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2-1 招かれざる客
23 鎖国と外交
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「ごもっともな意見だ。当然、それができるに越した事は無い。平和的かつより確実性があるだろう……時間を掛ければね」
小さく溜息を吐いてから、ディルバインは赤坂の問いに答える。
「端的に言えば時間が無かったんだ。実質的に鎖国状態の、それも既に複数の世界からの侵攻を受けている世界に対し、真っ当な関係の構築を迅速に行うのは難しい。外務省の人間ではない僕にもそれは分かる」
「まあそうだろうな。いや俺頭良くねえからその辺の事は良く分かんねえけど」
「正直でよろしい。で、加えてそもそも技術的にも、条件付きで確実にダンジョンを突破できるようになったのは最近の事だ。戦闘力の無い個体とはいえ実験と称して、この世界に侵攻している世界と同じようにね。つまりそもそも外交官を送る事自体も難しければ、なによりまず僕らもキミらの世界に得体のしれない何かを送りつけている侵攻と同義の事をやっているんだ。そういう事情が積み重なった結果がこれだよ」
そう言って小さく息を吐いたディルバインは呟く。
「さて、そろそろ下のでの決着は付いただろうか」
「ていうか大人しく捕まったんなら、終わってなくても止めてくんないっすか?」
「それをする為には管制室に行って色々とやらなければならない訳だが……これでできると思うかい?」
そう言って手錠のような結界に繋がれた腕を見せた後、柚子に視線を向ける。
「ただこれを外すことはお勧めしないよ。僕が管制室に行く事によって状況がキミ達にとって悪い方に傾く可能性もある」
「そういう事ならこのままっすね。別にアンタを全く信頼してない訳じゃないっすけど、皆の方が当然信頼できるっすから」
「それで良い。今後同じような事が起きたとしても、その姿勢は崩すな」
と、ディルバインがそう言った時だった。
インカムに通信が入る。
『こちら神崎。上に居る三人、聞こえてるか』
「聞こえてるっすよ。そっちどうっすか」
『その報告だ。たった今最後の奴をぶっ壊した……そっちは妙な事になってるようだけどとりあえず大丈夫そうだな』
「そうっすね。私も杉浦さんもユイちゃんも。ついでに伊月ちゃんも無事っすね」
「ついでって何よついでって!」
『ならいい……だったら早い所、本来の目的を果たそう』
「本来……?」
鉄平がそう聞き返すと、神崎は言う。
『色々あっただろうけど忘れんな。俺達はお前らが乗ってるバカでかいアンノウンを落としに来たんだろ』
軽く溜息を吐いてから神崎は言う。
『で、これ杏さんと話してたんだけどよ……お前達の乗ってるアンノウン、どうにかしてぶっ壊さずに着陸させる事ってできねえか?』
「ぶっ壊さず着陸っすか?」
『ああ。それができた方が確実だし、そもそも人間が乗ってきた船みてえなもんなんだろ? それもダンジョンの迎撃を突破してきた代物だ。できる事ならそれを綺麗な状態で確保して技術開発課の奴らに調べさせたい』
「いやまあできるとは思いますけど……」
ただその場合。
「そしたらディルバイン……ああ、俺達の方で捕まえてあるこのアンノウンに乗ってた人間を解放しないと難しいんじゃないですかね」
『お前達の方から流れてくる会話聞く限りだと話はできそうだが……流石にそこまで信用できねえか』
神崎がそう呟いた所で、ディルバインは言う。
「別に僕を開放しなくても、その辺の事は出来なくはないさ」
「どういう事? 私達こんなの操作できないし、やり方聞いてその通りやるんだったら解放してるのと殆ど変わらないでしょ」
「そう、変わらない。だから僕が直接キミ達に指示するような事はしない。緊急時のマニュアルが詰んである。そこに記載された通りの事をやってもらえば良い」
「んな事言われても私ら異世界語なんて読めねえっすよ」
「この世界で一番使われてる英語すら殆ど読めねえのにな」
「そうっすよ」
「えぇ……それはもう少し勉強とかした方が良いんじゃないのかい?」
普通に心配するようにそう言ったディルバインは、ユイに視線を向けて言う。
