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第二巻:泥だらけの騎士団編
第十一話:騎士団の装備がボロボロなのは、誰かが予算を「着服」しているから
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「――リセット、頼む。一度だけでいい、彼らを見てやってくれないか」
帝国の救世主として「国母」などという、およそ二度寝には不向きな称号を押し付けられてから数日。私の安眠スケジュールは、またしてもエドワルドの「お願い(という名の強制イベント)」によって阻まれていた。
案内されたのは、帝都の端に位置する第一騎士団の訓練場だ。 そこには、かつて「大陸最強」と謳われた面影など微塵もない、悲惨な光景が広がっていた。
「……はぁ。陛下、私は言いましたわよね? 私をベッドから引き剥がすなら、それ相応の『鑑定価値』があるものを見せなさいって。……これ、何の冗談? 粗大ゴミの集積場にでも連れてこられたのかしら」
私の目の前で訓練に励んでいる騎士たちの姿に、私の鑑定眼は秒速で「ゴミ」のレッテルを貼り付けていた。
「おい、貴様! 今、ゴミと言ったか!」 一人の若い騎士が、錆びついた剣を構えて詰め寄ってくる。泥にまみれたその鎧は、あちこちが凹み、繋ぎ目の革は腐りかけていた。
「あら、耳だけは良いのね。不純物の分際で。……鑑定開始」
私は瞳の奥を黄金色に輝かせ、訓練場全体をスキャンした。
【鑑定対象:第一騎士団の装備一式】 【判定:壊滅的。……鉄の純度は三流、魔導回路は断線、おまけに一部の防具には『呪いの鉛』が混ぜられている。】 【推測:装備新調の予算は、高純度の『聖銀』として計上されているが、現物は安物の『クズ鉄』。差額の金貨数万枚分がどこかへ消えているわね。】
「……陛下、おめでとうございます。あなたの足元、シロアリに食い荒らされた古木みたいにボロボロよ。この騎士たちの鎧、表面だけピカピカに磨いて誤魔化しているけれど、中身はただの『鉄くず』だわ」
「なっ……なんだと!?」 エドワルドの顔が、一瞬にして氷の皇帝へと戻る。
「私の鑑定眼によれば、この鎧の強度は『煎餅』と同レベル。……ちょっと、そこの勇ましいだけの騎士様。その剣を私に貸してくださる?」
私は、騎士が持っていた重厚そうな長剣をひったくると、近くにあった木人に向かって、これ以上なく「面倒くさそうに」振り下ろした。 ガラン……。 刃は木人に刺さるどころか、根元から呆気なく折れ、地面に転がった。
「……見ての通りよ。こんなもので国を守るなんて、裸で戦場を走るのと同じくらい無謀だわ。……で、陛下。この『予算着服』の主犯は、今この場で震えている、そこの恰幅のいい補給担当官かしら?」
私の指先が、訓練場の隅で脂汗を流していたデブな男を指し示す。 男は「ひ、ひぃぃ!」と声を上げて腰を抜かした。
「リセット、君は……一瞬でそこまで見抜くのか」 エドワルドが驚愕と共に、私の肩を抱き寄せた。その手には、隠しきれない怒りと、私への歪んだ賞賛が混ざり合っている。
「当たり前でしょう。不純物が混じっていれば、空気の匂いで分かるわ。……それより陛下。私は肩が凝るのが大嫌いなの。この騎士たちの重くて不便な『ゴミ鎧』を見ているだけで、私の肩が岩のように固まっていくわ。……責任をとって、後でたっぷりマッサージしてくださる?」
「ああ、もちろんだ。……だがその前に、この泥まみれの騎士団を、君のその手で『至高の宝』へ作り替えてはくれないか」
「……はぁ。やっぱりそうなるのね。……いいわ。ただし、騎士様たち。私、お掃除は得意だけど、根性は教えないわよ。……汚い装備を全部脱ぎ捨てなさい。私の安眠のために、世界で一番『軽くて強い』鎧を用意してあげるわ」
