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家族のことも大切に思っていますが、せねばならぬことがあるのです-1(ロゼッタ)
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ロゼッタが久しぶりに実家である公爵家に帰ると、父や母が待っていてくれた。
「ロゼッタ! あぁ、私の娘は、また綺麗になったんじゃないか?」
「元気そうで安心したわ。疲れたでしょう、はやく中にお入りなさい」
玄関先まで迎えに来てくれた父と母に、ロゼッタは笑みがこぼれた。
相変わらず、絵から抜け出てきたかのような華やかな美男美女で、仲もよさそうだ。
「お父様、お母様。ただいま帰りました。おふたりもお元気そうで、なによりです」
胸に手をあてて挨拶すると、ロゼッタの母はぎゅっとロゼッタを抱きしめてくる。
「まぁまぁ、また一段と淑女らしくなったわね。動きも美しかったわよ。礼儀作法の時間も、がんばってお勉強しているのね」
「ありがとうございます。学校の先生方は、それぞれとても優秀な方を特別にお招きしていると聞いております。せっかくの機会ですもの、学んだことはすべて身に着けたいと思っておりますの」
ロゼッタが淡々と決意を語ると、母はいっしゅん目を丸くして、くすくすと笑った。
「そうなの。それは素敵な目標ね。……さて、では、ロゼッタ。久しぶりに会う従兄がお兄様になった時のご挨拶も完璧かしら」
いたずらっぽく目をかがやかせて、母が言う。
そんな表情をすると、整っているがゆえに近寄りがたく見える母が、一気に愛らしく親しみやすく見える。
(現代の価値観なら、こういう女性が理想の王妃になるのでしょうね)
美しく、華やか。公の場では優雅で高貴な立ち居振る舞いで人々を魅せ、そうでない場面では、親しみやすい笑顔で人の心をつかむ女性が、きっと今の時代の理想の王妃だ。
かつてロゼッタが生きた時代の王妃は、王の付属物にすぎなかった。
王の機嫌をとり、子を産み、寵愛を受けるだけの人間。
王の寵愛が他のものに向けば、昨日までの王妃は、なぜか不逞が発覚し、王を裏切った咎で斬首される儚い存在だった。
それが嫌で、ロゼッタは自身が王になるため、たくさんの人を殺したものだが、それはさておき。
「セーゲルお兄様……! お久しぶりです」
玄関ホールには、もうひとりロゼッタの出迎えに来てくれた人がいた。
従兄のセーゲルだ。
セーゲルは、公爵家の一人娘のロゼッタが王子と婚約したため、かわりに公爵家をつぐために、先日養子に迎えられた従兄だ。
ひとつ年上の従兄のセーゲルとは、ロゼッタは幼いころから親しくしていた。
セーゲルは、ロゼッタの金の髪を黄金の冠にたとえ「わたしのプリンセス」とロゼッタを呼んだ。
そして、セーゲルの実の妹であるマリベルを「兄様のプリンセスは私じゃないの!?」と怒らせていた。
その頃はマリベルは「セーゲルはわたしの兄様だから」という理由で、ロゼッタがセーゲルを「お兄様」と呼ぶのを禁じていたものだ。
けれど今では、セーゲルは本当にロゼッタの兄となった。
セーゲルが公爵家の養子に迎え入れられてから、ロゼッタと会うのはこれが初めてだった。
いつもマリベルが「セーゲルお兄様」と彼を呼び、あまえているのを、ロゼッタはすこしうらやましく思っていた。
これまではセーゲルは、マリベルだけの兄だったから、ロゼッタは、セーゲルを「お兄様」と呼ぶのは控えていた。
けれど、これからはセーゲルは、ロゼッタの兄でもあるのだ。
ロゼッタがセーゲルのことを「お兄様」と読んでも、不思議はない。
いやむしろ、そう呼ぶほうが正しいはずだ。
そう考えて、ロゼッタはさっそくセーゲルを兄と呼んでみた。
ロゼッタが、胸に手をあてて礼をとると、セーゲルはまぶしげに灰褐色の目を細めた。
「あぁ、久しぶりだね。ロゼッタ、わたしのプリンセス。きみは、また一段と美しくなった」
セーゲルが灰褐色の目を親し気に和ませる。
そうするとローゼンタール公爵のゆかりの者によくみられる気難しそうな表情が嘘のように、人懐こく変化した。
「ありがとうございます、セーゲルお兄様」
ロゼッタが実家に帰ってきたのは、リィリィに疑いの目が向かないように、学校から離れた場所で毒を飲むためだ。
毒薬は仮死状態になるだけのものとはいえ、物騒な目的での帰宅だ。
