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第一巻:追放と再始動編
第四話:氷の皮膜を剥がしたら、中から絶世の美形が現れた件。
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私の『研磨』によって、皇帝エドワルドを覆っていた「死の氷」は日々薄くなっていた。 それに伴い、城内の気温も劇的に上昇し、凍りついていた侍女たちの心まで溶け始めたのか、後宮はやけに騒がしくなっていた。
「……リセット、起きているか」
昼下がりの心地よいまどろみを切り裂いて、低いテノールボイスが鼓膜を揺らす。 私は、窓辺の特等席に設置した「魔導カシミア(リセット鑑定済み最高級品)」のソファの上で、片目だけを開けた。
「……陛下、ノックという概念をご存知? それと今、私の鑑定眼によれば、今は『二度寝に最適な湿度と日照条件』なんです。邪魔をしないでくださる?」
不機嫌に言い放った私の視界に、一人の男の姿が映り込んだ。 私は思わず、もう片方の目も見開いた。
「……あら。……どちらの不純物(ゴミ)……いえ、どなたかしら?」
そこに立っていたのは、数日前まで「氷像」のようだった男の、完全なる真の姿だった。
呪いの皮膜が剥がれ落ちた肌は、月の光を凝固させたように白く滑らかだ。黒髪は濡れたような艶を湛え、切れ長の瞳は深いラピスラズリの色をしている。 何より、その体躯。氷に閉じ込められていた時よりも逞しく、薄衣の上からでも分かる無駄のない筋肉が、洗練された「暴力的な美」を放っていた。
【鑑定対象:エドワルド・フォン・シュタルク(真の姿)】 【評価:世界最高ランクの『伝説的ダイヤモンド』。カット、カラー、クラリティ、すべてが規格外。】 【補足:顔面偏差値が高すぎて、直視すると網膜が焼かれる恐れあり。光害レベルの美形。】
「……呪いが薄れ、ようやく本来の姿に戻りつつある。すべては君のおかげだ、リセット」
エドワルドは優雅な所作で私の前に跪き、私の指先を掬い取って、その甲に唇を寄せた。 昨日まで氷のように冷たかった男の、生々しい「熱」が肌に伝わる。
「……っ。……陛下、やめてくださる? 眩しすぎて目がチカチカするわ。あなたのその顔、光の反射率が異常なのよ。寝不足の目には毒だわ。……布でも被って、隅の方で静かにしてて」
「はは、手厳しいな。だが、君がそうやって目を逸らすのは、私に『魅了』されている証拠だろう?」
「……鑑定結果:脳内がお花畑。……あなたのその自信、どこから湧いてくるのかしら。鑑定しても『根拠不明』って出るわよ」
私は顔を赤くして(自覚はないが、鑑定眼によれば毛細血管が拡張しているらしい)、無理やり手を引き抜いた。 だが、エドワルドは動じない。それどころか、彼は私の腰に手を回し、至近距離まで顔を近づけてきた。
「侍女たちが騒いでいる。呪いが解けた皇帝が、あまりに美しいと。……だが、私はそんな言葉はどうでもいい。私が欲しいのは、世界で唯一、私の『本質(価値)』を見抜いた君の言葉だけだ」
彼の瞳の中に、リセットという小さな宝石が映っている。 その熱量、その密度。 鑑定眼は無慈悲にも、目の前の男の感情を数値化して突きつけてくる。
【鑑定結果:エドワルドの情動】 【成分:純愛 10%、執着 40%、独占欲 50%】 【危険度:特級。一度捕まれば、一生ベッドから出してもらえない恐れあり。】
(((……待って。私、一歩も動かずに寝ていたいって言ったけど、それは『自由』が大前提なのよ! このままだと、豪華な寝室という名の『鳥籠』に閉じ込められるわ……!)))
