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1-2 彼女が世界に馴染めるように
7 安堵
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篠原の言葉に周囲のウィザードは静かに武器を降ろす。
それはきっと、この場に居る全員が篠原に全てを託した事を意味しているようだった。
そしてそんな篠原に対し、ユイが反応する。
「お主は、鉄平の家に来ていた……」
言われた通り恐る恐るという風に顔を上げたユイの言葉に、篠原は答える。
「篠原圭一郎。異界管理局北陸第一支部所属の……なんて言っても分からないか。分かりやすく言えばキミを殺す為に動いていた黒いスーツを着ていた人達のリーダーだと思ってくれればいいよ」
玄関先で鉄平と口論していた時とも、直前に部下に労いの言葉を向けていた時とも違う。どこか柔らかく、子供を相手にするような口調で篠原は続ける。
「キミに一つ質問をさせて欲しい」
「……質問?」
「キミが今自分の命を顧みずに庇おうとしている杉浦さんは、今のキミが無害だと主張していた訳だが……実際どうだい?」
「……」
「もしこの世界の侵略が実現可能なのだとしたら、キミはそうしたいと思うか?」
(なんだ……今更そんな事を聞いて……)
流石に理解できる。
ウィザード側の立場として、それを聞いて得られる回答には何の価値も無い事位。
ユイが何を言った所で、立場上そこに信憑性を見出す事が出来ないという事は、既に一度口論を交わして理解している。
だからこそ、この戦いに発展したのだ。
それでも篠原は問いかけた。
この場のウィザードの代表として、銃も向けずに問いかけて来た。
そこにどんな意図が有ったのかは分からない。
分からないが、今の自分にはこれ以上状況を変える一石を投じる事は出来ないから。
聞かれた事の回答を、ユイが自分で考え言葉を紡いだ。
「信じて貰おうとは思わないが、今のワシにこの世界を貶めるつもりは無い。なんで最初にこの世界を征服しようと考えていたのかも良く分からないからの」
「……」
「とにかくそんな事をする意味も分からないし……それに、鉄平に迷惑を掛けたくないから。やりたいかやりたくないかで言われたら、やりたくないのじゃ」
「……そうか」
篠原はその言葉を聞いて。
それから僅かに俯いて、静かに静かに考えを纏めるように黙り込んで。
そんなしばしの長考の後、やがて彼は答えた。
「なら俺達がキミやキミを守ろうとした杉浦さんと戦う理由は無いな。これで戦いは終わりだ」
その言葉に周囲のウィザードが困惑するようにざわつきだす。
そして困惑しているのは鉄平も同じだった
(何言ってんだ……この人は)
当然、喜ばしい状況だ。
言っている事が本当なのだとすれば、本当に喜ばしい。
だがあれだけ疑い深かった男の決定が、こんな程度の問答で揺らぐものなのかと。
こんなに簡単に手の平を返すのかと。
一体何を考えているのだと。
こちらの理想の展開に限りなく近づいている筈なのに、その疑念が脳内をぐるぐるとループしている。
だけどそれでも難しい事を考えなければ、表面上はユイが殺されるような状況から脱したように思えるから。
(いや、まあ……いいか、とりあえず)
今はそれで良いと思った。
それ以上の何かは。それ以外の何かは現状力も交渉力も何もかも足りていない鉄平では与えてやれない事ばかりだから。
そして、あまり難しい事を考える余裕も無かったから。
(ユイが死ななきゃ……それで)
緊張の糸が切れたように、ただでさえ限界寸前だった体により力が入らなくなる。
意識も徐々に掠れていって。
何が何だか良く分からないまま。
それでもどこか安堵だけしながら、鉄平の意識はブラックアウトしていった。
それはきっと、この場に居る全員が篠原に全てを託した事を意味しているようだった。
そしてそんな篠原に対し、ユイが反応する。
「お主は、鉄平の家に来ていた……」
言われた通り恐る恐るという風に顔を上げたユイの言葉に、篠原は答える。
「篠原圭一郎。異界管理局北陸第一支部所属の……なんて言っても分からないか。分かりやすく言えばキミを殺す為に動いていた黒いスーツを着ていた人達のリーダーだと思ってくれればいいよ」
玄関先で鉄平と口論していた時とも、直前に部下に労いの言葉を向けていた時とも違う。どこか柔らかく、子供を相手にするような口調で篠原は続ける。
「キミに一つ質問をさせて欲しい」
「……質問?」
「キミが今自分の命を顧みずに庇おうとしている杉浦さんは、今のキミが無害だと主張していた訳だが……実際どうだい?」
「……」
「もしこの世界の侵略が実現可能なのだとしたら、キミはそうしたいと思うか?」
(なんだ……今更そんな事を聞いて……)
流石に理解できる。
ウィザード側の立場として、それを聞いて得られる回答には何の価値も無い事位。
ユイが何を言った所で、立場上そこに信憑性を見出す事が出来ないという事は、既に一度口論を交わして理解している。
だからこそ、この戦いに発展したのだ。
それでも篠原は問いかけた。
この場のウィザードの代表として、銃も向けずに問いかけて来た。
そこにどんな意図が有ったのかは分からない。
分からないが、今の自分にはこれ以上状況を変える一石を投じる事は出来ないから。
聞かれた事の回答を、ユイが自分で考え言葉を紡いだ。
「信じて貰おうとは思わないが、今のワシにこの世界を貶めるつもりは無い。なんで最初にこの世界を征服しようと考えていたのかも良く分からないからの」
「……」
「とにかくそんな事をする意味も分からないし……それに、鉄平に迷惑を掛けたくないから。やりたいかやりたくないかで言われたら、やりたくないのじゃ」
「……そうか」
篠原はその言葉を聞いて。
それから僅かに俯いて、静かに静かに考えを纏めるように黙り込んで。
そんなしばしの長考の後、やがて彼は答えた。
「なら俺達がキミやキミを守ろうとした杉浦さんと戦う理由は無いな。これで戦いは終わりだ」
その言葉に周囲のウィザードが困惑するようにざわつきだす。
そして困惑しているのは鉄平も同じだった
(何言ってんだ……この人は)
当然、喜ばしい状況だ。
言っている事が本当なのだとすれば、本当に喜ばしい。
だがあれだけ疑い深かった男の決定が、こんな程度の問答で揺らぐものなのかと。
こんなに簡単に手の平を返すのかと。
一体何を考えているのだと。
こちらの理想の展開に限りなく近づいている筈なのに、その疑念が脳内をぐるぐるとループしている。
だけどそれでも難しい事を考えなければ、表面上はユイが殺されるような状況から脱したように思えるから。
(いや、まあ……いいか、とりあえず)
今はそれで良いと思った。
それ以上の何かは。それ以外の何かは現状力も交渉力も何もかも足りていない鉄平では与えてやれない事ばかりだから。
そして、あまり難しい事を考える余裕も無かったから。
(ユイが死ななきゃ……それで)
緊張の糸が切れたように、ただでさえ限界寸前だった体により力が入らなくなる。
意識も徐々に掠れていって。
何が何だか良く分からないまま。
それでもどこか安堵だけしながら、鉄平の意識はブラックアウトしていった。
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