婚約破棄、感謝いたします! 毒舌鑑定令嬢は一歩も動かず国を豊かにして二度寝したい 〜氷の皇帝を『研磨』したら、愛が重すぎて眠れません〜

小林 れい

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第二巻:泥だらけの騎士団編

第十七話:【戦後処理】ゴミ山(捕虜)の中から「磨けば光る職人」を選別する。

 王国軍を「一歩も動かずに」スクラップに変えた翌朝。  国境付近の収容所には、動かなくなった鎧から這い出した数千の王国兵たちが、泥を啜るような顔でうなだれていた。

「……陛下、一言いいかしら? この大量の『不純物』、ただ養っておくだけなんて、私の安眠のための予算をドブに捨てるようなものよ。鑑定眼が『もったいない』って激しく警告しているわ」

 リセットは、収容所の視察に訪れていた。アイマスクを額に上げ、不機嫌極まりない表情で、檻の中に押し込められた捕虜たちを眺める。隣には、彼女を片時も離したくないエドワルドが、まるで宝物を自慢するかのように彼女の腰を抱き寄せて立っていた。

「……リセット、君の言う通りだ。だが、これだけの人数を処刑するのも手間だし、解放すればまた牙を剥くだろう。君なら、この『ゴミ山』をどう鑑定する?」

「決まっているでしょう。……研磨して、使える部品だけ抜き取るのよ。……おじいちゃん、全員を一列に並ばせなさい。今から私が、彼らの『魂の純度』を鑑定してあげるわ」

 バルタザールが慌てて騎士たちに指示を出し、捕虜たちの「選別作業」が始まった。  リセットは、並ばされた男たちの前を、面倒くさそうに歩いていく。

「……あなた、不合格。農作業をするには筋肉の付き方が『怠惰』だわ。……次。……あなたも不合格。目は良いけれど、その指先からは『手癖の悪さ』しか鑑定できない。……あら、待ちなさい」

 リセットが、一人の薄汚れた老人の前で足を止めた。  その老人は、王国で「罪人」として最前線に送られた、かつての宮廷細工師だった。

【鑑定対象:捕虜の老人】 【真実:伝説の宝石研磨師、ガラム。王子の偽物宝飾を見破って投獄されていた。】 【状態:栄養失調だが、その指先の『職人魂(魔力)』は、一ミクロンの狂いもなく健在。】 【評価:至宝。彼がいれば、私のベッドのスプリングを宝石で強化できる。】

「……あなた。王国ではゴミ扱いだったみたいだけれど、私の目には『最高級のダイヤモンド』に見えるわ。……どうかしら。一生、私のために『安眠のための宝石』を磨き続ける奴隷……いえ、専属職人にならない?」

「な、……。私の正体を見抜くとは……。この老骨、喜んで国母様に捧げましょう!」

 老人が涙を流して跪く。  リセットはその後も次々と、王国が「使い捨て」にしていた有能な職人、土壌学者、果ては天才的な料理人までを、鑑定眼一つで見つけ出していった。

「……これで鑑定終了。残りの『本当に中身がスカスカな不純物』たちは、国境の土木作業にでも回して。……陛下。これで帝国のインフラ(と私の寝室環境)は、劇的に改善されるわよ。……あ、お礼は後で『一時間の膝枕』でいいわ。今の私は、鑑定の使いすぎで糖分が足りないの」

「一時間の膝枕か。……物足りないな。……リセット、君が選んだこの『原石』たちが帝国を豊かにするなら、私は君を、この世界の誰よりも甘やかして堕落させてやる。……今夜は、膝枕だけでは済まさないからな」

 エドワルドが、リセットの耳たぶを甘噛みする。  その様子を遠巻きに見ていた捕虜たちは、「あの恐ろしい鑑定令嬢は、皇帝陛下にだけは『甘い宝石』のようだ」と、戦々恐々としながらも命拾いしたことに安堵するのだった。

(((……鑑定結果:最悪。……有能な部下を増やして仕事を減らすつもりだったのに、皇帝の『相手をする時間』が増えるなんて、私の計算にはなかったわ……!)))

 リセットの鑑定による「捕虜選別」は、帝国の慢性的な人材不足を一夜にして解消した。  しかし、それは同時に、王国との「さらなる深い確執」を生むきっかけにもなっていく――。
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