「……別にキミ達に読めとは言わないさ。僕以外にも居るだろう。おそらくこの世界の外の言語を理解できる存在が」
小さく溜息を吐いてから、ディルバインは赤坂の問いに答える。
「端的に言えば時間が無かったんだ。実質的に鎖国状態の、それも既に複数の世界からの侵攻を受けている世界に対し、真っ当な関係の構築を迅速に行うのは難しい。外務省の人間ではない僕にもそれは分かる」
「まあそうだろうな。いや俺頭良くねえからその辺の事は良く分かんねえけど」
「正直でよろしい。で、加えてそもそも技術的にも、条件付きで確実にダンジョンを突破できるようになったのは最近の事だ。戦闘力の無い個体とはいえ実験と称して、この世界に侵攻している世界と同じようにね。つまりそもそも外交官を送る事自体も難しければ、なによりまず僕らもキミらの世界に得体のしれない何かを送りつけている侵攻と同義の事をやっているんだ。そういう事情が積み重なった結果がこれだよ」
そう言って小さく息を吐いたディルバインは呟く。
「さて、そろそろ下のでの決着は付いただろうか」
「ていうか大人しく捕まったんなら、終わってなくても止めてくんないっすか?」
「それをする為には管制室に行って色々とやらなければならない訳だが……これでできると思うかい?」
そう言って手錠のような結界に繋がれた腕を見せた後、柚子に視線を向ける。
「ただこれを外すことはお勧めしないよ。僕が管制室に行く事によって状況がキミ達にとって悪い方に傾く可能性もある」
「そういう事ならこのままっすね。別にアンタを全く信頼してない訳じゃないっすけど、皆の方が当然信頼できるっすから」
「それで良い。今後同じような事が起きたとしても、その姿勢は崩すな」
と、ディルバインがそう言った時だった。
インカムに通信が入る。
『こちら神崎。上に居る三人、聞こえてるか』
「聞こえてるっすよ。そっちどうっすか」
『その報告だ。たった今最後の奴をぶっ壊した……そっちは妙な事になってるようだけどとりあえず大丈夫そうだな』
「そうっすね。私も杉浦さんもユイちゃんも。ついでに伊月ちゃんも無事っすね」
「ついでって何よついでって!」
『ならいい……だったら早い所、本来の目的を果たそう』
「本来……?」
鉄平がそう聞き返すと、神崎は言う。
『色々あっただろうけど忘れんな。俺達はお前らが乗ってるバカでかいアンノウンを落としに来たんだろ』
軽く溜息を吐いてから神崎は言う。
『で、これ杏さんと話してたんだけどよ……お前達の乗ってるアンノウン、どうにかしてぶっ壊さずに着陸させる事ってできねえか?』
「ぶっ壊さず着陸っすか?」
『ああ。それができた方が確実だし、そもそも人間が乗ってきた船みてえなもんなんだろ? それもダンジョンの迎撃を突破してきた代物だ。できる事ならそれを綺麗な状態で確保して技術開発課の奴らに調べさせたい』
「いやまあできるとは思いますけど……」
ただその場合。
「そしたらディルバイン……ああ、俺達の方で捕まえてあるこのアンノウンに乗ってた人間を解放しないと難しいんじゃないですかね」
『お前達の方から流れてくる会話聞く限りだと話はできそうだが……流石にそこまで信用できねえか』
神崎がそう呟いた所で、ディルバインは言う。
「別に僕を開放しなくても、その辺の事は出来なくはないさ」
「どういう事? 私達こんなの操作できないし、やり方聞いてその通りやるんだったら解放してるのと殆ど変わらないでしょ」
「そう、変わらない。だから僕が直接キミ達に指示するような事はしない。緊急時のマニュアルが詰んである。そこに記載された通りの事をやってもらえば良い」
「んな事言われても私ら異世界語なんて読めねえっすよ」
「この世界で一番使われてる英語すら殆ど読めねえのにな」
「そうっすよ」
「えぇ……それはもう少し勉強とかした方が良いんじゃないのかい?」
普通に心配するようにそう言ったディルバインは、ユイに視線を向けて言う。
「……別にキミ達に読めとは言わないさ。僕以外にも居るだろう。おそらくこの世界の外の言語を理解できる存在が」
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