なのに、こんな時だというのに、ロゼッタはセーゲルの笑顔に心を和ませて、にこりと笑った。
むかしからロゼッタは、セーゲルのこの笑顔が大好きだった。
「ロゼッタ! あぁ、私の娘は、また綺麗になったんじゃないか?」
「元気そうで安心したわ。疲れたでしょう、はやく中にお入りなさい」
玄関先まで迎えに来てくれた父と母に、ロゼッタは笑みがこぼれた。
相変わらず、絵から抜け出てきたかのような華やかな美男美女で、仲もよさそうだ。
「お父様、お母様。ただいま帰りました。おふたりもお元気そうで、なによりです」
胸に手をあてて挨拶すると、ロゼッタの母はぎゅっとロゼッタを抱きしめてくる。
「まぁまぁ、また一段と淑女らしくなったわね。動きも美しかったわよ。礼儀作法の時間も、がんばってお勉強しているのね」
「ありがとうございます。学校の先生方は、それぞれとても優秀な方を特別にお招きしていると聞いております。せっかくの機会ですもの、学んだことはすべて身に着けたいと思っておりますの」
ロゼッタが淡々と決意を語ると、母はいっしゅん目を丸くして、くすくすと笑った。
「そうなの。それは素敵な目標ね。……さて、では、ロゼッタ。久しぶりに会う従兄がお兄様になった時のご挨拶も完璧かしら」
いたずらっぽく目をかがやかせて、母が言う。
そんな表情をすると、整っているがゆえに近寄りがたく見える母が、一気に愛らしく親しみやすく見える。
(現代の価値観なら、こういう女性が理想の王妃になるのでしょうね)
美しく、華やか。公の場では優雅で高貴な立ち居振る舞いで人々を魅せ、そうでない場面では、親しみやすい笑顔で人の心をつかむ女性が、きっと今の時代の理想の王妃だ。
かつてロゼッタが生きた時代の王妃は、王の付属物にすぎなかった。
王の機嫌をとり、子を産み、寵愛を受けるだけの人間。
王の寵愛が他のものに向けば、昨日までの王妃は、なぜか不逞が発覚し、王を裏切った咎で斬首される儚い存在だった。
それが嫌で、ロゼッタは自身が王になるため、たくさんの人を殺したものだが、それはさておき。
「セーゲルお兄様……! お久しぶりです」
玄関ホールには、もうひとりロゼッタの出迎えに来てくれた人がいた。
従兄のセーゲルだ。
セーゲルは、公爵家の一人娘のロゼッタが王子と婚約したため、かわりに公爵家をつぐために、先日養子に迎えられた従兄だ。
ひとつ年上の従兄のセーゲルとは、ロゼッタは幼いころから親しくしていた。
セーゲルは、ロゼッタの金の髪を黄金の冠にたとえ「わたしのプリンセス」とロゼッタを呼んだ。
そして、セーゲルの実の妹であるマリベルを「兄様のプリンセスは私じゃないの!?」と怒らせていた。
その頃はマリベルは「セーゲルはわたしの兄様だから」という理由で、ロゼッタがセーゲルを「お兄様」と呼ぶのを禁じていたものだ。
けれど今では、セーゲルは本当にロゼッタの兄となった。
セーゲルが公爵家の養子に迎え入れられてから、ロゼッタと会うのはこれが初めてだった。
いつもマリベルが「セーゲルお兄様」と彼を呼び、あまえているのを、ロゼッタはすこしうらやましく思っていた。
これまではセーゲルは、マリベルだけの兄だったから、ロゼッタは、セーゲルを「お兄様」と呼ぶのは控えていた。
けれど、これからはセーゲルは、ロゼッタの兄でもあるのだ。
ロゼッタがセーゲルのことを「お兄様」と読んでも、不思議はない。
いやむしろ、そう呼ぶほうが正しいはずだ。
そう考えて、ロゼッタはさっそくセーゲルを兄と呼んでみた。
ロゼッタが、胸に手をあてて礼をとると、セーゲルはまぶしげに灰褐色の目を細めた。
「あぁ、久しぶりだね。ロゼッタ、わたしのプリンセス。きみは、また一段と美しくなった」
セーゲルが灰褐色の目を親し気に和ませる。
そうするとローゼンタール公爵のゆかりの者によくみられる気難しそうな表情が嘘のように、人懐こく変化した。
「ありがとうございます、セーゲルお兄様」
ロゼッタが実家に帰ってきたのは、リィリィに疑いの目が向かないように、学校から離れた場所で毒を飲むためだ。
毒薬は仮死状態になるだけのものとはいえ、物騒な目的での帰宅だ。
なのに、こんな時だというのに、ロゼッタはセーゲルの笑顔に心を和ませて、にこりと笑った。
むかしからロゼッタは、セーゲルのこの笑顔が大好きだった。
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