8 / 13
第一巻:追放と再始動編
第八話:刺客襲来。リセット、ガラス片で暗殺者の急所を突く。
しおりを挟む
昨夜の「入浴剤事件」のせいで、結局まともに眠りにつけたのは明け方だった。 エドワルドの執着心が「研磨」されるどころか「増幅」している事実に、私は布団の中で深い溜息をついた。
「……ふわぁ。肌のコンディションは鑑定の結果『最高ランク』だけど、意識の覚醒度は『ゴミレベル』だわ……」
高級シルクのパジャマに身を包み、私は寝室のバルコニーへと出た。 冷たい空気が、熱を帯びた体に心地よい。……そう思った瞬間だった。
背後の空気が、わずかに「濁った」。
【鑑定対象:周囲の空間】 【不純物:光学迷彩魔法、および猛毒が塗布された『影の魔刃』】 【判定:暗殺者。王国の『影』。鑑定精度……二流以下。】
「……朝から本当に、センスのない訪問者ね。私の安眠スケジュールを乱した罪、銀貨一枚分でも贖えると思っているのかしら?」
私は振り返ることもなく、手元にあった飲み干したばかりのワイングラス――エドワルドが「君の瞳に似ているから」と贈ってきた、最高級のクリスタル製――を、床に向かって無造作に落とした。
パリンッ、と高い音が響き、美しい破片が床に散らばる。
「死ね、王国を裏切った毒婦め!」
虚空から、黒装束を纏った男が姿を現した。 彼の短剣が、私の背中に突き立てられようとしたその瞬間、私は鑑定眼で導き出した「最適解」へと、ほんの数センチだけ体を横にずらした。
男の足が、私がわざと落として割った「クリスタル片」を踏み抜く。 普通の靴なら防げたはずだ。だが、このクリスタルは私が昨夜のうちに、自分の魔力で「鋼鉄をも貫く鋭利さ」に研磨(調整)しておいたものだ。
「ぎゃああああああっ!?」
足の裏を貫かれ、体勢を崩した暗殺者。 私は彼が倒れ込む軌道を鑑定し、その手元に落ちた「別のガラス片」を、優雅に、しかし無慈悲につま先で蹴り上げた。
ピュン、と空気を裂く音。 ガラス片は、男の魔法発動の起点である手首の「経絡」に正確に突き刺さった。
「ぐ、が……っ。な、なぜ動けない……!?」
「鑑定終了。……あなたの魔力回路、そこを塞げば一分間は全身不随になるわ。あと、その短剣の毒……『紫の蛇毒』ね。成分比率が甘いわ。もっと純度を高めないと、私のような不純物にうるさい女は殺せないわよ?」
私が冷たく言い放つと、背後の扉が豪快に跳ね上がった。
「リセット!!」
剣を抜き、殺気立ったエドワルドが飛び込んできた。 彼は床に転がる男を見るなり、その瞳に絶対零度の殺意を宿した。
「……影か。……私のリセットに、その薄汚い手を伸ばそうとしたのか」
「陛下。……遅いわよ。お掃除(鑑定)はもう終わったわ。……ああ、危ないからその男に近づかないで。今から彼を『凍土の肥やし』にするなら、私がさっき言った『毒の調合ミス』を修正してからにしてくださる?」
「リセット。……君という女性は、本当に……」
エドワルドは呆れたように肩を落としたが、すぐに私に歩み寄り、折れそうなほど強く抱きしめた。 鎧の冷たさが心地よいが、彼の心臓の鼓動はやけに速い。
「怖くなかったのか?」
「……怖い? 何を鑑定したらそんな答えが出るのかしら。私はただ、返り血でパジャマを汚されるのが、何よりも恐ろしかったわ。……さあ、陛下。この不純物をさっさと片付けて。私は今から、中断された『三度寝』に入らなきゃいけないんだから」
皇帝の腕の中で、私は大きな欠伸をした。 暗殺者の襲来さえ、リセットにとっては「二度寝の重要性」を再確認するイベントに過ぎない。
「……分かった。お前の眠りは、私が命に代えても守ろう。……だが、その前に」
エドワルドが私の首筋に顔を埋める。 「……君のその、冷徹で美しい『毒』に、私はもっと侵されたいのだ」
(((……鑑定結果:この皇帝、暗殺者よりもタチが悪い不純物だわ……!)))
