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第二巻:泥だらけの騎士団編
第十四話:【軽量化】肩凝り知らずの最強鎧。陛下、その姿は『反則』です。
「――完成したわ。陛下、そしてそこの筋肉不純物(きしたん)の皆様。これが、私の『二度寝』を邪魔する肩凝りと、あなたたちの無能な機動力を同時に解決する究極の答えよ」
帝立工房の冷たい石畳の上に、それは鎮座していた。 従来の帝国の鎧といえば、重厚な鉄板を幾重にも重ね、呪氷から身を守るために内側に毛皮を張り巡らせた、およそ「鈍重」を形にしたような代物だった。 しかし、目の前にあるそれは、まるで氷の結晶を薄く削り出し、月光で編み上げたような、透き通るほどに美しい白銀の甲冑だった。
「……リセット、これが鎧なのか? あまりに薄く、軽そうだが……。鑑定するまでもなく、一撃で砕け散ってしまうのではないか?」 エドワルドが、懸念を隠しきれない様子でその甲冑に触れようとした。
「触らないで、陛下。まだ微調整(フィニッシュ)が終わっていないわ。……いい? これはただの金属じゃない。あなたが昨日まで捨てていた『氷竜の鱗の残骸』と、王国の使者が持ってきた爆発物のカスから抽出した『高密度魔導合金』を、私の鑑定眼で原子レベルで再結合させたものよ」
私は瞳を黄金色に輝かせ、完成したばかりの鎧をスキャンする。
【鑑定対象:リセット式・超軽量魔導甲冑『アムルタート』】 【重量:従来の十分の一以下。】 【強度:物理攻撃を『鑑定』し、瞬時に魔力反発を起こす『自動受け流し(パリィ)』機能を搭載。】 【付加価値:装着者の体温を一定に保つ。……つまり、着たまま寝られるほど快適。】
「……これなら、敵の攻撃を防ぐために重い盾を構える必要もないわ。……さて、陛下。あなたが第一号のテスターよ。さっさと着替えていらっしゃい。……その際、無駄に長い演説は鑑定の結果『時間泥棒』と出ているから、黙って着ること」
「……はは、相変わらず手厳しいな。……分かった、着てみよう」
数分後。 工房の奥から現れたエドワルドの姿に、その場にいた騎士たち、そして私までもが言葉を失った。
白銀の甲冑は、エドワルドの均整の取れた肢体に、吸い付くように完璧にフィットしていた。過剰な装飾を削ぎ落としたそのフォルムは、彼の「氷の皇帝」としての冷徹さと、内側に秘めた暴力的なまでの美しさを際立たせている。 動くたびに、鎧の表面がプリズムのように七色の光を弾き、まるで彼自身が一つ巨大な宝石になったかのようだった。
「……どうだ、リセット。驚くほど軽い。……まるで、何も纏っていないかのようだ」
エドワルドが優雅に剣を振るう。その動きは、先ほどまでの重厚な皇帝のそれではなく、獲物を狩る直前の豹のような、しなやかで高速なものへと進化していた。
「……。……。……。」
「リセット? ……どうした、鑑定眼の不調か?」
エドワルドが、顔を覗き込んできた。 私の視界が、今までにないほどの警告音を鳴らしている。
【鑑定結果:エドワルド・フォン・シュタルク(新装備状態)】 【評価:反則。……顔面の光沢、鎧の反射、立ち振る舞い、すべてが『リセットの視神経』を攻撃している。】 【危険度:特級。直視し続けると、心拍数が上昇し、二度寝に必要な『冷静さ』が完全に失われる恐れあり。】
「……陛下、……。……。……下がって。今すぐ、三メートル以上私から離れてちょうだい」
「なぜだ? 顔が赤いぞ。……もしや、この鎧に『惚れ薬』の成分でも混ぜたのか?」
「……鑑定結果:自意識過剰。……違うわよ、あなたのその姿が、物理的に『眩しすぎる』のよ! 視界の不純物が多すぎて、私の鑑定回路がショートしそうなの。……いいから、そんな格好で私の前に立たないで。安眠妨害もいいところだわ!」
私は真っ赤な顔で(鑑定によれば、体温は一・二度上昇している)、エドワルドの胸板を突き飛ばした。……が、鎧が軽くなったせいで、逆に彼に容易く抱き寄せられてしまった。
「……眩しい、か。……君が作った鎧を着た私を、君が直視できないというのは、最高の褒め言葉だな」
エドワルドの低い笑い声が、鎧の振動と共に私の胸に伝わる。 白銀の篭手が、私の頬を優しくなぞった。
「……リセット。この鎧があれば、私はもう、どんな敵も恐れない。……だが、一つだけ弱点を見つけてしまった」
「……何よ、鑑定ミスがあったのかしら?」
「いや。……これを着ていると、君を抱き締めた時の『肌のぬくもり』が、少しだけ遠く感じてしまう。……今夜は、この不純物(よろい)を脱ぎ捨てて、もっと近くで私を『鑑定』し直してくれないか?」
(((……鑑定結果:救いようのない不純物。……鎧の性能は完璧だけど、着ている男の『執着心』を研磨するのを忘れていたわ……!)))
