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三章 人間という生き物の本質
79 魔術の雨
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「うわッ!」
雨のように降り注ぐ魔術攻撃を辛うじて躱す。
横に跳び躱した後、つい数秒前まで俺が立っていた場所は攻撃の衝撃により大きく陥没していて、生身の肉体に喰らったらただでは済まないと嫌でも察する事が出来て血の気が引く。
そして視界の端には俺と同じようになんとか攻撃を躱すグレンと、結果的に運良く攻撃があまり直撃する軌道で飛んでこず、飛んできた魔術を結界で防ぐリーナが見える。
……結論だけを言えば、リーナの結界はグレンが評したように、それなりの強度を誇っているらしい。
「……ッ!」
直撃の軌道の一撃を防ぎきった。
たった一撃で相殺するように粉々に砕けてしまったけど。
そして丁度リーナの結界が砕けた所で魔術の雨が止む。
……だけど分かってる。これで終わりでは無い事位。
この空白の時間が次の攻撃へと移るまでのウエイトでしか無い事位。
そして次の瞬間ある意味退路を潰すように、俺達が通ってきた道から仮面が現れる。
先に現れた、明らかに最初に戦った連中とは格が違う二人と同じく、青いトカゲを胸に刻んだ仮面が。
「……次はもっと目で見てしっかりと狙おう」
そしてそう言いながら仮面の周囲に無数の光の球体が出現しはじめる。
さっき上空から雨のように降り注いだ術式。
「させるかぁッ!」
動きを止めさせる為に、ずっと刀に纏わせたままだった風を斬撃として打ち放つ……だが。
「……ッ」
自身の周囲に光の球体を増やしながら、あっさりとこちらの斬撃を躱す。
その動きは軽い。それを見ただけで向こうが動けるタイプの魔術師だと分かってしまう。
そして軽く躱したその先に、その軽さと同じかそれ以上の力を持った攻撃が待っている。
……どうする、突っ込むか? 突っ込んで今の俺で攻撃を当てられるのか? 間に合うのか? 軽率に突っ込むのは投身自殺と変わらないんじゃないか?
だけど次は向こうも真剣に当てに来る。ただでさえさっきの攻撃で全員無傷なのはかなり運が良かったと言わざるを得ないんだ。今の俺にはもう一度その運を掴みとるのは難しくて、多分それ程運が絡んでこない。だから潰せるなら早急に潰さねえと。
……でも、どうする?
そんな事を考えていた時。多分こちらから攻めに転じても間に合わない。ただ距離を詰めて躱すのが困難になっていただけであろうタイミングで男は言う。
「装填完了」
攻撃の準備が出来た。そんな合図を。
「……ッ!」
その瞬間、真っ先に動き出したのはリーナだった。
リーナは仮面の魔術師から視線を外し、必死の形相で一目散に俺の方へと走ってくる。
明らかに普段の動きの素早さを超えた……逃避スキルを発動させた状態で。
「リーナ!?」
「一旦此処は引くっすよ!」
そう言ってほぼ一瞬で俺達二人を両脇に抱えてリーナが全速力でその場から……神樹の森の外へ出る方向には仮面の魔術師がいるので結果的に奥に入っていく形で走り出す。
「お、おいリーナ!」
困惑するようにグレンもそう言うが、リーナは叫ぶ。
「多分真正面から戦ったら私達じゃ勝てないっす! 一旦此処は逃げないと!」
「でもお前、逃げるっつったってジリ貧だぞこんなの!」
「分かってるっすよそんな事!」
俺がそう言っている内に仮面の魔術師が動く。
殺傷能力のある無数の魔術の球体を放ちながら、自身もこちらのとの距離を詰める為に走り出す。
逃避スキルの恩恵を受けて身体能力が大幅に向上しているリーナにはやや劣る。だがそれでも俺やグレンより遥かに早い速度で。
例えば魔術攻撃でこちらのリーナの動きを制限できれば十分に喰らいつける速度で。
そして今度の攻撃は上空から雨のように降らせるといった、ある意味単純と呼べるような攻撃ではない。
「……ッ!」
俺達と魔術の球体を視認して、一つ一つの魔術の弾道を調整。
リーナの逃走速度よりも早い魔術攻撃がそれぞれ動きを変え、正面や上空、後方左右。四方八方から逃げ道を無くすように飛んで来る。
それでも立ち止る事無く僅かな隙間を掻い潜るようにリーナは走る。
そして言う。
「先輩の言う通りジリ貧っす! だから二人でなんか考えてくんないっすか!? あのヤバイ奴なんとかして、アリサちゃんと合流して此処から逃げる方法!」
雨のように降り注ぐ魔術攻撃を辛うじて躱す。
横に跳び躱した後、つい数秒前まで俺が立っていた場所は攻撃の衝撃により大きく陥没していて、生身の肉体に喰らったらただでは済まないと嫌でも察する事が出来て血の気が引く。
そして視界の端には俺と同じようになんとか攻撃を躱すグレンと、結果的に運良く攻撃があまり直撃する軌道で飛んでこず、飛んできた魔術を結界で防ぐリーナが見える。
……結論だけを言えば、リーナの結界はグレンが評したように、それなりの強度を誇っているらしい。
「……ッ!」
直撃の軌道の一撃を防ぎきった。
たった一撃で相殺するように粉々に砕けてしまったけど。
そして丁度リーナの結界が砕けた所で魔術の雨が止む。
……だけど分かってる。これで終わりでは無い事位。
この空白の時間が次の攻撃へと移るまでのウエイトでしか無い事位。
そして次の瞬間ある意味退路を潰すように、俺達が通ってきた道から仮面が現れる。
先に現れた、明らかに最初に戦った連中とは格が違う二人と同じく、青いトカゲを胸に刻んだ仮面が。
「……次はもっと目で見てしっかりと狙おう」
そしてそう言いながら仮面の周囲に無数の光の球体が出現しはじめる。
さっき上空から雨のように降り注いだ術式。
「させるかぁッ!」
動きを止めさせる為に、ずっと刀に纏わせたままだった風を斬撃として打ち放つ……だが。
「……ッ」
自身の周囲に光の球体を増やしながら、あっさりとこちらの斬撃を躱す。
その動きは軽い。それを見ただけで向こうが動けるタイプの魔術師だと分かってしまう。
そして軽く躱したその先に、その軽さと同じかそれ以上の力を持った攻撃が待っている。
……どうする、突っ込むか? 突っ込んで今の俺で攻撃を当てられるのか? 間に合うのか? 軽率に突っ込むのは投身自殺と変わらないんじゃないか?
だけど次は向こうも真剣に当てに来る。ただでさえさっきの攻撃で全員無傷なのはかなり運が良かったと言わざるを得ないんだ。今の俺にはもう一度その運を掴みとるのは難しくて、多分それ程運が絡んでこない。だから潰せるなら早急に潰さねえと。
……でも、どうする?
そんな事を考えていた時。多分こちらから攻めに転じても間に合わない。ただ距離を詰めて躱すのが困難になっていただけであろうタイミングで男は言う。
「装填完了」
攻撃の準備が出来た。そんな合図を。
「……ッ!」
その瞬間、真っ先に動き出したのはリーナだった。
リーナは仮面の魔術師から視線を外し、必死の形相で一目散に俺の方へと走ってくる。
明らかに普段の動きの素早さを超えた……逃避スキルを発動させた状態で。
「リーナ!?」
「一旦此処は引くっすよ!」
そう言ってほぼ一瞬で俺達二人を両脇に抱えてリーナが全速力でその場から……神樹の森の外へ出る方向には仮面の魔術師がいるので結果的に奥に入っていく形で走り出す。
「お、おいリーナ!」
困惑するようにグレンもそう言うが、リーナは叫ぶ。
「多分真正面から戦ったら私達じゃ勝てないっす! 一旦此処は逃げないと!」
「でもお前、逃げるっつったってジリ貧だぞこんなの!」
「分かってるっすよそんな事!」
俺がそう言っている内に仮面の魔術師が動く。
殺傷能力のある無数の魔術の球体を放ちながら、自身もこちらのとの距離を詰める為に走り出す。
逃避スキルの恩恵を受けて身体能力が大幅に向上しているリーナにはやや劣る。だがそれでも俺やグレンより遥かに早い速度で。
例えば魔術攻撃でこちらのリーナの動きを制限できれば十分に喰らいつける速度で。
そして今度の攻撃は上空から雨のように降らせるといった、ある意味単純と呼べるような攻撃ではない。
「……ッ!」
俺達と魔術の球体を視認して、一つ一つの魔術の弾道を調整。
リーナの逃走速度よりも早い魔術攻撃がそれぞれ動きを変え、正面や上空、後方左右。四方八方から逃げ道を無くすように飛んで来る。
それでも立ち止る事無く僅かな隙間を掻い潜るようにリーナは走る。
そして言う。
「先輩の言う通りジリ貧っす! だから二人でなんか考えてくんないっすか!? あのヤバイ奴なんとかして、アリサちゃんと合流して此処から逃げる方法!」
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