婚約破棄、感謝いたします! 毒舌鑑定令嬢は一歩も動かず国を豊かにして二度寝したい 〜氷の皇帝を『研磨』したら、愛が重すぎて眠れません〜

小林 れい

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第一巻:追放と再始動編

第十話:帝国の守護石を修復せよ。リセット、国母として認められる。

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 その夜、帝都シュタルクはかつてない激震に見舞われた。  地響きと共に、城の中央に鎮座する巨大な『帝国の守護石(ガーディアン・コア)』が、ドロリとした黒い輝きを放ち始めたのだ。

「――リセット様! 起きてください、一大事です!」  扉を叩き割る勢いで飛び込んできたのは、顔を真っ青にしたバルタザールだった。

「……五月蝿いわね。今、鑑定眼で『最高に深い眠り』の深度を測定していたところなのよ。……おじいちゃん、あなたの葬儀の宝石を今すぐ選んであげましょうか?」

「そんな冗談を言っている場合ではありません! 守護石が暴走を始めました! このままでは帝都が氷の地獄に飲み込まれます!」

 私は重い腰を上げ、窓の外を見た。  空は禍々しい紫色の雲に覆われ、巨大な魔石から放たれる冷気が、建物を次々と結晶化させている。エドワルドは既に祭壇へ向かい、自身の魔力で暴走を食い止めようとしているらしいが、鑑定眼に映る彼の魔力残量は危険域に達していた。

「……はぁ。陛下も陛下よ。自分を磨ききれていないくせに、国家の重荷まで背負い込んで。……不純物の塊みたいな石に、私の熱源(だきまくら)を壊されてたまるもんですか」

 私はパジャマの上にマントを羽織っただけの姿で、祭壇へと向かった。

 祭壇では、エドワルドが全身から血を流さんばかりの魔力を放出し、守護石を抑え込んでいた。

「来るな、リセット! この石はもう、人間の制御を越えている!」

「黙ってなさい、この不純物まみれの石像予備軍!」  私はエドワルドの制止を無視し、荒れ狂う魔力の嵐の中を突き進んだ。

【鑑定対象:帝国の守護石(暴走状態)】 【原因:王国の呪詛テロ。内部に『腐食の種』が植え付けられている。】 【判定:このままでは三分後に帝都消滅。……ただし、一点。】

「……見つけたわ。王国の残党が仕込んだ、反吐が出るほど安っぽい呪いの『クラック』を!」

 私はカバンから、第1話でエドワルドを救ったあの「折れた聖銀のナイフ」を取り出した。

「陛下! 私の背中を支えなさい! あなたの全魔力を、私の指先に集中させて!」

「……っ、承知した!」  エドワルドが私の背後から抱きしめるように手を回し、膨大な魔力を流し込んでくる。  熱い。意識が飛びそうなほどの高純度な魔力。私はそれを鑑定眼で一点に凝縮し、守護石の「黒い核」へと叩き込んだ。

「――【究極研磨(グランド・カット):穢れ剥離(デリート)】!!」

 世界が真っ白に染まった。  守護石の表面を覆っていた黒い煤が、ガラスが砕けるような音と共に剥がれ落ち、中から太陽よりも眩しい黄金の輝きが溢れ出す。

 嵐が止み、静寂が訪れた。  守護石は、かつてないほど美しく、温かな光を帝都へと放っていた。

「……はぁ、……はぁ……。……終わったわね。……さて、残業代は『三日間の完全不干渉な熟睡』でいいかしら……」

 膝をつきそうになった私の体を、エドワルドが強く抱きとめた。  周囲では、一部始終を見ていた重臣や兵士たちが、信じられないものを見るような目で私を見つめ、やがて地を揺らすような歓声が上がった。

「「「国母様……! 救国の宝石鑑定師、リセット様万歳!!」」」

「……誰が国母よ。……あ、おじいちゃん、そんなキラキラした目で私を見ないで。仕事は増やさないわよ……」

 エドワルドは、私を抱きかかえたまま、その額に深い誓いのキスを落とした。

「リセット。……君が望もうと望むまいと、この国はもう君を離さない。……そして、私もだ」

(((……鑑定結果:最悪。……これ、二度寝するどころか、一生崇められて忙しくなるパターンのやつだわ……)))

 王国の追放令嬢から、帝国の守護神へ。  リセットの「ぐうたらへの道」は、彼女が有能すぎるせいで、ますます遠ざかっていくのであった。
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