ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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閉店後

ドキドキと緊張しながらレジ締めを終わらせると、私は急いで支度を整えデパートの裏口へと駆けった。



あの日は頭が真っ白で意識してなかったけど、仕事上がりで私、揚げ物臭くないかなっ!?
何かいい匂いのするスプレーとか用意しとけばよかったよぉぉ。

特に夏場だから、汗のニオイも気になっちゃう。
臭い奴って思われたら、嫌だーっ



それまで散々デオドラントグッズなんて買わないズボラな性格だったのに!

せっかく私を女性扱いしてくれるかと思ったら、今更でもやっぱり汚い部分は見せたくないと意識しちゃうみたいだ。




「イチゴバラさん…っ」



地下からの階段を一気に駆け上がり、キョロキョロと見回して私は彼の姿を探した。


そんなに走ったらまた余計な汗をかいちゃうのにって思いつつも、早く行かなきゃって気持ちの方が強かったみたいで。




「こっちですよ、妹尾さん」


「イチゴバラさん!」



振り返って声の方を見ると、また駐車場エリアからやって来たイチゴバラさんは、手に缶コーヒーを持っていた。



「お疲れ様です。
これ、どうぞ」


「ありがとうございます…!///」



仕事上がりの疲れた身体には、甘いものが欲しくなるんだよね。


だから…イチゴバラさんが私にくれたのは、この前と同じ甘くてミルクもまろやかなカフェオレだったの。






「へぇ。
あのサラダはいつも、妹尾さんが担当されてたんですか」


「はい。別に私だけの仕事ってわけじゃあないんですけどね。
でも担当するポジションは、だいたいいつも同じなんです」


「なるほど」



私たちは一緒に肩を並べると、また気持ちいい夏の夜風を感じながら歩いた。


話すネタも大した事ないんだけど、でも聞き上手なイチゴバラさんに促されると、つい会話も楽しく感じちゃうの。



「昨日はイマイチな出来だったので今日は改めて本物のサラダを買って帰りたかったんですけど、残念ながら売り切れてましたね」


「あわわっ
それはすみませんっ」


「いえいえ。
そんな、妹尾さんが謝る事じゃないですよ。
ここのサラダは人気なんだから仕方ないです」


「………………」



そんなに気に入ってくれてるなら、1つだけ私がキープしといてあげようかしら…

と思いかけて、やめた。


そうやって特定のお客さんを特別扱いしたらダメだって事、さっきもまた思い知らされたばかりじゃない!



「明日は…イチゴバラさんの為に1つでも残ってるよう、祈ってますね」


「あははっ
ありがとう、妹尾さん」








まっすぐの道を歩き続け、別れる地点でもある本屋さんの前の交差点まで来て足を止めた。



「今日も送って頂き、ありがとうございました」



今まで仕事が終わった後は、いつも1人で帰っていたこの道。


大した距離ではないんだけど、でもやっぱり特に夜だと誰かと一緒に帰る方が何倍も楽しいし心強いよ。



「また明日、店の方でお待ちしてますね。
明日はサラダ、少し多めに作っちゃいますよ」


「ありがとう。
なら明日は、何があっても絶対に行かないと」


「あはっ、冗談ですよ。
そんな本気にならなくても…」


「いえ、必ず行きます!
だから…」




よほどうちのサラダが食べたかったのかなぁ?

昨日は作り方をちゃんと教えたつもりだったんだけど、一体どんな風に出来上がったんだろう。



…なんて、そんな事を考えてた私は鈍いだけだったんだ。



「はいっ。
じゃあ絶対、来て下さいね」


「…もちろんです!」



まっすぐに向けられた私への視線。

それが、まさかいよいよ止められないものになってきているなんて思わなかった─────…





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