ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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「イチゴバラさんのお仕事、毎日そんなに忙しいんですか!」



私たちは暗い夜道を2人並んで、イチゴバラさんと話をしながら歩いた。

と言っても、私は殆どイチゴバラさんの話す事に相槌を打ちながら聞いているだけなんだけど。



「えぇ。割と重要な役割を担ってるものですから、酷い時は休日出社もあったりで」


「わぁ、それは大変ですっ」



普通会社員なら、17時にあがるものだろうけどな。
でもイチゴバラさんは昔からいつも閉店1時間くらいに来ていたのだから、相当毎日仕事に追われてる生活をしているんだなと思った。


私なんて思い切り週休2日に、時間通りの勤務についてるのにね。



「だから家の事にまで手が回せなくて、子どもにも不憫な真似をさせてる始末ですよ。
本当、情けない限りです」


「そんなぁ。イチゴバラさんは、とても一生懸命ですよ!」



毎日お仕事頑張っているのに、そんな自分を情けないだなんて。


お父さんが来れない日は、子どもさんが代わりにうちのお店に来てくれていたようだし。

ちゃんとコミュニケーションとか、うまくとれてる良いお父さんなんだろうなって思うよ。



「…そんな風に、言ってくれますか。
でも実際は、本当に家庭に対して時間も取れていない、酷い状況なんですよ」


「…イチゴバラさん…」



だけどもそんなイチゴバラさんは、フッと顔を伏せがちにして言った。


家庭に対して時間も取れていない…かぁ。

夜遅くに仕事を終えて帰っても、ご飯を食べてお風呂に入ったりしてたら、あっと言う間に寝る時間になっちゃったりするよね。


私みたいに週休2日で定時にあがれる仕事だったら、もっとしたい事だってできるだろうになぁ。



「僕が子どもにかまえない分、少しでも不自由な思いをさせないようにってお金を渡しているのですが。
…これも、正しい事だとは言えませんしね」


「ぁ…」



いつも惣菜を買いに来ている時の優しそうな顔しか知らなかったけど、本当はイチゴバラさんにもそんな事情があったんだね。

コソコソ裏で小山さんたちと好き勝手な詮索して噂話してたけど、何だか申し訳ない気持ちになってきちゃったな…。



「あの…」


そんな仕事に追われて大変なイチゴバラさん。

子どもさんに対しても、ちゃんと心配してるステキなお父さんなんだけど。



「イチゴバラさんには、その…」


とりあえず子どもさんがいるって事は、独身じゃあないって思ってた。

だけど毎日毎日うちの惣菜ばっかり買って、台所に立つ人はいないのかなって心配していたの。


今の話じゃ、台所に立てない親御さんと同居してる感じではないみたいだけど。

なら……



「…奥さまは、いらっしゃらないんですか…?」


こんな事、なかなか普通は面と向かって訊けないよね。


だけど、こんな時に忙しくて大変な旦那さんを支えてあげるのが、妻の役目だと思うの。


イチゴバラさんがとっても大変な身で、家庭にもいろいろ心痛しているのは私も胸が痛いもの。


余計なお世話なのは百も承知。


だけど、そこまで聞いたんだから最後まで心配したいのよ。



「あぁ…、僕の家内は…子どもがまだ中学にあがる前に……」


そっと視線を下に下ろした時、イチゴバラさんの左手を見ながら薬指にあるべきものがない事に気付いてキュッと目を閉じた。



「道路に飛び出した子どもを庇って、そのまま…」


「…そ……」



やっぱり訊いちゃいけなかったって言うよりも…


「そう…だったんですか…」



むしろツラい事を言わせちゃったなって

そう、少しだけ後悔した…。

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