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二章 これまでの事、これからの事
1 それからの事
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入学初日という事もあり、新しい出会いも多かった一日ではあったのだが、トータルで見れば今日使った脳のリソースの殆どが渚の事だったと言って過言ではないと思う。
それ位、ずっと渚の事を考えていた気がする。
形は違えどそれなりの人数の生徒にとってもそうだったんじゃないかなと思う。
あれから入学初日のイベントを一通り熟すまでの間、何度も何度も今朝の俺やマコっちゃん達が渚の変化を知った時と同じような光景が繰り返された。
……ありがたい事に繰り返されたと言うべきなのかもしれない。
少なくとも俺が見ている限りでは分かりやすいトラブルは起きないでくれていて、文字通り俺やマコっちゃん達の時と同じような平和的な流れで事が進んでくれていたから。
……とはいえあくまで俺の見ている範囲での話なのだけれど。
「ごめん、終わったら戻って来るから待っててよ」
「おう、待ってる。待ってるけど……あんまり無理すんなよ」
「うん」
「場合によっては私が仲裁に入りますんで」
諸々の事を終えて放課後渚はどうやら別のクラスで……同じ中学だった女子に呼ばれているらしく、その女子と話をしに行く事になっているらしかった。
で、橋本がその付き添いだ。
皆が居る前で色々なリアクションを見せた連中はともかく、改めてこうして呼び出して話となれば良くも悪くもこれまで通りの類いの話ではないのだろう。
……良くも悪くも。
そして放課後の教室から出て行く二人を見送る俺に、隣で机に座っていた居たマコっちゃんが聞いて来る。
「着いて行かなくていいのか?」
「提案したけど渚に俺は来るなって言われたしな」
「その上で聞いてんだけど」
「まあ駄目だろ、それは。心配だけどさ」
小さく溜息を吐いてから俺は言う。
「もし嫌がらせとかなら全力で止めるけど、渚曰くそういうのじゃないっぽいって事だからさ。それ信じたら……そこから先の話に俺は異物でしかねえ」
一人や二人位、こういう事になってもおかしくはないと思っていた。
寧ろならない方がおかしいまである。
そしてそれが悪意で向かってこられた物で無いのだとしたら……それは出来る限り相手にも配慮した形で落としどころを見付けないといけないと思う。
誰が悪いとかそういう話じゃなくて……ただ仕方が無い事として。
だとしたらそこに俺が着いて行くのは違うと思う。
来なくていいと言った渚がそれでも来て欲しいと言わざるを得ないような状況にでもならなければ。
「ちゃんとそこに居るべき奴らだけで決着を付けるべきだ」
「ま、相手も言いたい事言えなくなるかもしれねえわな、用心棒みてえに男子に後ろ立たれるとよ」
「そういう事……いや心配ではあるんだけどさ」
「まあ美紀が着いて行ってるから最悪な事にはならねえだろうよ。アイツ大人しいけど爆発力はあるからな。多分着いて行っても相手は萎縮しないだろうし、いざとなったらどうにでもしてくれる」
「心強いよ。ていうか俺の知らない橋本情報出て来たな。その爆発力云々は俺知らねえんだけど……何かあった?」
「春休みに一度喧嘩したんだが殺されるかと思った。ちなみに俺が悪い」
「何やったんだ」
「黙秘。もうしません」
「なんか知らねえけどもうするなよ」
コイツらの春休みの事はともかくとして。
「……なあマコっちゃんよ」
「どした?」
「此処で着いて行かねえの、男として冷たいと思うか?」
渚の考えだとか相手の事だとか、そんなのを無視して行くべきだったのだろうか。
それに対してマコっちゃんは言う。
「んなもん受け取り手次第だろ。お前が秋瀬の考えをちゃんと汲んで此処に残ったんなら、多分お前らの中じゃそれが正解な筈だ」
「そうか。ありがと」
「でも後でちゃんと愚痴は聞いてやれよ。それは間違いなくお前の仕事だ」
「分かってるよ」
「なら良い」
そう言って一拍空けた後、マコっちゃんは言う。
「じゃあアイツらが今向き合ってる事はしかるべきタイミングで考えるとして……俺達はもっと大きな事を考えようじゃねえか」
「大きな事?」
「まあざっくり言えば秋瀬の家の話だな」
「……それは本人が話せないって言ってたから、踏み込まねえようにする方針だったんだけど」
「俺達の中で考えるだけなら良いだろ。やっぱ気になるというかおかしいんだよな」
「時代錯誤って事か?」
「その時代錯誤が罷り通ってる事だ。アイツの家やアイツを取り巻く人間関係を通り越してだ」
そしてマコっちゃんは言う。
これまであくまで渚個人やその周囲の事を中心に考えていたが故に及ばなかった、冷静に考えれば大きすぎる疑問となる話を。
「滅茶苦茶にも程がある秋瀬家の事情に、どうして世の中が順応してるのかって話。例えば多分書類上も男子として扱ってた筈の小中学校とかな」