その頃、王国ではジークフリート王子が、帝国から届いた「光り輝く超人兵団」の目撃情報に、持っていたワイングラスを握りつぶしていた。 彼が捨てた「地味な鑑定令嬢」が、今や大陸の軍事バランスを、たった一人の男への「愛(と安眠)」のために作り変えようとしていることなど、知る由もなかった。
帝立工房の冷たい石畳の上に、それは鎮座していた。 従来の帝国の鎧といえば、重厚な鉄板を幾重にも重ね、呪氷から身を守るために内側に毛皮を張り巡らせた、およそ「鈍重」を形にしたような代物だった。 しかし、目の前にあるそれは、まるで氷の結晶を薄く削り出し、月光で編み上げたような、透き通るほどに美しい白銀の甲冑だった。
「……リセット、これが鎧なのか? あまりに薄く、軽そうだが……。鑑定するまでもなく、一撃で砕け散ってしまうのではないか?」 エドワルドが、懸念を隠しきれない様子でその甲冑に触れようとした。
「触らないで、陛下。まだ微調整(フィニッシュ)が終わっていないわ。……いい? これはただの金属じゃない。あなたが昨日まで捨てていた『氷竜の鱗の残骸』と、王国の使者が持ってきた爆発物のカスから抽出した『高密度魔導合金』を、私の鑑定眼で原子レベルで再結合させたものよ」
私は瞳を黄金色に輝かせ、完成したばかりの鎧をスキャンする。
【鑑定対象:リセット式・超軽量魔導甲冑『アムルタート』】 【重量:従来の十分の一以下。】 【強度:物理攻撃を『鑑定』し、瞬時に魔力反発を起こす『自動受け流し(パリィ)』機能を搭載。】 【付加価値:装着者の体温を一定に保つ。……つまり、着たまま寝られるほど快適。】
「……これなら、敵の攻撃を防ぐために重い盾を構える必要もないわ。……さて、陛下。あなたが第一号のテスターよ。さっさと着替えていらっしゃい。……その際、無駄に長い演説は鑑定の結果『時間泥棒』と出ているから、黙って着ること」
「……はは、相変わらず手厳しいな。……分かった、着てみよう」
数分後。 工房の奥から現れたエドワルドの姿に、その場にいた騎士たち、そして私までもが言葉を失った。
白銀の甲冑は、エドワルドの均整の取れた肢体に、吸い付くように完璧にフィットしていた。過剰な装飾を削ぎ落としたそのフォルムは、彼の「氷の皇帝」としての冷徹さと、内側に秘めた暴力的なまでの美しさを際立たせている。 動くたびに、鎧の表面がプリズムのように七色の光を弾き、まるで彼自身が一つ巨大な宝石になったかのようだった。
「……どうだ、リセット。驚くほど軽い。……まるで、何も纏っていないかのようだ」
エドワルドが優雅に剣を振るう。その動きは、先ほどまでの重厚な皇帝のそれではなく、獲物を狩る直前の豹のような、しなやかで高速なものへと進化していた。
「……。……。……。」
「リセット? ……どうした、鑑定眼の不調か?」
エドワルドが、顔を覗き込んできた。 私の視界が、今までにないほどの警告音を鳴らしている。
【鑑定結果:エドワルド・フォン・シュタルク(新装備状態)】 【評価:反則。……顔面の光沢、鎧の反射、立ち振る舞い、すべてが『リセットの視神経』を攻撃している。】 【危険度:特級。直視し続けると、心拍数が上昇し、二度寝に必要な『冷静さ』が完全に失われる恐れあり。】
「……陛下、……。……。……下がって。今すぐ、三メートル以上私から離れてちょうだい」
「なぜだ? 顔が赤いぞ。……もしや、この鎧に『惚れ薬』の成分でも混ぜたのか?」
「……鑑定結果:自意識過剰。……違うわよ、あなたのその姿が、物理的に『眩しすぎる』のよ! 視界の不純物が多すぎて、私の鑑定回路がショートしそうなの。……いいから、そんな格好で私の前に立たないで。安眠妨害もいいところだわ!」
私は真っ赤な顔で(鑑定によれば、体温は一・二度上昇している)、エドワルドの胸板を突き飛ばした。……が、鎧が軽くなったせいで、逆に彼に容易く抱き寄せられてしまった。
「……眩しい、か。……君が作った鎧を着た私を、君が直視できないというのは、最高の褒め言葉だな」
エドワルドの低い笑い声が、鎧の振動と共に私の胸に伝わる。 白銀の篭手が、私の頬を優しくなぞった。
「……リセット。この鎧があれば、私はもう、どんな敵も恐れない。……だが、一つだけ弱点を見つけてしまった」
「……何よ、鑑定ミスがあったのかしら?」
「いや。……これを着ていると、君を抱き締めた時の『肌のぬくもり』が、少しだけ遠く感じてしまう。……今夜は、この不純物(よろい)を脱ぎ捨てて、もっと近くで私を『鑑定』し直してくれないか?」
(((……鑑定結果:救いようのない不純物。……鎧の性能は完璧だけど、着ている男の『執着心』を研磨するのを忘れていたわ……!)))
その頃、王国ではジークフリート王子が、帝国から届いた「光り輝く超人兵団」の目撃情報に、持っていたワイングラスを握りつぶしていた。 彼が捨てた「地味な鑑定令嬢」が、今や大陸の軍事バランスを、たった一人の男への「愛(と安眠)」のために作り変えようとしていることなど、知る由もなかった。
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