一歩も動きたくないリセットの周囲は、彼女の望む平穏とは真逆に、ますます熱く、騒がしくなっていくのであった。
「……ふわぁ。肌のコンディションは鑑定の結果『最高ランク』だけど、意識の覚醒度は『ゴミレベル』だわ……」
高級シルクのパジャマに身を包み、私は寝室のバルコニーへと出た。 冷たい空気が、熱を帯びた体に心地よい。……そう思った瞬間だった。
背後の空気が、わずかに「濁った」。
【鑑定対象:周囲の空間】 【不純物:光学迷彩魔法、および猛毒が塗布された『影の魔刃』】 【判定:暗殺者。王国の『影』。鑑定精度……二流以下。】
「……朝から本当に、センスのない訪問者ね。私の安眠スケジュールを乱した罪、銀貨一枚分でも贖えると思っているのかしら?」
私は振り返ることもなく、手元にあった飲み干したばかりのワイングラス――エドワルドが「君の瞳に似ているから」と贈ってきた、最高級のクリスタル製――を、床に向かって無造作に落とした。
パリンッ、と高い音が響き、美しい破片が床に散らばる。
「死ね、王国を裏切った毒婦め!」
虚空から、黒装束を纏った男が姿を現した。 彼の短剣が、私の背中に突き立てられようとしたその瞬間、私は鑑定眼で導き出した「最適解」へと、ほんの数センチだけ体を横にずらした。
男の足が、私がわざと落として割った「クリスタル片」を踏み抜く。 普通の靴なら防げたはずだ。だが、このクリスタルは私が昨夜のうちに、自分の魔力で「鋼鉄をも貫く鋭利さ」に研磨(調整)しておいたものだ。
「ぎゃああああああっ!?」
足の裏を貫かれ、体勢を崩した暗殺者。 私は彼が倒れ込む軌道を鑑定し、その手元に落ちた「別のガラス片」を、優雅に、しかし無慈悲につま先で蹴り上げた。
ピュン、と空気を裂く音。 ガラス片は、男の魔法発動の起点である手首の「経絡」に正確に突き刺さった。
「ぐ、が……っ。な、なぜ動けない……!?」
「鑑定終了。……あなたの魔力回路、そこを塞げば一分間は全身不随になるわ。あと、その短剣の毒……『紫の蛇毒』ね。成分比率が甘いわ。もっと純度を高めないと、私のような不純物にうるさい女は殺せないわよ?」
私が冷たく言い放つと、背後の扉が豪快に跳ね上がった。
「リセット!!」
剣を抜き、殺気立ったエドワルドが飛び込んできた。 彼は床に転がる男を見るなり、その瞳に絶対零度の殺意を宿した。
「……影か。……私のリセットに、その薄汚い手を伸ばそうとしたのか」
「陛下。……遅いわよ。お掃除(鑑定)はもう終わったわ。……ああ、危ないからその男に近づかないで。今から彼を『凍土の肥やし』にするなら、私がさっき言った『毒の調合ミス』を修正してからにしてくださる?」
「リセット。……君という女性は、本当に……」
エドワルドは呆れたように肩を落としたが、すぐに私に歩み寄り、折れそうなほど強く抱きしめた。 鎧の冷たさが心地よいが、彼の心臓の鼓動はやけに速い。
「怖くなかったのか?」
「……怖い? 何を鑑定したらそんな答えが出るのかしら。私はただ、返り血でパジャマを汚されるのが、何よりも恐ろしかったわ。……さあ、陛下。この不純物をさっさと片付けて。私は今から、中断された『三度寝』に入らなきゃいけないんだから」
皇帝の腕の中で、私は大きな欠伸をした。 暗殺者の襲来さえ、リセットにとっては「二度寝の重要性」を再確認するイベントに過ぎない。
「……分かった。お前の眠りは、私が命に代えても守ろう。……だが、その前に」
エドワルドが私の首筋に顔を埋める。 「……君のその、冷徹で美しい『毒』に、私はもっと侵されたいのだ」
(((……鑑定結果:この皇帝、暗殺者よりもタチが悪い不純物だわ……!)))
一歩も動きたくないリセットの周囲は、彼女の望む平穏とは真逆に、ますます熱く、騒がしくなっていくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
婚約破棄して廃嫡された馬鹿王子、冒険者になって自由に生きようとするも、何故か元婚約者に追いかけて来られて修羅場です。
平井敦史
ファンタジー
公爵令嬢ヘンリエッタとの婚約破棄を宣言した王太子マルグリスは、父王から廃嫡されてしまう。
マルグリスは王族の身分も捨て去り、相棒のレニーと共に冒険者として生きていこうと決意するが、そんな彼をヘンリエッタが追いかけて来て……!?
素直になれない三人の、ドタバタ冒険ファンタジー。
※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる