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【第6章】データに残らない選択肢
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ログは、存在しなかった。
ファイの端末にも、学園の記録にも、世界の進行履歴にも――ポテトの“選択”のデータは存在していなかった。
それは、意図された削除ではなく、最初から“記録不可能”というルールの外の出来事だった。
ファイはその事実を、数日後に知った。
「……ありえない」
彼女は、校舎裏の非常階段に座って、端末を凝視していた。
全ルート、再構築中。
全ヒロイン、行動再分岐。
エンディング候補、選出可能。
つまり――ポテトがいないだけで、物語が正常に“動き出している”。
「でも……彼の選択は、確かにあった。私、目の前で見たのに……」
ポテトは、世界に干渉する力を持ちながら、“データとして存在できない”。
それは、“存在の否定”ではなく――存在が“仕様外”であるということ。
その瞬間、校舎の陰から影が現れた。
「おい、またお前一人で意味深な顔してんな?」
ポテスピの煙と共に、ポテトが現れた。
「……君、まだいたの?」
「しらね。俺、ログに残んねぇ仕様になったっぽいわ。存在バグっていうより、記録外主人公って呼んで」
ファイはしばらく彼を見つめたあと、静かに言った。
「今、世界は再び動いてる。君が“いないことになった”ことで、ルートは正常化してる」
「じゃ、俺がまた“いることにすれば”、世界止まんじゃね?」
「……そう。でも、今度は誰も君を“認識できない”。」
「うわ、それ逆に最強じゃね?」
ポテトは、ポケットから古びたメモ帳を取り出した。
そこには、誰にも読まれることのない、“存在しなかったルート”の断片が手書きで並んでいた。
「俺のストーリー、記録されねぇなら……書いて残すしかないよな」
「その記録には、誰もアクセスできない」
「関係ねぇよ。“俺が見た”って事実があれば、世界なんてどうにでもなる」
ファイは、その強がりにも似た言葉に、微かに微笑んだ。
「君、誰にも知られないまま、世界を変えたのに……満足なの?」
ポテトはしばらく考え、こう言った。
「ガチレスすると……“誰にも知られないまま、存在証明できる男”って、かっこよくね?」
そして彼は、また煙を空へ吐いた。
誰にも見えない選択肢を、彼は“選び続ける”ことにしたのだった。
ポテトの存在は、“思い出せない”という形で世界に残り始めていた。
「なんかさ、昨日の放課後……誰かに話しかけられた気がするんだけど、思い出せないんだよね」
「え、それ私も。校門のとこで変な空気になったのは覚えてるのに、誰がいたのか全然……」
「やば……なんかそれって、バグ?」
そんな会話が、学園中に拡がり始めていた。
それは、“ポテトの残像”だった。
彼はそこに“いた”のに、記録されず、記憶にも残らず、でも――誰かの心には“違和感”という形で爪痕を刻んでいく。
ファイは、それを“確認できない現象”としてログに記すしかなかった。
《存在干渉:影響ログなし/記憶断片存在》
「ポテト……君はもう、“実体を持たない現象”として、この世界に干渉してる」
彼女はその異常性に、もはや観測者としての立場を保てなくなりつつあった。
そんなある日、ファイの端末に、奇妙な通知が届いた。
《ポテトルート:ver1.00 起動確認》
「……は?」
存在しないはずのデータファイル。
誰にも書かれていない、開かれた覚えのないルートファイル。
彼女が恐る恐る開くと、そこにはこう書かれていた。
“誰にも選ばれなかった主人公が、誰にも知られないまま、世界の全ヒロインを未決にした物語”
――選択肢:
誰にも知られないまま終わる
誰にも知られないまま続ける
ファイは端末を閉じ、青ざめた表情でつぶやいた。
「……これは、君が書いた物語じゃない。
でも、君にしか選べないエンディングだ」
そして、その夜。
公園のベンチに腰かけるファイの隣に、ポテトは“突然現れた”。
「正直言っていい? お前が気づいた時点で、もう俺、勝ちなんだよな」
ファイは言葉を失った。
