと言われておる。
戦功勲章を貰った奴らもいるようだが、所詮市民扱い程度は不敬罪でも吹っ掛ければどうとでもなる。
とにかく対象は全員だ。借金でも何でも理由をつけて奴隷化する。
若い女は愛人にしてやろう。男共は戦争で使い潰せばいい」
伯爵が悪い顔をして答える。
「私どもにも女を回してくださいよ」
家臣もいつものことなのか頷き、下衆な顔をする。
「堅物の補佐官には言うなよ。やつはディッシュ伯の息子だ。面倒なことになる」
伯爵の裏の顔が曝け出される会話だった。
◇ ◇ ◇ ◆ ◆
ギルバート伯爵は開口一番、地球人にとって寝耳に水の台詞を吐いた。
「なぜ戦わん。いつまでも難民として温々していられる立場ではないとなぜ気付かん」
「伯爵、ここには該当する地球人はいない。
その有難い訓示は地球人を集めてからにして下さい」
演説を始めるギルバート伯爵をコマンダー・サンダースが制止する。
ギルバート伯爵は苦虫を噛み潰した顔をして迎賓館の貴賓室に向かった。
「社長、やっぱり戦いに出ていない地球人の立場が危ういみたいだ」
「プリンスは俺たちを被害者だと言っていたんだがな。
帝国本国の考えは違うようだな」
「嫁という立場で回避出来るかがポイントになるね」
「他の地球人にも勲章持ちの庇護下に入るように通達しておこう。
偽装だと念押ししてな」
僕達地球人2559人は自称自治会、反自治会派関係なく多目的ホールに集められた。
一応、神澤社長が通達を出しているけど、どれだけ真剣に捕らえてくれたかは不明だ。
演壇にギルバート伯爵と家臣、そして護衛騎士が立つ。
地球人の一部(主に自称自治会)は未だに状況を把握せず、帝国正規軍がビギニ星系奪還に来てくれたと思っているようで期待の目を向けている。
社長の通達を信じた反自治会派の人達は警戒している。
「地球人の諸君、私は帝国伯爵ガザン=ゼム=ギルバートだ。
貴様らの腐った性根を叩き直しに来た」
ギルバート伯爵の不穏な台詞に地球人達の顔が凍りつく。
「まず、除外対象者を発表する」
護衛騎士が帝国軍の補佐官だったようで伯爵の言葉を受けて説明を始める。
「わが帝国正規軍は戦いに赴かない者達を鍛え直しに来た。
つまりアノイ要塞に来て戦闘を経験した者達は除外する」
これにより反自治会派の1544人が除外された。
「続けて受勲者の配偶者も除外するので申請するように」
これにより反自治会派全2303人の残り759人が除外された。
社長の通達を信じて行動した結果だ。
今回の通達は自称自治会にも伝えてあったのに、彼らは頭がお花畑で信じていなかったようだ。
まあ、戦闘に不参加だったので叙勲された者がいないのだから当然といえば当然だが。
でも反自治会派の受勲者に庇護を求めれば良かった話ではある。
「残りの者達はなぜ戦わない。難民の立場に胡座をかくだけで地球へ帰還出来ると思っていたのか!」
「俺達はプリンスの庇護のもとに難民をやっている」
「そうだ、そうだ。プリンスが難民になったのは帝国のせいだって頭を下げたんだぞ!」
「プリンス? お前ら地球人の管理は既に帝国本国の手に渡っている。彼はもう関係ない!」
「そんな……」
ギルバート伯爵がキレ気味に言う。
自称自治会のやつらが断罪されるのはどうでも良かったんだが、それは僕らだって初耳だ。
プリンスのやつ、あれだけの事を言っておいて、その後の事は帝国に丸投げかよ。
僕だって愛さんとの問答の中で難民としての立場がいつまでも続かないと気付けなかったら危なかった。
だがプリンスの言っていたことが信用出来ないとなると、いろいろ考え直さないとならない。
あの洗脳事件の主犯が誰なのかも含めて。
「あなた方地球人は本日を持って難民としての立場を失う。
帝国4等戦功章持ちは一級市民扱い、帝国5等戦功章持ちは二級市民扱いになる。
また戦場に出た経験のあるその他の者と受勲者の配偶者は仮で二級市民扱いとする」
「では、除外されなかった俺達は……?」
補佐官の言葉に自称自治会の奴が恐る恐る聞く。
「貧民扱いだな。我々正規軍が庇護してやらなければならないな」
「そんな……」
ギルバート伯爵のその言い方は庇護とは名ばかりの奴隷に対する物言いだった。
「なんで俺達ばっかり! ふざけるな!」
自称自治会の連中が騒ぎ出す。
アホな自称自治会だとはいえ、あんまりな扱いだった。
その時、タブレットを操作していたギルバート伯爵が、こちらの方を向きニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
