ヒロインに転生したけど、親友が大事なので王子は諦めます! + 悪役令嬢に転生したようですが、親友の恋を応援します

木村 真理

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パーティが始まりました。さっそく事件です。-2

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 王宮に向かう馬車の中で、ロゼッタは柳眉を逆立てていた。

「もうお約束の時間ぎりぎりですわ」

 馬車は、いつもよりすこし揺れる。
 御者のせいではない。
セーゲルの準備が遅れたせいで、王宮のパーティが始まる時間に間に合うか微妙なところなので、御者はいつもよりも馬車をはやく走らせているのだろう。

 王宮のパーティに遅刻するなんて、周囲の貴族になんと思われるか。
ロゼッタは、クレイン王子の婚約者に内定していることもあり、注目の的だ。
それは同時に、ロゼッタの足をひっぱろうと虎視眈々としている貴族も多いということだ。

 自分の評判を落として、王子の婚約者から滑り落ちようと考えたこともあったけれど、いまはそのつもりはない。
仮死毒をあおっても、基本的にはロゼッタに同情が集まるようにしたいので、いま評判を落とす気はない。
 それなのに、パーティに遅刻してしまえば、「そういえばふだんから王宮を軽んじていたようだ」など言われかねない。

 ロゼッタは、向かい側に座るセーゲルを睨む。
けれどセーゲルは、ゆったりと笑って返した。

「だいじょうぶだよ、ロゼッタ。我々は、主賓に近い。あまりはやく伺っては、かえって失礼だろう。他の貴族たちが集まったころに顔をだすのがふさわしいよ」

「だからといって、限度がありますわ! セーゲル。さきほど部屋でお会いした時には支度もほとんど済んでいらしたのに、どうしてご出発のために玄関に来られるのがこんなに遅れにましたの!?」

 のんきなセーゲルの態度が、ロゼッタをますます怒らせる。
常にないほどロゼッタは怒っていたが、セーゲルはひょいと肩をすくめ、ロゼッタの怒りを受け流した。

「男にも、いろいろ準備が必要なんでね」

 そう言って、セーゲルはふっと口だけで笑う。
もともと華やかなセーゲルがそんなふうに笑うと、したたるように色っぽかった。
 ロゼッタもいっしゅん、ぐっと息を飲む。
そして、つんと顔を横にそむけた。

「こんなに着飾っているわたくしより時間がかかるなんて、たいそうな準備ですこと」

「ふふ。そのかいはあるだろう?」

 セーゲルが声をあげて笑う。
 軽薄なものいいに、ロゼッタはますます怒りが募ったけれど、同時にすこし安堵していた。
セーゲルはひとを食ったような顔をしているが、これはいつものことだ。
彼の態度はふだんと変わらず、ロゼッタが毒を持っていたか探る様子もない。

 だからといって安心はできないと心に留めつつ、ロゼッタはこれみよがしに大きなため息をついた。

 しばらく走ると、馬車は王宮に到着した。
もう他の馬車はまばらだったが、御者がいそいでくれたおかげで、遅刻はまぬがれたようだ。
あかあかとした灯がともる白亜の宮殿は昼のように明るく、兵たちと侍従たちが招待客をさばいている。

 ロゼッタはセーゲルの手を借り、馬車から降りた。
 宮殿に入り、周囲を見回す。
うちうちのパーティだと父は言っていたが、そのわりには招待客は多いようだ。
 クレイン王子の婚約が内定したこともあり、貴族子女はいま結婚の話を進めようとしている者も多い。
そのため最近は、パーティの招待客がいつもより増えることも多かった。
今日も、そんなことがあったのだろうか。

 ロゼッタが周囲の人々を見ながら考えていると、侍従に名を呼ばれた。
案内されるままに、パーティがおこなわれているホールへ降りる。

 ホールにはすでに多くの貴族が顔を揃えていた。
着飾った人々の目が、ロゼッタの名を聞いて、階段へと集まる。

 ロゼッタは社交的な笑みを顔にはりつけ、優雅に階段を下りた。
あんなにロゼッタをやきもきさせたのに、セーゲルのエスコートは丁寧で気遣いにあふれている。
手を重ねて階段を降りているだけなのに、ぜつみょうに動きやすく、ささいな動きがロゼッタを大切に扱ってくれているのがわかる。

 ドレスの足元をさばきながら、ロゼッタは思う。
クレイン王子とは違う、と。
比べても仕方のないことだけれど。

 ホールの奥のいちだん高いところにおかれた玉座に座る人は、まだいなかった。
ロゼッタの名が呼ばれたばかりなのだからとうぜんだが、王や王妃はまだホールにはいらしていないようだった。

 遅刻していないことはわかっていたけれど、ぎりぎりの時刻だったので、ロゼッタは安堵した。
 けれどホールの中をみまわして、驚きに目を見開いた。

 クレイン王子がなぜか、もうホールへ降りてきていた。
公爵令嬢であるロゼッタの名が呼ばれたばかりなのだから、まだ王子が来場しているはずはないのに。

 黒髪の背の高い王子は、人でいっぱいのホールにいても目立っていた。
王子とその周囲を凝視したロゼッタは、さらに驚く。

 王子の周囲には、側近たちがいつもどおり彼を取り巻いていた。
けれど王子の隣にいたのは、側近たちではなかった。

 王子の隣にいたのは、小柄な少女。
リィリィが立っていた。
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