ポテトは、誰にも見えないままに、“世界に最も干渉している男”として、新たなルートを静かに歩き出していた。
ファイの端末にも、学園の記録にも、世界の進行履歴にも――ポテトの“選択”のデータは存在していなかった。
それは、意図された削除ではなく、最初から“記録不可能”というルールの外の出来事だった。
ファイはその事実を、数日後に知った。
「……ありえない」
彼女は、校舎裏の非常階段に座って、端末を凝視していた。
全ルート、再構築中。
全ヒロイン、行動再分岐。
エンディング候補、選出可能。
つまり――ポテトがいないだけで、物語が正常に“動き出している”。
「でも……彼の選択は、確かにあった。私、目の前で見たのに……」
ポテトは、世界に干渉する力を持ちながら、“データとして存在できない”。
それは、“存在の否定”ではなく――存在が“仕様外”であるということ。
その瞬間、校舎の陰から影が現れた。
「おい、またお前一人で意味深な顔してんな?」
ポテスピの煙と共に、ポテトが現れた。
「……君、まだいたの?」
「しらね。俺、ログに残んねぇ仕様になったっぽいわ。存在バグっていうより、記録外主人公って呼んで」
ファイはしばらく彼を見つめたあと、静かに言った。
「今、世界は再び動いてる。君が“いないことになった”ことで、ルートは正常化してる」
「じゃ、俺がまた“いることにすれば”、世界止まんじゃね?」
「……そう。でも、今度は誰も君を“認識できない”。」
「うわ、それ逆に最強じゃね?」
ポテトは、ポケットから古びたメモ帳を取り出した。
そこには、誰にも読まれることのない、“存在しなかったルート”の断片が手書きで並んでいた。
「俺のストーリー、記録されねぇなら……書いて残すしかないよな」
「その記録には、誰もアクセスできない」
「関係ねぇよ。“俺が見た”って事実があれば、世界なんてどうにでもなる」
ファイは、その強がりにも似た言葉に、微かに微笑んだ。
「君、誰にも知られないまま、世界を変えたのに……満足なの?」
ポテトはしばらく考え、こう言った。
「ガチレスすると……“誰にも知られないまま、存在証明できる男”って、かっこよくね?」
そして彼は、また煙を空へ吐いた。
誰にも見えない選択肢を、彼は“選び続ける”ことにしたのだった。
ポテトの存在は、“思い出せない”という形で世界に残り始めていた。
「なんかさ、昨日の放課後……誰かに話しかけられた気がするんだけど、思い出せないんだよね」
「え、それ私も。校門のとこで変な空気になったのは覚えてるのに、誰がいたのか全然……」
「やば……なんかそれって、バグ?」
そんな会話が、学園中に拡がり始めていた。
それは、“ポテトの残像”だった。
彼はそこに“いた”のに、記録されず、記憶にも残らず、でも――誰かの心には“違和感”という形で爪痕を刻んでいく。
ファイは、それを“確認できない現象”としてログに記すしかなかった。
《存在干渉:影響ログなし/記憶断片存在》
「ポテト……君はもう、“実体を持たない現象”として、この世界に干渉してる」
彼女はその異常性に、もはや観測者としての立場を保てなくなりつつあった。
そんなある日、ファイの端末に、奇妙な通知が届いた。
《ポテトルート:ver1.00 起動確認》
「……は?」
存在しないはずのデータファイル。
誰にも書かれていない、開かれた覚えのないルートファイル。
彼女が恐る恐る開くと、そこにはこう書かれていた。
“誰にも選ばれなかった主人公が、誰にも知られないまま、世界の全ヒロインを未決にした物語”
――選択肢:
誰にも知られないまま終わる
誰にも知られないまま続ける
ファイは端末を閉じ、青ざめた表情でつぶやいた。
「……これは、君が書いた物語じゃない。
でも、君にしか選べないエンディングだ」
そして、その夜。
公園のベンチに腰かけるファイの隣に、ポテトは“突然現れた”。
「正直言っていい? お前が気づいた時点で、もう俺、勝ちなんだよな」
ファイは言葉を失った。
ポテトは、誰にも見えないままに、“世界に最も干渉している男”として、新たなルートを静かに歩き出していた。
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