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「わたし、学校行けるよっ」



「ダメだ。今日ぐらいは休んどけ」


「そうよ、ひとみ。
昨日の今日なんだから、ゆっくりした方がいいわ」



会社に向かうお父さんを見送ったお母さんも一緒になり、わたしはお兄ちゃんに学校を休むように強く勧められた。


確かに昨夜はツラかったけど、でも今日はよく眠ったからか調子は良い。

別に学校に行くくらい問題ないと思ってるんだけどなぁ。



「別に1日休んだくらい、大丈夫だろ。ひとみの受験は来年なんだから」



「それはそう…だけど」



「決まりだな。
じゃあ母さん、オレは行ってくるから」



「えぇ。
行ってらっしゃい、ヒロキ」




──そんなわけで。

まるでサボりのような感覚だけど、わたしは1日ほど学校を休む事になったという。



「んーっ、退屈~」



別に寝てなきゃツラいような病気になってるわけじゃないので、ずっと部屋の中にいるとする事がなく、それはそれは退屈で仕方ない。



ベッドの上でゴロゴロしては、テレビをつけてボーっと見てたりしたけど。
でもこんな真っ昼間から面白い番組なんてやってるわけもなく、結局テレビもつけてるだけで見ていない状態だった。




「そうだ。学校は行かないんだから着替えなきゃ」



昨日からずっと制服を着ていた事に気付いたわたしは、いい加減着替える事にした。


お風呂だって入ってない。
ついでだもん、シャワーだけでもかかりたいかな。


そう思いながら制服に手をかけた時、ハッとポケットに入れた写真の事を思い出した。



「……これ、どう見てもお父さんだよね…?」



シワシワになってしまった写真を、手で丁寧に広げながら改めて見た。


両親と2人の姉妹が写る家族写真。


他の3人は知らない人だけど、でもその中の1人はどう見てもお父さんだった。


髪型や服はいつも見る姿とは違うけど、でもこんなに似てる人が近くにいるなんて思えない。



「……………………」



もしこれを、お母さんが見たら何て言うだろう。

だったら先に、お父さんに訊いてみた方がいいのかな。

ううんっ
それはそれで、答えを聞くのが恐くて出来ないよぉ!


だったら、この写真はどうしたら……





「ひとみ、具合はどう?」



「っ!!?」



コンコンとドアをノックしたお母さんが、顔を覗かせた。


わたしはすぐに持っていた写真を、またポケットにとしまい込んだ。



「お昼ご飯、チャーハン作ったんだけど食べれる?」



どうやら写真を隠した事はバレてない様子のお母さんに、わたしはホッとして返事をした。



「食べる食べる!
具合なんて、全然悪くないんだもんっ」



「よかった。
じゃあ待ってるから、下りてらっしゃいね」



「うん!
ありがとう、お母さん」



わたしの調子を見て安心したのか、特に何事もなく部屋を出て行ったお母さんに、「はぁぁ…」とため息をついて安堵した。



…わたしの事で心配かけちゃったのに、また余計な心配をさせちゃうような事をしたら、今度はお母さんがかわいそうだよ。


やっぱり、この写真はお母さんには見せられない。


わたしは写真をポケットから取り出すと、薬の入ってる袋の中にしまっておいた。


ここなら、きっと誰も見たりしないもんね。

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