これまでどうやって男として振る舞えていたのか。
不思議な力を使ったという物理的な手段よりももっと外側の話を。
それ位、ずっと渚の事を考えていた気がする。
形は違えどそれなりの人数の生徒にとってもそうだったんじゃないかなと思う。
あれから入学初日のイベントを一通り熟すまでの間、何度も何度も今朝の俺やマコっちゃん達が渚の変化を知った時と同じような光景が繰り返された。
……ありがたい事に繰り返されたと言うべきなのかもしれない。
少なくとも俺が見ている限りでは分かりやすいトラブルは起きないでくれていて、文字通り俺やマコっちゃん達の時と同じような平和的な流れで事が進んでくれていたから。
……とはいえあくまで俺の見ている範囲での話なのだけれど。
「ごめん、終わったら戻って来るから待っててよ」
「おう、待ってる。待ってるけど……あんまり無理すんなよ」
「うん」
「場合によっては私が仲裁に入りますんで」
諸々の事を終えて放課後渚はどうやら別のクラスで……同じ中学だった女子に呼ばれているらしく、その女子と話をしに行く事になっているらしかった。
で、橋本がその付き添いだ。
皆が居る前で色々なリアクションを見せた連中はともかく、改めてこうして呼び出して話となれば良くも悪くもこれまで通りの類いの話ではないのだろう。
……良くも悪くも。
そして放課後の教室から出て行く二人を見送る俺に、隣で机に座っていた居たマコっちゃんが聞いて来る。
「着いて行かなくていいのか?」
「提案したけど渚に俺は来るなって言われたしな」
「その上で聞いてんだけど」
「まあ駄目だろ、それは。心配だけどさ」
小さく溜息を吐いてから俺は言う。
「もし嫌がらせとかなら全力で止めるけど、渚曰くそういうのじゃないっぽいって事だからさ。それ信じたら……そこから先の話に俺は異物でしかねえ」
一人や二人位、こういう事になってもおかしくはないと思っていた。
寧ろならない方がおかしいまである。
そしてそれが悪意で向かってこられた物で無いのだとしたら……それは出来る限り相手にも配慮した形で落としどころを見付けないといけないと思う。
誰が悪いとかそういう話じゃなくて……ただ仕方が無い事として。
だとしたらそこに俺が着いて行くのは違うと思う。
来なくていいと言った渚がそれでも来て欲しいと言わざるを得ないような状況にでもならなければ。
「ちゃんとそこに居るべき奴らだけで決着を付けるべきだ」
「ま、相手も言いたい事言えなくなるかもしれねえわな、用心棒みてえに男子に後ろ立たれるとよ」
「そういう事……いや心配ではあるんだけどさ」
「まあ美紀が着いて行ってるから最悪な事にはならねえだろうよ。アイツ大人しいけど爆発力はあるからな。多分着いて行っても相手は萎縮しないだろうし、いざとなったらどうにでもしてくれる」
「心強いよ。ていうか俺の知らない橋本情報出て来たな。その爆発力云々は俺知らねえんだけど……何かあった?」
「春休みに一度喧嘩したんだが殺されるかと思った。ちなみに俺が悪い」
「何やったんだ」
「黙秘。もうしません」
「なんか知らねえけどもうするなよ」
コイツらの春休みの事はともかくとして。
「……なあマコっちゃんよ」
「どした?」
「此処で着いて行かねえの、男として冷たいと思うか?」
渚の考えだとか相手の事だとか、そんなのを無視して行くべきだったのだろうか。
それに対してマコっちゃんは言う。
「んなもん受け取り手次第だろ。お前が秋瀬の考えをちゃんと汲んで此処に残ったんなら、多分お前らの中じゃそれが正解な筈だ」
「そうか。ありがと」
「でも後でちゃんと愚痴は聞いてやれよ。それは間違いなくお前の仕事だ」
「分かってるよ」
「なら良い」
そう言って一拍空けた後、マコっちゃんは言う。
「じゃあアイツらが今向き合ってる事はしかるべきタイミングで考えるとして……俺達はもっと大きな事を考えようじゃねえか」
「大きな事?」
「まあざっくり言えば秋瀬の家の話だな」
「……それは本人が話せないって言ってたから、踏み込まねえようにする方針だったんだけど」
「俺達の中で考えるだけなら良いだろ。やっぱ気になるというかおかしいんだよな」
「時代錯誤って事か?」
「その時代錯誤が罷り通ってる事だ。アイツの家やアイツを取り巻く人間関係を通り越してだ」
そしてマコっちゃんは言う。
これまであくまで渚個人やその周囲の事を中心に考えていたが故に及ばなかった、冷静に考えれば大きすぎる疑問となる話を。
「滅茶苦茶にも程がある秋瀬家の事情に、どうして世の中が順応してるのかって話。例えば多分書類上も男子として扱ってた筈の小中学校とかな」
これまでどうやって男として振る舞えていたのか。
不思議な力を使ったという物理的な手段よりももっと外側の話を。
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