「ああ、忘れていた。
帝国に借金がある者も返すまでは貧民だ。お前も連れて行く」
僕の背中が凍りついた。
綾姫が指名されてしまった。
隣の補佐官がまたかという表情を浮かべて直ぐに消した。
何かある。
「それは今借金を返してもダメなのか? 彼女は僕の嫁なんだが。
だいたいこういった事は猶予期間を設けるもんだろ」
綾姫の危機に僕はつい口を出してしまった。
ギルバート伯爵が僕の方を睨みつける。
「私に落ち度があると言いたいのかね?」
「こちらは帝国の法を知らない。嘘をつかれてもわからない。
幸いサポートAIがいる。確認していいよな」
「黙れ! 伯爵の私を愚弄するのか!」
「何をそんなに焦っているんですか? 法を確認されたら困ることでも?」
「不敬罪だ! こいつを捕らえろ!」
「「「何すんだてめぇ」」」
傭兵さんたちも怒って暴れてしまう。
「地球人全員、不敬罪だ! 捕まえろ!」
伯爵の一言で僕ら地球人は全員逮捕されてしまった。
勲章は剥奪。全員が貧民に落とされた。
「彼らには裁判を受ける権利がある。
それに、そこのヤエガシ卿は帝国特等戦功章持ちの準貴族だ。
貴族資格のはく奪は出来ない。
勝手な処分はしないでください!」
護衛騎士の帝国軍補佐官が口をはさむ。
僕らはかろうじて裁判を受けさせてもらえるようだ。
むしろ彼女たちを保護するための建前として嫁という立場にするだけだと思っている。
今後、メンバーがどこぞの貴族に見初められて妾になれなんて事態になった時に「騎士爵家の嫁ですが何か?」と断わる口実になればいいのだ。
僕は地球帰還を諦めてはいない。
ビギニ星系が敵勢力に占領されて、SFOの配信も止まっているはずだ。
地球では、僕らSFOゲーマーは行方不明扱いになっていることだろう。
だが、もし地球に帰還出来るのなら、彼女達をアイドルとして戻してあげたい。
そのために彼女たちには指一本触れてはならないのだ。
「晶羅ー。何を考え事してるの?」
紗綾が僕の腕に抱きついて胸をギュウギュウ押し付けてくる。
いや、指一本触れては……。
「紗綾、離れて!
僕たちはまだ正式に結婚してないし、むしろ偽装結婚なんだからね?」
僕は離れたくないという本能を抑えて無理やり紗綾を突き放す。
「えーー。私は本気だよ?
今夜初夜を迎えてもいいんだぞ♡」
紗綾が頬を膨らませて拗ねる。
「それは地球に戻ったら取り返しがつかなくなるって。
まだ我慢しなさい!」
「えーー。つまんないの。
でもまだなんだ♡」
|紗綾(さーや》が何故か満足そうに離れて行く。
ハァハァ、紗綾、恐ろしい子……。
ところで、この背中の違和感は?
後ろを振り向くと、背中に美優が張り付いていた。
微かな膨らみが背中に当たっている。
「美優も……」
うん。がんばったね。美優。
でも地球に帰って淫行扱いは嫌だからね。3年待とうね。
とりあえず美優は癒やしなので、抱き着きはそのまま受け入れた。
「彼女達、ケモミミ押しかけ嫁をどうしようかね」
何気ない独り言だったのに、社長が答える。
「受け入れちまえ。若い美少女三人だぞ。
しかも合法なんだから、ハーレムだハーレム」
「社長、背後の柵は考慮してるの?」
「むしろ、アノイ要塞で生活して行くなら都合がいい。
そうだ、彼女達でアイドルユニットを作ろう。帝国で芸能活動だ!」
社長がアホな冗談を言って笑っている。
「人事だと思って……」
僕は苦笑いするしかなかった。
だがちょっと仕返しをしたくなった。
「社長も菜穂さんと沙也加さんの面倒は見てよ」
「ちょお前」
社長が僕の仕返しに焦る。
菜穂さんの事は満更でもないらしい。
「偽装結婚でいいから、身分を保証出来るようにしないと。
帝国4級戦功章持ちは一応一級市民相当らしいからさ」
どうせなら、社長にも手柄を立ててもらって騎士爵ぐらいにはなって欲しいところだ。
騎士爵になるには累計で20艦撃墜すればいいらしいので、社長はあと17艦というところだ。
撃墜王を狙わなければ25艦撃墜はいらないそうだ。
専用艦も直ったし、今後は間に合わせの巡洋艦よりは活躍出来るはずだ。
「やはり、いつまでも難民扱いはしてもらえないか……」
おそらく、このまま難民の地位に胡坐をかいていたら、そのうち梯子を外される。
獣人たちが二級市民から上に行けないように、ここはそれほど甘い世界じゃないはずだ。
「少なくとも、うちの事務所の五人の女性は守らないとね。
それに加えて社長はシューティングドリームの身元引受人でしょ?
