京都守護大学オカルト研究会 : キャンパスでの冥婚のおまじないは禁止ですっ!

木村 真理

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 男の子に「守る」なんて言われたのは、初めてだった。
こんな時だと言うのに、知花の胸はどきりと音をたてる。
子どもっぽいからこそ親しみやすく感じていたハルが、すごく男の子に見えた。

 知花は、瑠奈に問われるままにこの数日のことを話しながら、ハルをちらりと盗み見た。

 ハルの言葉は、オカルト研究会のメンバーとしてのものなのだろう。
 女子校育ちだと、同級生の男子とちょっと仲良くなっただけで恋愛関係の期待を募らせがちになるから気をつけるように、という先輩たちのありがたい警告を思い出す。

(うん、べつに勘違いして意識なんてしないけど……)

 心の奥底がそわそわする。

 とはいえ、いまはそれよりも瑠奈の反応のほうが気になっていた。
 誰にも見えない赤い封筒の話をしながら、瑠奈の目に自分への忌避感が生まれてはいないかと、知花ら神経のほとんどを注力して、瑠奈の反応を見ていた。

 だけど、そんなのは余計な心配だった。

 結論。
瑠奈の心は、知花が思っていたよりずっと広かった。

 知花が怪異について詳しく話すと、瑠奈は悲鳴のような大きな声をあげた。

「えー!! 誰にも見えない赤い封筒が、見える? それも月曜日から毎日、何度も? なんで言ってくれなかったの? そんなのめっちゃ怖いじゃん!」

 周りの学生が、いっせいに瑠奈に視線を向けた。
 知花は顔を赤くして「お騒がせしてごめんなさい」とぺこぺこ頭を下げた。
 瑠奈も「あ、やば」と言い、頭を下げる。

 集まっていた視線が霧散するのを見計らって、瑠奈は知花の耳元でひそひそと話した。

「もー!!!! そんなことで悩んでいるんだったら、はやく言ってよー! 友達じゃん!」

 小声で叫ぶという器用な真似をした後、瑠奈はいちだんと小さな声で続けた。

「……なんかここ数日、知花の様子がおかしいなぁと思ってたんだよ! でも、知花はなんにも言ってくれないしさぁ。訊かれたくないことなのかなって思って深堀りするの遠慮していたんですけど!! そんなただただ怖いやつだったなら、はやく言ってよー!!」

「ごめん。でも、私もなにがなんだかわからなくて……。さっきハルくんが声をかけてくれるまで、他の人には見えないってことしかわかってなかったから、もしかして私の妄想なのかもと思っていて……」

 私の腕をぶんぶんふりまわしながら言う瑠奈の目に、私への忌避感はぜんぜん見つけられなかった。
 瑠奈は、ただ妙なことに巻き込まれた知花を心配してくれただけだった。

(私だったら。仲良くなったばっかりの友達が、誰にも見えない封筒が自分には見えて~とか言い出したら、きっとその子がどんな子かわからないまま距離をおいていたかも……)

 自分の言葉を疑いもせず、この後の学食にもついてきてくれるらしい瑠奈はほんとうにいい子だなと、知花は改めて瑠奈と仲良くなれた幸運を喜んだ。

「妄想だったとしても、それはそれで怖いじゃん。マジでひとりで悩んでたんでしょ? 自分が不甲斐なさすぎて泣く」

「ありがと」

 慰めるように寄り添ってくれる瑠奈は、女の子ーって感じでめちゃくちゃ華奢なのに、懐は深い。
安心感があるというか、ありがたすぎて、涙がにじむ。

「ハル? なにしてるの?」

 瑠奈にぎゅぎゅっと抱き着いていると、こちらに近づいて来た男子学生がハルに声をかけてきた。

 知花がそちらに目を向けると、男子学生はハルのそばに知花たちがいたことに気づいていなかったようで、知花と目があったとたんに、ぎょっとしたように目を見開く。

 ハルは男子学生の反応を気にした様子もなく、彼ににぱっと笑いかけた。

「あ、伊月! ちょうどよかった。明良さんも! この子がちょっと、へんなのに捕まっているみたいで……。ふたりの力をお借りできませんか?」

「あー、っぽいな」

 ハルの言葉にうなずいたのは、声をかけてきた男子学生の隣にいた男だった。

 たぶん学生だと思うのだけど、すごく背が高いからか、大人っぽく見えた。
知花の目測だと、たぶん190㎝は軽々ありそうだ。
なにかスポーツでもしているのか身長だけでなく、全体的にがっしりている。
大きい、という印象の人だ。
にこやかなんだけど、迫力があった。

 短い黒髪をワックスで立たせていて、シンプルなセーターを着ているだけなのに、大人っぽくてかっこいい。
見透かしたような目で見られると、どきっとした。

「そんなに悪いものにも見えないけど……」

 ハルに声をかけてきたほうの男子は、私を見ながら首をかしげた。

 こちらは一緒にいる男とは対照的な、ひょろりとした男性だった。
身長はハルよりすこし高く、175㎝くらいだろうか。
さらりと伸ばした長めの黒髪を首の後ろでゆるく結んでいる。
どことなく賢そうな、中性的な美形だった。

 けだるげな目で知花をちらりと見て、温度のない声で端的に言う。
 人付き合いが苦手なタイプなのか、それきり横を向いたまま、知花たちのほうを見ようともしない。

 けれどハルは気にした様子もなく、「そうなのか?」と首をかしげた。



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