リセットの毒舌による「騎士団解体」が始まった。 それは、帝国の軍事バランスを根底から覆し、王国の元婚約者たちを恐怖に陥れる「最強の軍団」が誕生する、最初の一歩であった。
(((……ああ、マッサージの予約はしたけれど、これ、確実に残業確定じゃない。……私の二度寝が、また遠のいていく……)))
帝国の救世主として「国母」などという、およそ二度寝には不向きな称号を押し付けられてから数日。私の安眠スケジュールは、またしてもエドワルドの「お願い(という名の強制イベント)」によって阻まれていた。
案内されたのは、帝都の端に位置する第一騎士団の訓練場だ。 そこには、かつて「大陸最強」と謳われた面影など微塵もない、悲惨な光景が広がっていた。
「……はぁ。陛下、私は言いましたわよね? 私をベッドから引き剥がすなら、それ相応の『鑑定価値』があるものを見せなさいって。……これ、何の冗談? 粗大ゴミの集積場にでも連れてこられたのかしら」
私の目の前で訓練に励んでいる騎士たちの姿に、私の鑑定眼は秒速で「ゴミ」のレッテルを貼り付けていた。
「おい、貴様! 今、ゴミと言ったか!」 一人の若い騎士が、錆びついた剣を構えて詰め寄ってくる。泥にまみれたその鎧は、あちこちが凹み、繋ぎ目の革は腐りかけていた。
「あら、耳だけは良いのね。不純物の分際で。……鑑定開始」
私は瞳の奥を黄金色に輝かせ、訓練場全体をスキャンした。
【鑑定対象:第一騎士団の装備一式】 【判定:壊滅的。……鉄の純度は三流、魔導回路は断線、おまけに一部の防具には『呪いの鉛』が混ぜられている。】 【推測:装備新調の予算は、高純度の『聖銀』として計上されているが、現物は安物の『クズ鉄』。差額の金貨数万枚分がどこかへ消えているわね。】
「……陛下、おめでとうございます。あなたの足元、シロアリに食い荒らされた古木みたいにボロボロよ。この騎士たちの鎧、表面だけピカピカに磨いて誤魔化しているけれど、中身はただの『鉄くず』だわ」
「なっ……なんだと!?」 エドワルドの顔が、一瞬にして氷の皇帝へと戻る。
「私の鑑定眼によれば、この鎧の強度は『煎餅』と同レベル。……ちょっと、そこの勇ましいだけの騎士様。その剣を私に貸してくださる?」
私は、騎士が持っていた重厚そうな長剣をひったくると、近くにあった木人に向かって、これ以上なく「面倒くさそうに」振り下ろした。 ガラン……。 刃は木人に刺さるどころか、根元から呆気なく折れ、地面に転がった。
「……見ての通りよ。こんなもので国を守るなんて、裸で戦場を走るのと同じくらい無謀だわ。……で、陛下。この『予算着服』の主犯は、今この場で震えている、そこの恰幅のいい補給担当官かしら?」
私の指先が、訓練場の隅で脂汗を流していたデブな男を指し示す。 男は「ひ、ひぃぃ!」と声を上げて腰を抜かした。
「リセット、君は……一瞬でそこまで見抜くのか」 エドワルドが驚愕と共に、私の肩を抱き寄せた。その手には、隠しきれない怒りと、私への歪んだ賞賛が混ざり合っている。
「当たり前でしょう。不純物が混じっていれば、空気の匂いで分かるわ。……それより陛下。私は肩が凝るのが大嫌いなの。この騎士たちの重くて不便な『ゴミ鎧』を見ているだけで、私の肩が岩のように固まっていくわ。……責任をとって、後でたっぷりマッサージしてくださる?」
「ああ、もちろんだ。……だがその前に、この泥まみれの騎士団を、君のその手で『至高の宝』へ作り替えてはくれないか」
「……はぁ。やっぱりそうなるのね。……いいわ。ただし、騎士様たち。私、お掃除は得意だけど、根性は教えないわよ。……汚い装備を全部脱ぎ捨てなさい。私の安眠のために、世界で一番『軽くて強い』鎧を用意してあげるわ」
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