彼女たちとハーレムだね」
「ああ、彼女たちも守ってやらないとな。
だが、帝国一級市民相当の俺では五人を守ることは出来ないだろう。
だから、おまえも何人か負担してくれw」
「ぐはぁ!」
社長の逆襲がクリティカルヒットした。
それにしても、今後どうするべきなのか……。僕は思索にふける。
ラーテル族は最強種族で猫族と犬族を押さえ込むことが出来るらしい。
猫族と犬族の対立を理由にして断わるという作戦は、ラーテル族の登場で破綻しつつある。
かと言ってラーテル族の嫁を断わるなんて怖いことも出来ない。
乗り気でないジェーン嬢の動向だけが唯一の希望だったのだが、家の柵の方が強いのか、同居はいつからかと打診して来た。
詰んだな。
そうなると後は僕の気持ち的な問題だけになってしまう。
美少女嫁なんて地球じゃ望んでも嫁いで来てもらえない。それが三人なんて贅沢な話だ。
生理的に無理とか性格が合わないとか、よっぽどの事がない限り、もう嫁にするしかなさそうだ。
もし地球に戻れたらどうするか。ケモミミ嫁とは宇宙で暮らせばいいのか?
なんだか受け入れる方向に気持ちも向かいそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
アノイ要塞に訪問者が来た。
帝国正規軍の来訪だ。
これはビギニ星系奪還作戦の軍だろうと地球人難民は期待に沸き立った。
コマンダー・サンダース他、三軍の長であるカプリース領軍司令ノア、グラウル領軍司令ハンター、小領地混成軍司令ジョンが宇宙港に並んで出迎える。
なぜか僕と神澤社長もジョンの後ろに立たされている。
この宇宙港は歓迎式典用の巨大格納庫だ。
本来なら搭乗チューブで繋げられ乗り降りするところを、エアロック内に艦を入れ直接タラップで乗り降りするのだ。
その格納庫には歓迎の人員を待機させるための隔壁が設けられている。
格納庫の扉が閉まり、空気が充填されると目の前の隔壁が開く。
その先に鎮座する一際目立つ戦艦にタラップが横付けする。
ハッチが開きそこから降り立ったのは、プリンスと同様の派手な装飾が着いた軍服の人物、生粋の帝国貴族だった。
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コマンダー・サンダースの号令で全員が敬礼する。
僕達は帝国式の敬礼を知らないので見よう見まねで敬礼する。
右腕を右に張り出し、肘から先を逆L字に上げ、右の手のひらを相手に向ける。
なんか嫌な感じだ。僕たちは帝国軍の手下か?
「ん、ご苦労。地球人はどこだ。まだ難民だなんて言ってる奴らを俺が引き取りに来たぞ」
僕は帝国による地球人の扱いが変わった事を目の当たりにした。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
SIDE:アノイ要塞到着前 ギルバート伯爵
「お館様、今回の地球人の措置はどうされるのですか?」
ギルバート伯爵家の家臣が伯爵に尋ねる。
「あのお方から、全員貧民扱いなので奴隷化して良いと言われておる。
戦功勲章を貰った奴らもいるようだが、所詮市民扱い程度は不敬罪でも吹っ掛ければどうとでもなる。
とにかく対象は全員だ。借金でも何でも理由をつけて奴隷化する。
若い女は愛人にしてやろう。男共は戦争で使い潰せばいい」
伯爵が悪い顔をして答える。
「私どもにも女を回してくださいよ」
家臣もいつものことなのか頷き、下衆な顔をする。
「堅物の補佐官には言うなよ。やつはディッシュ伯の息子だ。面倒なことになる」
伯爵の裏の顔が曝け出される会話だった。
◇ ◇ ◇ ◆ ◆
ギルバート伯爵は開口一番、地球人にとって寝耳に水の台詞を吐いた。
「なぜ戦わん。いつまでも難民として温々していられる立場ではないとなぜ気付かん」
「伯爵、ここには該当する地球人はいない。
その有難い訓示は地球人を集めてからにして下さい」
演説を始めるギルバート伯爵をコマンダー・サンダースが制止する。
ギルバート伯爵は苦虫を噛み潰した顔をして迎賓館の貴賓室に向かった。
「社長、やっぱり戦いに出ていない地球人の立場が危ういみたいだ」
「プリンスは俺たちを被害者だと言っていたんだがな。
帝国本国の考えは違うようだな」
「嫁という立場で回避出来るかがポイントになるね」
「他の地球人にも勲章持ちの庇護下に入るように通達しておこう。
偽装だと念押ししてな」
僕達地球人2559人は自称自治会、反自治会派関係なく多目的ホールに集められた。
一応、神澤社長が通達を出しているけど、どれだけ真剣に捕らえてくれたかは不明だ。
演壇にギルバート伯爵と家臣、そして護衛騎士が立つ。
地球人の一部(主に自称自治会)は未だに状況を把握せず、帝国正規軍がビギニ星系奪還に来てくれたと思っているようで期待の目を向けている。
社長の通達を信じた反自治会派の人達は警戒している。
