ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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二章 ごく当たり前の日常を掴む為に

8 いざ草原へ

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 そして俺とアリサは軽くアイテムを買い揃えてから出発した。
 向かう先は東の草原。俺がソロの時に何度も訪れた場所である。
 多分それはアリサも同じなのではないだろうか。
 アリサは強いし、ソロで上のランクの依頼を受けられるだけと実力は間違いなくあるだろうけど、それでも実績を積めることはなかったと思うから。

「……大丈夫ですかね、その子」

「分からねえ。分からねえけど急いだ方がいいな」

 道中、アリサとそんな会話を交わす。
 正直初心者の魔術じゃ魔獣相手には歯が立たないと思う。分かるもん勉強したから。
 ……しかしだ。

「しかしアリサ、その子の事凄い心配すんのな」

「……なんか状況に凄い親近感を感じましてね」

 まあ予想通りそんな所か。
 ……しかしまあ、それを聞いてるとアリサは本当に性格が良いのだろう。
 そしてアリサは言う。

「ボク自身が同じような目にあって、本当に辛くて、誰かに助けてほしくて……そう思ってましたから。そんなの心配しない訳ないじゃないですか……助けない訳にいかないじゃないですか」

 ……それを聞くとアリサは本当に優しい奴なのだと思う。
 多分いるだろう。自分が不幸なら他の奴も皆不幸になればいいとか思う奴も。助けたいって思えない奴も。そんな破滅的な考えを持っている人間は少なからずいる筈だ。
 だけどアリサは。誰よりも不幸なアリサは違う。
 違うからこそ、巻き込みたくなくて極力誰とも接さない生き方をしている。
 違うからこそ、こうして真剣に赤の他人を心配している。

 ……本当に、よく性格がねじ曲がらないで今日まで生きてきたと思うよ。
 何がアリサをそうさせたのだろうか?
 まあ本人が根っこかからいい奴ってのも勿論あるとは思うけど、後はご両親の教育……とかだろうか?

 ……もっともその辺りには触れていないから分からないけれど。
 ……触れてはならない領域の話だと思うから、触れようとは思わないけれど。

「そうだな、絶対助けないと駄目だ」

「はい、絶対助けましょう」

 そう言ってアリサは真剣な面持ちを見せる。
 ……ああそうだ、絶対に助けないといけない。
 当然単純にあの時の女の子を死なせない為にという理由もある。
 だけど……アリサがこんななのに、それで失敗しました。もう手遅れでしたなんて、そんなのは無いだろって思うから。
 ……だから頼む、無事でいてくれよ。

 そう願いながら俺達は東の草原へと急いだ。



 やがて俺達は東の草原へと辿り着いた。

「なんだか久しぶりに来た気がするな」

「そういえばクルージさんはしばらく別のパーティーで上のランクの依頼を熟していたんですよね?」

「ああ。だからまあ、来るの実際久しぶりだわ」

 まあ久しぶりといってもそこまで時間が経ってはいないのだろうけど、此処に来なくなってから色んな事があったから余計にそう感じるのかもしれない。
 ……まあとにかくだ。

「さて、とりあえず探さねえとな。えーっと、あの子の名前なんて言ったっけ?」

「リーナさんですね。あ……いや、ちょっと待ってください。うーん」

 アリサが何かに悩むようにそう言う。
 何に悩んでるのだろう。今アリサが名前を言ったおかげで、俺もああ名前はリーナだって思いだせた訳で、つまりは名前はリーナで間違いない筈だ。
 それ以外に悩む所ある?
 そして中々答えを出せないでいるみたいなので、アリサに聞いてみた。

「どうした?」

「あ、いや。さっき写真と一緒にこの子の情報を教えてもらったじゃないですか」

「教えてもらったな」

「14才って言ってましたし……だとしたら同い年なんですよね、ボク達」

「あ、そうなんだ」

 小柄だとは思ってたけど、アリサ俺の二つ下か。年上ではないと思っていたけどなるほどなるほど。
 ……まあそれはいい。

「で、それがどうしたんだ?」

「えーっと、まあ同い年な訳なんですけど、この場合リーナさんでいいんですかね?」

「……ああ、そういう」

 割とどうでもいい悩みだった。
 ……とは思ったけど、これもアレか。人付き合いの少なさからくる奴か。
 
「別にどっちでもいいだろ。別に同い年相手にさん付けてもおかしくないし、同い年だから呼び捨てでもいい訳で。お前がしっくり来る方でいいんじゃねえの? 目上の相手ならともかく、同い年ならそれでいいだろ」

「しっくりくる方……だったらリーナさん、ですかね?」

「じゃあそれでいいんだろ。これで後で少し話してなんか違うなって思ったら変えりゃいいんだ。例えば距離感変わった時とかさ」

「距離感……ですか」

 そして一拍空けた後、少し恥ずかしそうに小さな声でアリサは言う。

「……クルージ」

「……」

「……」

「……」

「……忘れてください」

「……おう」

 ……なんかすげえ違和感。でもあんまり悪い気はしねえ。

「あ、クルージさん! モンスター! モンスターいますよ!」

 アリサが誤魔化す様にそう言う。
 言われてそちらに視線を向けると……そこにいたのは最弱のモンスター。

 東の草原の代名詞とも言えるスライムである。
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