「……陛下。一つ、追加で鑑定して差し上げるわ」
「何かな?」
「あなたのその重すぎる愛……『研磨』しがいがあるけれど、今はただの『暑苦しい不純物』よ。さっさと公務に戻って、私の安眠を保障するための税金を稼いできなさい」
突き放すような毒舌。 しかしエドワルドは、満足げに微笑んで私の額に口づけを落とした。
「ああ、分かっている。君が心置きなく眠れるよう、この世界を最高の宝石箱に仕立て直してこよう。……待っていなさい、私の愛しいリセット」
彼が部屋を出て行った後、私は大きく溜息をついてソファに沈み込んだ。 ……どうしてこうなった。 静かなニート生活を送るはずが、拾った原石(皇帝)が想像以上に「劇薬」で、私の平穏をゴリゴリと削り始めている。
「……ああ、もう。……とりあえず、四時間は寝させなさいよ、このバカ皇帝……」
リセットの毒舌は、もはや皇帝にとって「最高級の甘言」としてしか機能していなかった。 彼女の目論むスローライフは、美しすぎる皇帝の重い愛によって、早くも迷走を始めるのであった。
「……リセット、起きているか」
昼下がりの心地よいまどろみを切り裂いて、低いテノールボイスが鼓膜を揺らす。 私は、窓辺の特等席に設置した「魔導カシミア(リセット鑑定済み最高級品)」のソファの上で、片目だけを開けた。
「……陛下、ノックという概念をご存知? それと今、私の鑑定眼によれば、今は『二度寝に最適な湿度と日照条件』なんです。邪魔をしないでくださる?」
不機嫌に言い放った私の視界に、一人の男の姿が映り込んだ。 私は思わず、もう片方の目も見開いた。
「……あら。……どちらの不純物(ゴミ)……いえ、どなたかしら?」
そこに立っていたのは、数日前まで「氷像」のようだった男の、完全なる真の姿だった。
呪いの皮膜が剥がれ落ちた肌は、月の光を凝固させたように白く滑らかだ。黒髪は濡れたような艶を湛え、切れ長の瞳は深いラピスラズリの色をしている。 何より、その体躯。氷に閉じ込められていた時よりも逞しく、薄衣の上からでも分かる無駄のない筋肉が、洗練された「暴力的な美」を放っていた。
【鑑定対象:エドワルド・フォン・シュタルク(真の姿)】 【評価:世界最高ランクの『伝説的ダイヤモンド』。カット、カラー、クラリティ、すべてが規格外。】 【補足:顔面偏差値が高すぎて、直視すると網膜が焼かれる恐れあり。光害レベルの美形。】
「……呪いが薄れ、ようやく本来の姿に戻りつつある。すべては君のおかげだ、リセット」
エドワルドは優雅な所作で私の前に跪き、私の指先を掬い取って、その甲に唇を寄せた。 昨日まで氷のように冷たかった男の、生々しい「熱」が肌に伝わる。
「……っ。……陛下、やめてくださる? 眩しすぎて目がチカチカするわ。あなたのその顔、光の反射率が異常なのよ。寝不足の目には毒だわ。……布でも被って、隅の方で静かにしてて」
「はは、手厳しいな。だが、君がそうやって目を逸らすのは、私に『魅了』されている証拠だろう?」
「……鑑定結果:脳内がお花畑。……あなたのその自信、どこから湧いてくるのかしら。鑑定しても『根拠不明』って出るわよ」
私は顔を赤くして(自覚はないが、鑑定眼によれば毛細血管が拡張しているらしい)、無理やり手を引き抜いた。 だが、エドワルドは動じない。それどころか、彼は私の腰に手を回し、至近距離まで顔を近づけてきた。
「侍女たちが騒いでいる。呪いが解けた皇帝が、あまりに美しいと。……だが、私はそんな言葉はどうでもいい。私が欲しいのは、世界で唯一、私の『本質(価値)』を見抜いた君の言葉だけだ」
彼の瞳の中に、リセットという小さな宝石が映っている。 その熱量、その密度。 鑑定眼は無慈悲にも、目の前の男の感情を数値化して突きつけてくる。
【鑑定結果:エドワルドの情動】 【成分:純愛 10%、執着 40%、独占欲 50%】 【危険度:特級。一度捕まれば、一生ベッドから出してもらえない恐れあり。】
(((……待って。私、一歩も動かずに寝ていたいって言ったけど、それは『自由』が大前提なのよ! このままだと、豪華な寝室という名の『鳥籠』に閉じ込められるわ……!)))
「……陛下。一つ、追加で鑑定して差し上げるわ」
「何かな?」
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