「地球人の諸君、私は帝国伯爵ガザン=ゼム=ギルバートだ。
貴様らの腐った性根を叩き直しに来た」
ギルバート伯爵の不穏な台詞に地球人達の顔が凍りつく。
「まず、除外対象者を発表する」
護衛騎士が帝国軍の補佐官だったようで伯爵の言葉を受けて説明を始める。
「わが帝国正規軍は戦いに赴かない者達を鍛え直しに来た。
つまりアノイ要塞に来て戦闘を経験した者達は除外する」
これにより反自治会派の1544人が除外された。
「続けて受勲者の配偶者も除外するので申請するように」
これにより反自治会派全2303人の残り759人が除外された。
社長の通達を信じて行動した結果だ。
今回の通達は自称自治会にも伝えてあったのに、彼らは頭がお花畑で信じていなかったようだ。
まあ、戦闘に不参加だったので叙勲された者がいないのだから当然といえば当然だが。
でも反自治会派の受勲者に庇護を求めれば良かった話ではある。
「残りの者達はなぜ戦わない。難民の立場に胡座をかくだけで地球へ帰還出来ると思っていたのか!」
「俺達はプリンスの庇護のもとに難民をやっている」
「そうだ、そうだ。プリンスが難民になったのは帝国のせいだって頭を下げたんだぞ!」
「プリンス? お前ら地球人の管理は既に帝国本国の手に渡っている。彼はもう関係ない!」
「そんな……」
ギルバート伯爵がキレ気味に言う。
自称自治会のやつらが断罪されるのはどうでも良かったんだが、それは僕らだって初耳だ。
プリンスのやつ、あれだけの事を言っておいて、その後の事は帝国に丸投げかよ。
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「あなた方地球人は本日を持って難民としての立場を失う。
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また戦場に出た経験のあるその他の者と受勲者の配偶者は仮で二級市民扱いとする」
「では、除外されなかった俺達は……?」
補佐官の言葉に自称自治会の奴が恐る恐る聞く。
「貧民扱いだな。我々正規軍が庇護してやらなければならないな」
「そんな……」
ギルバート伯爵のその言い方は庇護とは名ばかりの奴隷に対する物言いだった。
「なんで俺達ばっかり! ふざけるな!」
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アホな自称自治会だとはいえ、あんまりな扱いだった。
その時、タブレットを操作していたギルバート伯爵が、こちらの方を向きニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
「ああ、忘れていた。
帝国に借金がある者も返すまでは貧民だ。お前も連れて行く」
僕の背中が凍りついた。
綾姫が指名されてしまった。
隣の補佐官がまたかという表情を浮かべて直ぐに消した。
何かある。
「それは今借金を返してもダメなのか? 彼女は僕の嫁なんだが。
だいたいこういった事は猶予期間を設けるもんだろ」
綾姫の危機に僕はつい口を出してしまった。
ギルバート伯爵が僕の方を睨みつける。
「私に落ち度があると言いたいのかね?」
「こちらは帝国の法を知らない。嘘をつかれてもわからない。
幸いサポートAIがいる。確認していいよな」
「黙れ! 伯爵の私を愚弄するのか!」
「何をそんなに焦っているんですか? 法を確認されたら困ることでも?」
「不敬罪だ! こいつを捕らえろ!」
「「「何すんだてめぇ」」」
傭兵さんたちも怒って暴れてしまう。
「地球人全員、不敬罪だ! 捕まえろ!」
伯爵の一言で僕ら地球人は全員逮捕されてしまった。
勲章は剥奪。全員が貧民に落とされた。
「彼らには裁判を受ける権利がある。
それに、そこのヤエガシ卿は帝国特等戦功章持ちの準貴族だ。
貴族資格のはく奪は出来ない。
勝手な処分はしないでください!」
護衛騎士の帝国軍補佐官が口をはさむ。
僕らはかろうじて裁判を受けさせてもらえるようだ。
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独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
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オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
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「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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