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1人の夜の帰り道には、キケンは付き物です! 1
しおりを挟む「はい、いつものです」
「サンキュー、ひな」
「こちらこそ、ありがとうございます」
それからしばらく、毎日うちの店に来てくれる彼、慎吾君へのナイショのサービスは続いていた。
毎日毎日リンゴサラダを食べるなんてと思わなくもなかったけれど、サラダってのはまぁ毎日でも食べやすいものだよね。
しかもリンゴも入ってるから、あっさりしてて飽きないだろうし。
うん、我ながらナイスなアイデアだと思う!
「姉ちゃん、これの金ここに置いとくよ」
「あ、はい。生姜焼きですねっ。ちょうど頂きます。
ありがとうございまーす」
…そんな中、うちには毎回毎回同じ豚の生姜焼きを買って行くお客さんだっている。
それこそ飽きないのかなぁと心配する事もあるんだけど、それを考えたらリンゴサラダなんて全然問題ないのかも。
そういえば以前は誰と食べてるのかなとか、誰も作ってくれる人いないのかなって思ってたけど。
何かそんな事、気にしなくなっちゃったなぁ。
それは、私の作るものを美味しく食べてくれるだけで十分って言うか。
うん、そんな感じ。
陳列棚からお客さんが取って行った商品を、またキレイに並べ直すのも私たちの仕事。
スペースに穴を作らないよう、残り少なくなっても広く薄く並べて見た目を良くするの。
そうしているうち、見覚えのある常連さんの姿がこっちに向かって来ているのが見えた。
(─────あっ
て言うか、あの人っ)
私はすぐに厨房に戻り、後片付けやら掃除をしているスタッフの中から田原さんのもとに向かって駆けつけた。
「ひなちゃん、どうしたの?」
「もうすぐお客さん来るんですけど、レジ代わってもらえませんかっ」
「え?
それは別に構わないけど…」
揚げ物なんかで使ったバットやトングを洗っていた田原さんは手を洗って洗剤を落とすと、不思議そうな顔をして私の代わりにレジの方へと出た。
「はい、いらっしゃいませこんばんは」
そんな私は向こう側から見えないように隠れながら、そっとレジの様子を覗いた。
「はい、20円のお返しです。
ありがとうございまーす」
普通に会計もして何事もなくやり過ごした田原さんは、レジを済ませるとまた厨房にと戻ってきた。
「あ、ありがとうございますっ
助かりました…」
「え? 一体何だったの?
別に何もなかったわよ?」
ホッと胸をなで下ろした私に、田原さんは眉をひそめて訊いてきた。
何もなかったのは、きっと私がレジに出なかったからなんだけど。
でもそんな事は、田原さんも誰もまだ言ってないから知らないのだ。
「…実はさっきのお客さん、以前から声をかけられてて対応に困ってたんですよね…」
そう。
今やって来たお客さんは、以前私にカラオケ行こうと誘ってきたおっさん系の常連さんなのだ。
あの時は苦笑いしながらお断りを入れたわけなんだけど、あれから後、また性懲りもなく声をかけられたわけだ。
確かに「またね」とは言われたわけだけどさぁ。
でも普通一度断ったら、脈ナシって思わないかなぁ。
二度ある事は三度あると見た私は、以来あのお客さんには目を光らせて、なるべくレジに出ないようにしようと思ったのだ。
「声?」
「はい…。
何か、カラオケの無料券あるから一緒にって…」
無料と言えば、喜んでホイホイついて行くとでも思われてるんだろうか。
今の世の中、逆に無料の方がよっぽど怖いような気がするのは私だけ?
だいたい私があんなおっさん系の人と一緒に歩いてたら、まわりから援助交際と思われちゃうわよぉ!
「オイオイ、何だひな坊。
お前、お客さんにナンパされたのか!」
「く、久保店長!
声が大きすぎます~っ」
どうやらそんな私の話が耳に届いてしまったようで、ひょこっと久保店長が顔を出してきた。
「モテる女は大変だのぅ」
「いやいや、笑い事じゃありませんよぉ。
お客さんだから断りづらいし…」
別にしつこく付きまとわれたりしたわけじゃないから、まだいいけれど。
でもやっぱり、どうせ断らなきゃならないのなら、声をかけられるだけでも嫌だもんね。
て言うか…なんでおっさん系なのに、私みたいなのに声かけるかなぁ…。
「また言われたら、店長に怒られるからって言えばいいさ。
あんま気にするなよ、ひな坊」
「はぁ…」
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